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2話

ゆっくり更新3本目

「だー、くそ!完全に寝坊した!」


俺は入学式開始まであと2時間の所で目を覚ました。

2時間なら余裕じゃんと思う事なかれ。俺の家は立地が悪いせいで駅から遠く、大学へは自転車で行ってもさほど所要時間が変わらないのだ。

そして自転車で40分ほどかかるのである。


「これもう昼飯はコンビニで買うしかないな!」


朝食としてトーストを焼きながら、急いでスーツに着替える。

ついでに電気ケトルでお湯を沸かしながらコーヒーの準備もしておく。


「なんでこんな日に限って目覚ましが壊れるんだよ!こんな事ならスマホでアラームかけときゃ良かった!」


そう、なぜ寝坊したのかと言うと目覚ましが壊れたのである。

もう1時間は前に起きて弁当の準備もする予定だったのだが、寝坊したためその余裕もない。

入学式は9時からだが、受付そのものは8時15分から始まり、開始5分前には終了してしまうらしい。現在は7時23分。受付時書類の受け渡しなどもあるそうなので、遅くともあと37分後には家を出ておきたい時間だ。


「飯食って、歯を磨いてってこれじゃあ髪型整える時間なさそうだな!」


一応入学式ということもあり最低限髪型も整えたかったが、時間的に難しいだろう。

寝癖だけ直しておこう。

そう思い、洗面所に向かおうとするが、焦げ臭い香りが・・・。


「やべぇ!トースト!!」


トースターの中を見ると鮮やかに真っ黒になったトーストが。


「ノーーーーーー!俺の朝食がああああああああぁぁぁ!」


時間になったら止まるように設定していたのだ、黒焦げになるような設定はしていなかった筈・・・。

そう思いトースターを確認するとセットした時から動いていないツマミといつもより少し大きい、ガリガリという機械音。


「これもしかして・・・。」


どうやら目覚ましに引き続きトースターまでお釈迦になったらしい。

スイッチが入った為気付かなかったが、どうやらダイヤル式の摘み部分がダメになっていたらしく、右側には捻ることはできるが、左側へは動かなくなっているようだ。


「これじゃあ電源切れねーじゃねーか!」


俺は仕方が無いのでコンセントを抜いた。


「そういえばケトルの方は大丈夫だよな・・・?」


二度あることは三度ある。目覚まし、トースターと来たら次は電気ケトルだろう。

そう思い電気ケトルを見ると・・・。


「やっぱり沸いてねぇ・・・。」


スイッチはONになっているが動いた形跡はない。


「嘘だろ・・・。」


まさかの自体に思わず下を向いたら俺の視界にコンセントのプラグ部分が。


「ってコンセント入れ忘れてるだけじゃねーか!」


急いでコンセントをさしてみると、ケトルは無事稼働し始めた。


「良かった、まだ安心できないが一応動きはするな。」


とりあえずケトルまで壊れるという事態はまぬがれた様だ。


「ほかは大丈夫だよな?」


恐る恐る室内を見回すが、とりあえずぱっと見は大丈夫そ・・・。うん?


「えーっと?」


俺の視界に映ったのは壁に掛けてある時計。昔買ったデジタル式の時計で電池はこっちに来てから替えたばかりでまだ1ヶ月たっていない。


「えーと・・・。7時50・・・8分?」


そう。トースターが壊れたりなんだりしてドタバタしているあいだに時間は無情にも過ぎ、もうそろそろ家を出ないと本格的にやばい時間になっていた。


「ちくしょおおおおおおお!」


俺は急いで2階の自分の部屋に行くと、鞄と上着を引っ掴み外に飛び出す。


「やべぇ鍵!」


自転車の鍵を忘れていたのを思い出したので急いで戻り、自転車の鍵を回収して家の鍵をかけ、


「行ってきます!」


と急いで漕ぎ出した。

通勤通学時間のため人通りと車通りは多いので、周りに気をつけつつ、大学までの道のりをとばして進む。

大学まであと半分に来た所で信号に捕まったので腕時計で時間を確認すると時刻は8時16分。

かなり飛ばした為、良いペースでここまで来れている。

このまま飛ばせばうまくすれば30分頃には大学につけるかもしれない。

信号がかわったので、いざ漕ぎ出そうとした俺だが、前輪に違和感を覚えた。


「ん?」


良く見ると前輪の前半分ほどが無い。

信号がかわったにも関わらず進み出さない俺を、邪魔そうにしながら歩行者たちが足早に過ぎ去っていく。


「なんだこれ?」


そう呟いた途端、漕いでもいないのに自転車がだんだんと前に進み出す。

そして進んだ分だけ自転車が前から消失していく。


「へ?は?おい!なんだこれ!」


俺は叫んだが、歩行者の誰も振り向かない。

それどころか、さっきまでは邪魔そうにされていた俺だが、今度は誰も俺に気づいていないかのように過ぎ去っていく。

それどころか、まるでそこに不可視の壁でもあるかのように、俺を中心とした半径50cmくらいに誰も入ってこようとしない。


「なんだよこれ!どういう事だよ!」


俺はそう叫んで自転車から降りようとするが、謎の力に縛られているかのように姿勢を変えることが出来ない。


「くそっ!なんだこれ!」


やばい。何かはわからないが確実になんかやばい事が起きている。

まるで漫画のような、まるで小説のような、まるでドラマや映画のような、訳の分からない事が起きていた。


必死に抵抗しながら、周りを見回す俺だったが、ある違和感に気付いた。

手の感覚がないのである。


「は?」


手の感覚がないことに気がついた俺が自分の手を見ると自転車と一緒に肘から先が虚空に消えていた。


「う、うわああああああああ!!?」


何が起きているのか分からない。

そしてその後、すぐに俺の視界は暗転した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「?」


道行くOLの一人が、人の声の様なものが聞こえた気がして後ろを振り返ったが、そこには何も無く、気のせいか、と思い直し、青信号の点滅し始めた横断歩道を早足に渡っていくのであった。

誤字脱字指摘などございましたらお願いします。


次回は日曜日

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