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こんにちわ

作者: ふくろう

 これは幼馴染のA子から聞いた話。

 その日はひどい雨だったそうで。おまけに風も強かったのでA子が住んでいたそれほど新しくないアパートは外で聞くよりも大きくひどく雨風の音を室内に届けていたそうだ。そんな状態だったから仕事が休みなのをいいことにどこにも出かけず家にいたという。

 その時は薄暗い部屋に明かりをつけて暇つぶしにゲームをしていたそうだ。そしてA子は不意に、

「こんにちわー」

という明るい声を聴いたという。こんな天気の日にお客さんかとよく耳を澄ませると、二度目の「こんにちわー」が聞こえ、そしてそれはA子の部屋の前のようだった。

 あまりに明るい声なので宅配便だと思ったのだという、その聞き覚えのない、しかし通販を常用するA子には心当たりのある知らない男の人の声にA子は不用心にも確認することなく扉を開けたそうだ。

 しかし、廊下にはだれ一人いなかった。

 階の端に位置するA子の部屋の廊下には隠れようにも隠れる場所がない。がらんと湿気の多く真っ直ぐな廊下が伸びているだけだったという。

 結局、A子は気のせいもしくは他所の階の声が聞こえたのだろうと大して気にも留めず部屋に戻った。

 それだけの話である。

 それだけの話だったのだが。

 今日、A子のアパートの電話に私は電話した。

 携帯ではなく家の電話にしたのは、数日前、携帯が壊れたという話をA子から聞いていたからだ。

「はい。どちら様ですか?」

 A子ではなかった。

「私○○と申します。こちらA子の電話ではないですか?」

「ええそうです。A子は今、コンビニに行っています。一時間くらい後にかけなおしていただけますか?」

「わかりました」

 大体そんな会話をしたと思う。私は一時間後リダイヤルでかけ直した。電話はA子が出た。

「どっか行ってた?」

「うん。コンビニ」

「さっき電話に出た男の人、彼氏ー?」

「え?私一人暮らしだし、だれもいないよ?」

 そして今、A子と私は外で会って話している。

 A子が「こんにちわ」と声を聴いてドアを開けた日、つまり昨日は、風はあったが一日良い天気だったと私は記憶している。


 A子と私は今も昔もご近所さんだ。


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