表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邂逅の日  作者: 唖鳴蝉
1/3

1.前口上

お久しぶりの死霊術師です。今回は三話構成で、死霊術師としての懐旧譚となります。

 俺がシャイルの()っつぁんと契約した経緯(いきさつ)か?


 ありゃ確か……ノートリー伯爵家の件が片付いて、(しばら)く経ってからの事だったな。おぅ、墓を開けてみたら死人がいたってぇ……ちょっと聞いただけじゃおかしいのかおかしくねぇのか解りづれぇ、あの一件のこった。


 その少し前にハミルカス……デュラハンの旦那から貰ったスキルがあったんだが、それを試す機会が中々無くってな。何しろお(めえ)、スキルを貰った事情が事情だったからよ。あまり大っぴらに使いたかぁなかったのよ。万一の時の切り札にもなりそうだったしな。


 んで――好い機会だからちょいと町を離れて、人目を避けられる場所で使ってみようって思ったのよ。戦闘系のスキルが多かったし、町を離れりゃ盗賊の一匹や二匹出て来るだろうって思ったしな。あ? 貰ったスキルが役に立たなかったら? そん時ゃ自分の腕でどうにかするだけよ。これでも冒険者として、そこそこの場数は踏んでたからな。


 あぁ、町を離れる理由についちゃ、使い魔を探しに行くって説明しといた。こりゃ別に、その()(しの)ぎの出任せってわけでもなくてな。実際、その頃の俺は使い魔と契約していなかったし、そろそろ使い魔の一体も欲しいって思ってたなぁ事実なのよ。

 ただなぁ……俺たち死霊術師(ネクロマンサー)の使い魔ってなぁ、従魔術師(テイマー)召喚術師(サモナー)の〝使い魔〟たぁ、ちっとばかりわけが違うんだ。……はっきり言っちまうとだな、俺たち死霊術師(ネクロマンサー)が契約できる相手ってなぁ――アンデッドなのよ。


 こりゃ前にも話したと思うけどよ、アンデッドってなぁ大雑把に三つに大別できんのよ。

 第一はいわゆる動く屍体(リビングデッド)ってやつだ。ゾンビとかスケルトンとかいうやつだな。

 第二は悪霊とか怨霊とか……いわゆる霊体(ホーント)ってやつだ。俗にゴーストとかファントムとかレイスとかって呼ばれてるやつだな。

 そして第三は、第一と第二以外(・・)のものを()(くる)めたやつらの事で、吸血鬼(ヴァンパイア)とかリッチとか、或いはデュラハンなんかかがこれに当たるんだが……はっきり言って、駆け出し死霊術師(ネクロマンサー)にどうこうできる相手じゃねぇ。

 だから実質的な選択肢は、動く屍体(リビングデッド)霊体(ホーント)のどっちかしか()ぇわけだ。


 次に運用って視点から考えてみるぜ? 実体を持つ動く屍体(リビングデッド)には、使役主がやんのと同じような仕事を任せる事ができる。言い換えると、使役主の代わりに仕事を任せられるって事だ。まぁ……腐った身体を持つゾンビってなぁ普段使いにゃ向かねぇってんで、敬遠されがちじゃあるけどな。

 それに対して、実体を持たない霊体(ホーント)の場合、使役主にやれるような仕事を任せらんねぇ一方で、使役主にゃできねぇ仕事を任せる事ができる。


 んで、死霊術師(ネクロマンサー)はどっちを選ぶのかってぇと……言ってみりゃあ好みってところもあるんだよな。どっちでもそれなりに仕事を任せる事ができるんだからよ。ま、現実問題としてはだな……出会った方と契約するってのが普通なわけだ。……ゾンビのやつぁ別にしてよ。

 ついでだから説明しておくと、アンデッドを入手する方法は二つある。野良アンデッドと契約するか、自力で屍体をアンデッド化して契約するか――だな。

 前者の場合、条件の好いアンデッドに巡り会えるかどうかは運次第。それ以前に、出会ったアンデッドが素直に契約に応じてくれる事ぁ滅多に無ぇから、(ちから)()くで言う事を聞かせなきゃならねぇ。駆け出しにゃあちょいと荷が重いわな。


 後者は自分の思いどおりのアンデッドを生み出す事ができるんだが、そのための屍体をどっから調達するかってのが問題になる。

 さっきも言ったような理由でゾンビが除外されるから、駆け出しの死霊術師(ネクロマンサー)の狙い目はスケルトンって事になる。……けどよ、今時分、完全な全身骨格ってなぁ、これが案外と手に入りにくいもんでな。俺たち死霊術師(ネクロマンサー)にとっちゃ墓荒らしは()(はっ)()だから、運好く完全揃いの屍体に巡り会うのを待つしか無ぇ。あぁ、死霊術(ネクロマンシー)のスキルでスケルトンにする事ができるから、別に白骨化してる必要は無ぇんだわ。

 ……てぇか……屍体をそのまんま使役してるとよ、生前の知り合いと()(くわ)して(ぶつ)()(かも)す事があるんでな。屍体はスケルトン化して契約すんのが定番になってる。……腐っちまってる事も多いしな。


 ……言われる前に言っとくぞ? 自分で殺した相手を使役する……ってなぁ、死霊術(ネクロマンシー)()(はっ)()なのよ。いや、人倫とか道徳とかって問題じゃなくってな、単純にできねぇのよ。〝死霊術(ネクロマンシー)は死者を対象とするものであって、殺害した者をその対象とする事は、神がお許しにならなかった〟――とか言ってるやつもいるけどな、どうもそれだけじゃなくって、新鮮過ぎる屍体には使えねぇらしいんだわ、死霊契約。そのせいなのか、連れに殺させた屍体をアンデッド化して使役するってのもできなくなってる。ま、それが世間に知られてるお蔭で、俺たちもそう危険視される事が無ぇんだけどな。


 ……話を戻して、シャイルの()っつぁんの時はだな――


明日もこの時間帯に投稿の予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ