表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

まだ見ぬ世界

作者: 日浦海里

光のない場所で目覚める

微かに衣擦れの音がして

木の板が軋んだ音がした

この肌に触れているのは

体を覆っていた肌掛けで

一瞬後にするりと落ちた


身体を起こし立ち上がる


生ぬるくざらついた感触

微かない草の匂いがして

風が運ぶ草の匂いがした

まとわりついているのは

熱を伴った湿った空気で

風が流せど消えはしない


左の手をまっすぐ伸ばす


固い何かが指先を曲げる

掌を当てると平たく温い

撫でると何かが指を刺す


異物が入り自分が流れる

それは棘だと脳が答える


目には何も映らなくても

脳が記憶が世界を形作る


寝台があり木の床があり

剥き出しの木の柱があり

何処かに外への扉がある


棘が出ていた柱は古いか

新築らしい匂いはないか

まとわりつくのは夏の風

月の光は雲に隠されたか

床の軋みに身が強張った

自分は何を恐れてるのか


映らなくとも映る何かの

映してるはずの向こう側

そこに自分は何を見たか


光がないのは雲のせいか

深淵が口を閉じたからか

脳が記憶が形を補完する

自らの知る最もらしい形

それが真実であるのかは

自分だけが分かっていて

誰も彼も分からないまま


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
その目に何も映らなくても、確かに世界は存在していて。 光が射しこんだその時に、惑いながらも主人公は足を踏み出せるように思います。 本論ではないですが、すべての行が11文字でぴしっと書かれていて整然とし…
目からの情報がなくなると、ほかの感覚が鋭敏になりますよね。受け取る情報が、いつもより大きく感じるような。 いつもは感じているのに気付かない周囲の細やかな変化と、あるべきものが思ったところにない不安感。…
 見えない世界を手探りで知ろうとする過程はホラー的にも感じられますが、手探りが故の不安を表していると気付けば明るい世界が広がっているとも考えられる。  畳と寝床のある建物の中、いつよに来たか誰彼時のひ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ