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君は友達

作者: 森永ダリオ

pixiv様にて行われた『倉吉ポップカルチャーフェスティバル開催記念キャラクターイラスト&短編小説コンテスト』に参加する為に書き下ろした作品です。

より多くの方達に読んで頂きたいと思いこちらにも投稿する事にしました。

それではごゆっくりご覧下さい。

私の名前は藤井杏奈。

ごく普通の高校2年生である私には同じクラスに親友と呼べる子が居る。


「ねぇ、今日の放課後、パープルタウンでジェラート食べてかない?」


それがこの子、福井美咲。

ショートヘアのよく似合うボーイッシュな見た目をした彼女とは進級時のクラス替えをきっかけに出会い、話をしていく内にお互いの趣味や好み等に共通する部分が有った為そのまま意気投合し、今ではすっかり気心の知れた関係となった。


「良いねぇ、賛成!」


私はその提案に二つ返事で答えると

「じゃぁ決まりね!」

と言いながら美咲は屈託の無い笑顔を見せた。


ちなみにパープルタウンというのは市内に在るショッピングセンターで周辺にはビジネスホテル等が並び、倉吉駅から徒歩10分という好立地に存在する。

更に言うなら嘗て同場所に倉吉木材市場が在ったらしく今の場所に移転したのを機に建築された様だ。

まぁ、私が生まれる前の話であって全てその時代を知る大人達から聞かされて得た知識に過ぎないのだが・・・。


放課後となり、約束通り美咲と共にこの後食べるジェラートの話題を中心に話をしながらパープルタウンへ向かう。

夏という事も有り夕方になろうとしている今の時間帯も蒸し暑さを感じずにはいられなかった。

私は長い髪を少しだけ鬱陶しそうに後ろにやると涼しそうなショートヘアを靡かせながら歩く美咲を羨ましく思いながら暫くの間、視線を向けていた。


「ん?杏奈、どうしたの?」


先程から私によってじっと見詰められていた美咲は不思議そうな表情をしながらこちらに何事かと尋ねて来る。

それによって我に返った私は妙な空気になってしまった事を察すると恥ずかしさを覚えつつ適当な理由を付けその場をやり過ごすのだった。


道中、パープルタウンの近くに在る仏具屋の前を通りかかったのだが、その度に私の頭の中で条件反射的にある唄のメロディが流れる。


「もみじの手の平合わせましょ♪ ご先祖様も見て御座る♪」


この唄の正体は地方の仏具屋のCM用に作成された唄である。

内容としてはこの唄をバックに和服を着た幼い少女2人が仏壇の前で手遊びをしているという物で私達の地域ではこの仏具屋のCMとして使用されている。

現在ではアニメーションに変更されたががつい最近まで実写映像の物が長い間放映されていて、私の両親も子供の頃に幾度と拝見したと言っていたので少なくとも30年以上はお茶の間に流れていただろう。

私自身、このCMを見る度に何時の頃からかあの手遊びをしていた少女2人は現在何歳になったのだろうと考えてしまっていたのだが、その事について何気無く美咲に振ってみると彼女も同様の想いを抱いていた様だ。


共通の想いを抱いていた事に可笑しさと嬉しさを感じながらも私達はパープルタウンの敷地内へと到着する。

平面駐車場の一角には餃子の王将 倉吉店が営業しているのだが、何故パープルタウンの店内に入居しなかったのか私の中では疑問に思う事柄なのだが、それを他の誰かに言ったところでどうにかなる訳では無いので『永遠の謎』のまま心の中に留めておこう。


芝生広場側の出入り口から入店した私達はそのまま1階エスカレーター付近に在るジェラートショップに向かいそれぞれお目当てのジェラートを購入すると休憩スペースの椅子に腰をかけ食べる事にする。


「う~ん、美味しい・・・。」


よほど美味しかったのか、一口食べるや否や感激する様にしてジェラートに舌鼓を打つ美咲。

その姿はまさしく可憐な少女と言っても過言では無く普段、彼女に対し『カッコ良い』、『イケメン女子』といったイメージを持っていた私にとってその行動は予想外の物であった為、少しの間放心状態となってしまった。


「杏奈、早く食べないと溶けちゃうよ・・・?」


そんな私の様子を見兼ねてかジェラートを食べる様に進める美咲。


「え?あぁ、そうだね・・・。」

「どうしたの、杏奈。もしかして今日暑かったから、ボーっとしてた?」

「う、うん。まぁ、そんなところかな・・・。」


私は思わずうろたえてしまうも今の心境を悟られてしまわない様、話を合わせながらもジェラートを口にし始めた。


そして私達は暫くの間、他愛の無い話で盛り上がる。

推しのアイドルの話。

好きな服のブランドの話。

今使っているシャンプーやトリートメントの話。


傍から見ればどうでもいいと思われるかもしれないが私達にとってはかけがえの無いひと時と言っても過言ではないのだ。


談笑に夢中になっていると帰宅の時間が迫っている事に気付きそれぞれ反対方向に自宅がある私達はパープルタウンの前で別れたのだった。


帰り道、ふとジェラートを食べた際の美咲の表情を思い出す。

現在、彼女は冒頭でも触れた様にヘアスタイルをショートにしているが、ロングヘアならば更にさまになっていた事だろう。


そんな事を心の中で呟く私はふと夏の空を見上げると夕方から夜へと移り変わろうとしている最中であり、沈みかけた日の光が市内を紅色に染めていた。


今度、機会を見計らって「ロングにしないの?」って聞いてみる事にしよう。

きっと美咲の事だから「杏奈が良いって言うならしてみようかな・・・?」と言うに違いない。

だって、『君は友達』なんだから。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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