不可幸力
「なんだか俺だけ好きみたい」
呟くと、子犬のような瞳がこちらに向けられる。
「何言ってるの、流星の方がモテるじゃん」
「それとこれとは関係ない…」
放課後。
俺たちだけの秘密の場所。
下校するクラスメイト達を眺めながら、俺はこの青空に似つかわしくないもやもやした気持ちを口にした。
「それに、俺のこと好きな子たちはなんてゆーか、キャーキャー騒ぎたいだけって言うか…」
ふと、先日圭介に告白したと噂の女子が視界に入る。
「圭介のこと好きな子は、ガチ恋じゃん…」
「ガチ恋、って何?」
「本気で好きってこと」
振り向くと、圭介はその子犬のような目を細めて微笑んだ。
「じゃあ俺は流星にガチ恋だね」
「…ずるい」
その笑顔ひとつで、俺のもやもやなんか吹っ飛んじゃって。
「好きだよ、流星」
その言葉ひとつで、この青空にも昇る気持ちだ。
end.