一話 始まり
どうも! Genshoです。主人公の有無について最後まで悩んで、登場させることにしました。
20××年4月8日 日本の首都、岡京。その年のど真ん中にある高校、私立高山学園。
その地にとある男が降り立った。
男の名は、高山 大介。下ろし立てのスーツに身を包み、少々大きめのボストンバッグを右手からぶら下げている。
数多の高等学校で学校、特に各部活動の発展に携わってきた校長が今、新たなる地で新たな戦争の幕を開けさせようとしている。
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「オイ、今から新しい先生来るってな!」
「美人な先生こねーかなー!!!」
「はぁ、あんたらほんとばかね......」
始業式も終わり、今から新任式、と言う段取りらしいが、この手の話に食いつくのはやはり馬鹿どもか?
......騒々(そうぞう)しいな。
まぁ、元気がある方がいいか。いやしかし、久しぶりに大型校に赴任することができたな。人数の多い学校は部活がいっぱいあっていいな!
そして教頭のアナウンスがかかる。他の学校にでもいそうなジジイだ。
「続いて、新任の先生方を紹介します」
お、きたか。さて、今年の生徒たちはどんなもんか。まぁ、俺は校長だから結構後の方に呼ばれるんだろうけど。
他の今年赴任してきた先生方とともにステージへと登壇する。
「続いて、高山新校長先生の挨拶です。高山先生、お願いします」
そして一番最後に俺の名前がコールされる。他の先生なんざどうでもいい。学校で一番大事なのは、
......部活だ。
「え〜、この私立高山学園で新しく、校長という役職に就かせていただきました、高山大介です。
34歳、AB型独身、彼女はいません。前は小さな田舎の高校で校長をしてました。
え〜、それで、僕が就任しましたので、勝手なお決まりですが、明後日、4月10日付で、本校第一回、部活戦争を開催することをここに宣言します」
ざわざわ
ざわざわ
「なに!? 部活戦争って!」
「なにする気だ!?」
いきなりおかしなこと言いだしたわけだが......
いやー、いいリアクションだな。ここまで大きいリアクションは初めてだな。よく見たら教員の奴らも目を見開いてやがる。あれ? 言ってなかったっけ?
まいっか。大事なのはこっちだ。こっちの段取りさえできればあとはなんとかなる。とりあえず今までもそうだったし。
「え〜、静粛に。これより学級活動にて担任より話があると思います。
詳しいことは明日以降発表いたします。
なお、本日は学級活動ののち、部活動を設けております。特例として、戦争時のみ、帰宅部を創設します。なお、新規の帰宅部への入部は認めません。
それ以外の入部、退部、部の新設、合併などは本日放課後までに報告するように。
また、生徒会メンバーは始業式が終わり次第僕の元へ来なさい。以上」
そして混沌と混乱の始業式......もとい新任式は幕を閉じた。
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騒々しい始業式も終わり、静寂が訪れる空間。数台の椅子と机。前には黒板や学校訓などいたって普通の教室にも見えることだろう。
その場、生徒会室には、一人の男が立っていた。
彼の名前は高山大介。曲がりなりにもこの学校の校長である。
彼が赴任した学校で必ず起こる一大イベント、『部活戦争』
各部活が各部活の能力を発揮し、頂点を目指す、リアルの喧嘩だ。表向きの名目は部活対抗に夜部費の獲得。裏の目的は......
そんな彼の元に、五人の生徒が訪れる。そう、言わずともがな、生徒会メンバーだ。
生徒会長、三年 黒崎要
副会長、三年 岬小雪
会計、一年 水谷一晶
書記、二年 涼宮カノン
第二書記、一年 市原水音
──以上、5名の精鋭である。
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「おお、来たか生徒会役員諸君。入りたまえ」
男──高坂が促すと、会長である黒崎の
「失礼します」
というあいさつに続き、残りの四名も彼の後を追う。
「高山校長。自分は生徒会長をやらさせてもらってます、三年の黒崎です。
単刀直入にお聞きしますが、あなたは、本校にて、何をしたいのですか?」
すると高山は困惑した表情で
「? 何のことかな?」
──と答える。
「ああ。質問が悪かったですかね。
では質問を変えます。
あなたは、何をさせるつもりですか? 私たちに」
「......」
高山は黙って喋らない。他の四人のメンバーも困惑した表情だ。
黒崎は続ける。
「あぁ、私たちと言っても生徒会のことではありませんよ?
もちろん我々生徒939名のことについてです」
さらに黒崎は続ける。
「あなたのこと、大変失礼ですが今の時間で多少ながら調べさせていただきました。
読み上げます。十二年前、私立黒ヶ崎高等学校に新任。
......しかも校長として。
初任の教諭が校長になるなんておかしすぎます。ここでもうすでに違和感を感じてもいいのでしょうが。
さらに、その年、あなたはその高校で初めて部活戦争を開始しました。
まぁ、当時のPTAがどう思ったなんて知りませんが......
その後、同じ学校に二年以上は居座ることなく、全国の私立学校、国公立学校で校長を務め、必ず部活戦争を開始した。そして一年でまた別の学校へと移る。その繰り返しですよね?
ま、ここまではまだ許せますよ? いや、僕が許すと言うのもおかしいんですけどね。
こっからが摩訶不思議です。どういう原理かは知りませんが、その翌年からはどの高校も至って普通の高校に戻っており、部活戦争なんてものもなく、
......あなたが赴任する前より財政も潤っている。
この原理を説明しやすくできるすごいいい例えがあるんですがご紹介しましょうか?」
「......」
この問いにも高山が答えることはない。この沈黙を黒崎は肯定と受け取り、話を進める。
「まるで『記憶がなくなってる』ようだって言うのは妥当ではないでしょうか?
最後に一つこの質問にはきちんと答えていただきたい」
最後に黒崎は一拍おき、大きく息を吸い込んでから言う。
「あなたは何者であり、私たちに何をさせ、何をしようとしているんですか?」
そしてやっと、高山が口を開いた。
「フゥ......近頃の高校生はみんなこんななのかねぇ?」
「『こんな』とはどういうことでしょうか」
「いやぁ? 今この場で僕の真意なんざどうでもいいんだよ。
まぁ、僕に何らかの秘密があることは事実だけどねぇ。
多分黒崎くん? だっけ? の言ってた僕のいた翌年以降は云々も僕が関係しているんだろうねぇ。
ははっ。まぁ尤も、直接的な関係はこれから話す『部活戦争』のことでしょうがね......」
不敵な、不気味な笑みを浮かべる高山に、黒崎は沈着な表情で対峙する。後ろの四人はこの二人の口論に口を挟める隙もない。
数十秒あまりの沈黙が続く。
「つかぬ事をお伺いしますが高山先生」
その静寂を破ったのは黒崎であった。
「はい? 何だい? 答えられる範囲内ならば答えよう」
「いえ、極力答えてください。
小耳に挟んだのですが......この『戦争』部費のため、と言うのは本当のことなのでしょうか」
彼の口からもたらされる情報に真偽はともかく何も知らない他の生徒会メンバーは驚きを隠すことをしない。
そして高山も少し驚いた表情で──この場合驚くべき場所は違うのだろうが、その重い口を開く。
「本当かどうか──と問われたら微妙な答えになってしまうなぁ。ま、百歩譲ってその情報を君がどこで仕入れたかは聞かないであげてもいいけど......
まいっか。ちょうどいい機会だ。
──ねぇ君らさ、僕につく気は無い?」
高山先生は、とても優秀ですが、同じ学校には連続でいないので、今まで教員生活12年で通った学校は12校です。
なお、戦争時は高山先生視点ではないです