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【短編】ループ・リベンジャーズ~滅びた世界を、俺達は繰り返す~【ダークファンタジー】

 

「レイラには悪いけど、この様子じゃ……。もう村人は、全滅した後だろうな……」

 

 イリーナの呟きが、頭上から聞こえた。

 物陰から二人でコッソリと顔を出し、村内の様子を遠目に伺う。

 俺より頭一つ大きい褐色肌の大女が、難しい顔で物置小屋の壁に背を預けた。

 腹筋の割れた腹を俺に見せつけながら、並の男性より太くて逞しい腕を組む。

 

「とりあえず、武器になりそうな物。持って来たよ」

 

 農家の娘レイラが、入ってた納屋の中から顔を出す。

 声を潜めながらも、胸元に抱きしめた数本のナタを差し出してくれた。


「お? 良いもん、持って来たじゃねぇか。無いよりはマシだな」


 受け取ったナタの一本を握り締め、手慣れた様子でイリーナが振り回す。

 女剣闘士だと言ってたが、自称ではなく本物なんだろうか?


「な、何の騒ぎ?」

 

 突然に村内から聞こえた怒鳴り声に、ビックリしたレイラが背後へ振り返る。

 物陰から今度は三人で、コッソリと顔を出した。


「あの馬鹿二人が……」

 

 数人の山賊が地面に倒れており、血まみれの男を踏みつけた女性が二人いた。

 相手から奪った剣などの武器を握り締め、何十人もの山賊達に取り囲まれている。

 

「このアマが、良い度胸じゃねぇか……。なぶり殺しにしてやらぁ!」

 

 捕まえた後の楽しみを想像してるのか、下劣な雄の獣欲を表情に隠そうともせず、現れた女二人の身体を男達が視姦した。

 舌舐めずりが止まらない男の一人が、嬉しそうに奇声を発しながら飛び掛かる。

 男の喉元に手斧が突き刺さり、血飛沫を舞い散らせて地面に倒れた。

 

「……は?」

 

 首から手斧を生やした仲間を見下ろし、剣を構えて呆然としていた男の額に、間髪入れず剣の刃が振り下ろされる。

 悲鳴を上げたのは女二人ではなく、山賊側の方だった。

 女二人が得物を振り回して、嬉々とした表情で武装した男達に襲い掛かり、次々と嬲り殺しにしている。


 しかし数の暴力には勝てないのか、冷静に隙を狙った数人の男が突き出した槍が、女二人の柔肌を斬り裂いた。

 屋外にも潜んでる者がいたらしく、家の屋根上から弓士が放った複数の矢が、戦いに夢中な女二人の背中を貫く。

 勢いを取り戻した大勢の山賊達が、女二人に襲い掛かった。


「た、助けに行かなくて良いの?」

「どうしたもんかね……」

「良いわよ。ほっときなさい」

 

 心配そうな表情で、様子をうかがっていたレイラが見上げると、頭上から別の女性が落ちて来た。

 よっぽど身軽なのか、わざわざ納屋の屋根から飛び降りて来た自称暗殺者のキャシーが笑みを浮かべる。

 

「百人くらいはいそうなのに。わざわざ死に行く必要も無いわよ。あなたも嬲り殺しにされたいの?」

「で、でも……」

「心配しなくても良いわよ。あなたが思ってるほどアイツらは、生易しい世界で生きてる子じゃないから。それよりも、コレ見てよ。村長の家から、良いモノ見つけちゃった」

 

 剣と言うよりは、刀にも見える戦利品を握り締め、お姉さんが嬉しそうに微笑む。

 

「ねえ。いったん戻ってみない? コレとか持ち帰ったりは、できないのかしら?」

「アイツらはどうすんだよ?」

「生きてれば、戻って来るでしょ? 死にたがりやの面倒までは、見てられないわ。ここで死んだら、次こそ本当に死ぬ(・・・・・)かもしれないわよ?」


 互いに顔を見合わせ、キャシーの提案に皆が頭を悩ませる。

 いったん戻ったら確かにどうなるかの興味が大きく、今回はあの施設に戻れるかの確認もかねて、帰還をすることになった。

 俺達が出て来た、納屋の裏にある魔法陣に四人で乗る。

 

『リタイアしますか?』

 

 男性とも女性とも区別がつかない、機械的な音声が頭の中に響いた。

 俺だけが聞こえるらしい声に、今回は『はい』と返事をしてみる。

 視界に映る空間が歪み、あの浮遊感が俺の身体を包み込んだ。

 

 

 

 

 

   *   *   *

 

 

 

 

 

『山賊に襲われた村。二回目のチャレンジです……。御武運を』

 

 男性とも女性とも区別がつかない、五日ぶり(・・・・)に聞く機械的な音声が頭の中に響いた。

 待ちに待った、懐かしい浮遊感だ……。

 

「あー、くっそ。丸四日も水しか飲んでないと、さすがにキツイぜ。死んでも良いから、とにかく何か食いに行くぞ」

 

 剣闘士のイリーナが酷い空腹でイラついたように呟き、見覚えのある村を納屋の物陰から睨みつけている。

 俺も四日間の水だけ生活は限界を感じていたので、早く何かを口に含みたかった。

 

「よし、全員来たな。ニキータ、案内しろ」

「ほいほい」


 糸目のニキータが、皆を案内するように移動する。

 村人を皆殺しにして食事に夢中な山賊達に見つからないよう、俺達も物陰に隠れながらニキータの後をついて行く。

 大勢の人がいる村の中心から、ちょうど死角となる場所にある石造りの家に忍び寄り、刀を持ったユイが素早く突入する。

 中にいた二人の男が声を出す前に仕事を片付けたらしく、皆で中に入ると首が床に転がっていた。

 

 人が死んでる現場を気にした様子もなく、テーブルの上に並べられた御馳走に皆が一目散で群がる。

 家畜を殺したと思われる焼いた肉を、手づかみで口に運びガツガツと食べた。

 ワインやエールが、水の代わりに入ってたけど気にせず喉を潤し、皆でコップを回し飲みしながら酒瓶を空にした。

 

「ぷはーっ。やっと落ち着いたぜ……」

 

 コップではなく酒瓶をラッパ飲みした剣闘士のイリーナが、ご機嫌顔で口元を手の甲で拭った。

 行儀悪く肉を手づかみで持ち運びながら、この家の窓である鎧戸の隙間から外の様子を伺う。

 ようやく正常な頭に皆が戻ったのか、入口の傍などに立って外を警戒している。

 

「ニキータ。前もこんな感じだったのか?」

「うん。みんな食事に夢中みたいで、この家には誰も来なかったよ。前と同じだね。作戦を考える時間は、もう少しあると思うよ」

 

 肉切り包丁を握り締めた糸目のニキータが、笑顔で答える。

 

「前は二十人くらい道連れにしたから、リタイアしなければもっと多くやれるよ。コレも最初から持ってるしね」

 

 死ぬ直前で握り締めることができたらしい、血塗れの肉切り包丁を嬉しそうにブンブンと、自称殺人鬼のニキータが振り回す。

 正確には、合法的な人殺しができる死刑執行人になった元死刑囚の連続殺人鬼らしいが、まともな女で無いのは確かだ。

 

「今回は絶対にリタイアしねぇよ。腹ペコで何日も過ごすのは、もうコリゴリだ。もしユタロウの予想通りに、ペナルティがリタイアの人数なら、十一日も我慢できる自信がねぇよ……。とりあえず村にいる山賊共を全員倒したら、どうなるかを見てやらぁ」

 

 鼻息を荒くして、剣闘士のイリーナが腕をブンブンと回す。

 

「シスターと闇医者は、神官と一緒にいろ。ここに潜むか、どうするかはお前達の判断に任せる。騎士様と従者つれは俺達と一緒に行動しろ。ユイとニキータは前みたく、いきなり突っ込むな。手分けするにしても、なるべく気づかれない所から順番に数を減らしていく。好き放題に暴れて良いのは最後だ」


 サイコパス組が暴走するのを警戒して、イリーナが念を押すように二人を睨みつける。


「はいはい。大丈夫、大丈夫」

「ねえ、レイラ。この刀、本当に貰っても良いのよねぇ?」

「村にいる山賊を、全員殺せたらね」

「ふふふ……」

 

 黒い髪をポニーテールで結んで、第一印象はまともそうだった美女が、恍惚とした表情で刀に頬ずりをした。

 

「はぁ~。これから、いっぱい血を吸わせてあげますからねー。くふふっ」

 

 自称辻斬りの前髪パッツン変態女が、嬉しそうな笑顔でベロリと刃を舌で舐め回す。

 ユイの異常性は既に周知の事実なので、物騒な発言が耳に入っても、誰も気に留めない。

 

「キャシーは、先に屋根上の弓士をなんとかしてくれ」

「ええ、そうね。すぐにやるわ」

「師匠。私は師匠と、一緒にいれば良いのよね?」

「そうだ。レイラは俺と一緒にいろ。ユタロウは例のヤツを頼むぜ」

「了解。視界ジャックをして、皆と情報を共有していくよ」

「よし、行くぞ」

 

 ここにいる十一名と打ち合わせを終えた後、今度こそ山賊狩りを成功させる為に、家の外へ出た。


暇とヤル気ができたら、続きを書きたいな……(白目)

アクションが苦手な作者なので、どっちかといえば謎解きがメインになるのかな?


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