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公衆電話な女の子。  作者: 夕凪
第1章
6/10

第5話


 結局、その後晴翔にも一通り説明をして火曜日は学校を休ませてもらい(晴翔も休んでくれた)、水曜からはとりあえず学校に復帰した。

 ちなみに、あの日の夜以降、着替えを晴翔に取ってきてもらったために、一度も家には帰らずに晴翔の家でお世話になっている。

 部活は休んだが、それ以外はなるべく普段通りに生活を送った。

 それでも、仲が良い連中は何かを感じ取ったみたいで、大丈夫か?と心配してくれた。

 少し嬉しい。

 警察には捜索願という形で連絡したが、今のところ音沙汰なし。

 晴翔と七羽には最初に事情説明をしてからは一切この話をしていない。

 向こう側も気を遣ってくれているのか向こうからこの話題に触れてくることもなかった。


「まぁ、そんなわけでさ、あれ以来家に帰れないって言うか、帰りたくなくてね。軽くトラウマ。情けないだろ?」


 電話屋さんはまるでそんなことない、というように首を振ってくれた。


「ありがと。僕の親は二人とも週刊雑誌の記者なんだ。もしかしたら何か殺されるようなヤバいネタを掴んでたのかもしんない。まぁ、それなら自業自得なのかもしれないけどね。」


 でも、それでも、やっぱり許せない。

 それに、よくよく考えてみれば週刊誌に感づかれるとマズイようなことをする方が悪いとも言える。

 真面目にしていればそういう事にはならないはずだ。


「せめて何か手がかりがあればいいんだけどね……。あの時は僕も動揺しちゃって殺されたシーンだけは脳に焼き付いてるのにそれ以外の細かいことはあんまり覚えてないんだ……」


 もっと僕がしっかりしていれば……。

 クソッ。


「これからどうしよう……」


 お金とか。

 とりあえず捜索願を出したことについては親戚に連絡しているが……。

 今はまだいい。

 親が貯めてくれたお金があるからだ。


「大学、行けるかな~?」


 このままバイトもしなければヤバイ気がする。

 かといってバイトすれば行けるとも限らないし……。

 或いはどこぞの主人公が幼馴染みの体を治すために猛勉強して国立大の推薦枠とかを狙うか。

 僕の頭がそんなに良いわけがない。


「はぁぁぁぁぁ……ホント、どうしよう」


 あとは……アレをもっと磨けばどこぞの大学から声がかかるかもしれないけど…。

 改めて電話屋さんの顔のあたりを眺めてみる。

 視線に気が付いたのかまた可愛らしく小首を傾ける。



 その瞬間。



 風が、強く吹いた。



 それはもう、ちょうど僕たちの後ろを通り過ぎた犬の散歩をしている我が若柳高等学校の校長、月潟勲(56)のカツラを吹っ飛ばすのに十分なほどのエネルギーを持っていた。


 油断していた、というのもあるかもしれない。

 電話屋さんが着用している黒子が着ているような黒衣の、顔の部分。

 顔を隠すための布。

 それがヅラさえも吹き飛ばした風によって捲り上がり―――



「!!!!」

「……!!」



 顔が、見えた。

 電話屋さんが慌てて布を戻して顔を隠す。

 

 すごく、綺麗な、顔だった。


 家族が殺されて、絶望に暮れて、鬱になってしまいそうだったけど。


 彼女の顔を見た瞬間、何もかもが吹っ飛んだ。


 見とれてしまった。


 整った顔立ち。


 どんなものよりも滑らかそうな顎のライン。


 澄んだ瞳。


 その瞳がまた、大きい。


 吸い込まれそうなほどに。


 ふんわりと、触ったら溶けてしまいそうなほっぺた。


 可愛らしく、控えめな鼻に。


 桃色のふっくらとしていて張りのある小さめの唇。


 そして、金髪だった。


 金髪の人間なんてそんなにいない。日本には。


 だからだろうか、ものすごく、現実味がなかった。


 まるで、この世界とは違うところで生きているかのように。




「綺麗だね……」


 思わず口を吐いて出てしまった。

 女の子に綺麗だ、なんて恥ずかしくて直接言ったことが一度もないのに。


「………………ぁぅ………………ぅぅ……………」


 喋った!?

 電話屋さんが!?

 前代未聞イベントがこんなにここで多発していいのか!?いやよくない!!

 しかもまた可愛らしい声!!

 鈴のように可憐で透き通るようで、聴いていて落ち着く。

 天使かよ!!

 思わず昇天しかけちゃったよ!!

 電話屋さんはもじもじとしている。


「……もしかして恥ずかしがってる………?」


 コクッと頷く。


「か、可愛い……」

「………………………………ぅぁ……………うゅ…………」

「すごく、綺麗な声だね………」

「!!」

「もうちょっと聴きたいかな、なんて」

「……ぅん………」


 どうしよう、お持ち帰りしたい。

 電電公社さんさっすが!!

 ………ん?電電公社?

 何だっけ………?

 いや、今は電電公社より目先の美少女だ!!


「もしかして電話屋さんは、みんな君みたいに美少女だったり、イケメンだったり

するの?」


「……ぅぅん、みんなバラバラ、な顔だから、みんな美少女だったり、イケメン、だったり、するかは、分かんない………」

 

 そっか、そっか。

 要するにブスがいてもおかしくない、と。

 そういえば前にデブな電話屋さんは見かけたことがあるな…。


「そういえば……名前ってあるのかな?ちなみに、僕の名前は三沢優陽」

「……えと、んと、わたしの名前は……Lamentabile……」

「ラメンタービレ……」


 確か、イタリア語か何かで哀れなって意味じゃなかったっけか?

 音楽記号であった気がする。

 それにしても、それが名前か……。なんでそんな名前を付けたんだろうか…?



次話は4/27 19時頃に公開する予定です。

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