表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/58

話し合い

結局、話し合いには参加した方が良いと言われて、祈は煌と共にリビングへ降りた。

二人が戻って来たのを見た、海斗が振り返って言った。

「あれ。真希さんは?」

煌は、首を振った。

「知らない。強引に部屋に入って話し合いに同席しようとしたので、私が追い出して扉に鍵を掛けた。ここへ戻って来てはいないようだな。」

追い出したのか。

煌なら、やりそうだった。

清が、言った。

「今、裕馬に話してゲームの間は恋愛とかやめてもらうように取り決めてもらうことにしたよ。色が濁るだろう?今現在も面倒なことになっているし。」

煌は、頷く。

「できたら吊って欲しいぐらい、色が濁って分からなくなっているな。私情が挟まると面倒だ。私は、思い出したのだがあちこちから女性が寄って来て鬱陶しかったように思う。指輪の跡はあるが、なので恐らく女性避けにしていたのではないかと推測しているのだ。何しろ、女性というものに興味が全くなくてね。」

この見た目で、お金持ってそうなのに?

直樹は思ったが、海斗は別の意味に捉えたようだ。

顔をしかめて言った。

「え、まさか煌さん、男性の方が良い人?」

煌は、同じように顔をしかめた。

「違う。間違いなく対象は女性だが、しかし寄って来るのには我慢がならないということだ。祈さんは、そんなことは全くないので居心地が良くてね。」

祈は、苦笑した。

「どうしたわけか、私も特に誰を見ても恋愛対象とは思えなくて。まるで息子のように思いますの。それだけですわ。」

海斗が、嬉しそうに言った。

「だからお母さんみたいに思うのかなあ。祈さんは若いのにね。」

祈は、フフと笑った。

「そんな風に思ってもらう方が嬉しいわ。」

煌は、表情を引き締めて、言った。

「…それで。もうこんなことをしている間に4時を過ぎてしまった。午後の話し合いはどうするのだ?そろそろ議論をしないと、それこそ君たちが渋っている玉緒さんに決まるのではないのかね。」

それには、亜由美が渋い顔をしながら、詩子を見る。

詩子も、困ったように亜由美を見た。

それに気付いた、裕馬が言った。

「…どうしたんだ?何かあるのか。」

亜由美が、しばらく考えてから、言った。

「…あの、さっき玉緒さんと話したんだけど。思ったより、人狼ゲームのことはわかってて、でも、言葉とかわかってなかっただけみたいで。その…村役職って、言えない、言ったら意味がないものもあるでしょう?」

え、と皆が絶句する。

煌が、眉を寄せた。

「…役職があるのか?」

亜由美は、また詩子を見る。

詩子が、困ったように言った。

「その…役職名までは。でも、なんかありそうではありました。共有者は、どうしてあんなに言わせようとするんだろうって怪訝な顔をしていて。だから…私は、狩人か猫又なのかなってちょっと思ってて。」

どちらであっても村は吊れない。

直樹は、思った。

猫又は昼の投票で死ぬと誰かを道連れにしてしまう。

狩人は、確定した霊媒師を守れなくなってしまう。

祈は、言った。

「…もし猫又ででもあったら、大変だわ。昼の投票で死んだら村のためにならないかもしれない。襲撃なら狼を道連れにしてくれるけど。」

「狩人でもだよ。」海斗が言う。「霊媒師が二日掛けて噛まれちゃう。」

皆が、深刻な顔をした。

思ったより、玉緒は考えて黙っていたと思われるからだ。

だが、煌がそんな話を聞いて少し考えてから、言った。

「…もしかして、狼か狐であって、仲間と接触してそれの入れ知恵なのでは?」皆が、驚いた顔をした。煌は続けた。「それはいつ聞いたのだ。食事の時か?」

亜由美は、首を振った。

「いえ、さっき上でふらふらしてたのを捕まえて話した時です。食事の時は、皆の話を笑って聞いてるだけでした。」

煌は、頷いた。

「ならば、恐らく人外で仲間から入れ知恵されたと私は思うな。とはいえ、村目線では役職があると匂わせている玉緒さんを吊ることはできないのだろう?」

裕馬が、頷いた。

「まだ分かりませんからね。確かに煌さんが言うように、あれだけ何もわかっていない風だったのに、今更な気がしますし。でも、真役職だったらまずいことになるし、それは誰かから黒でも出た時に考えましょう。ということは…また一からグレー詰めか。」

裕馬が、うんざりしている。

海斗が、言った。

「だったらさ、もう真希さんにしちゃう?残してもめんどくさいし、人外かもしれないじゃないか。他は黒いところもなかったし、困るんだよね、そういうの。」

確かにそうだが、安易すぎないか。

別に自分は狼陣営だから構わないのだが、真希は発言からは白かったように思う。

万が一狼だったらまずいが、しかしあんな風にこんな時に恋愛云々言っていられるのだから、多分村人だろう。

なので、直樹も頷いた。

「ほんとだよ。もう、もちろん黒の方が良いし、出来たら黒目を吊りたいと思うけど、分からないなら後々面倒になりそうな所を吊っておくのが一番良いんじゃないかな。玉緒さんはあんな風で面倒だけど、役職かもしれないなら、真希さんで良いんじゃない?オレも海斗に同意だなあ。」

清が、慌てたように言った。

「だから待てって。仮に玉緒さんが騙りだったりしたら…何しろ匂わせてるだけだろ。そしたら真役職がどこかに潜伏してるんだぞ。それが真希さんだったらどうするんだよ。とにかく、一度議論をしよう。玉緒さんには役職なら役職名をハッキリ言ってもらって、対抗が出ないか見てもいいしな。」

だが、それには煌が首を振った。

「初日から真が透けるのはまずい。仮に他に真役職が居ても、出ない方がいい。猫又なら噛まれないが、狩人だったらこれからに影響してくるだろう。」

それはそうだ。

裕馬が、ため息をついた。

「…そうだよな、煌さんの言う通りだ。とりあえず、会議だ。」と、キョロキョロした。「今居ないのは?諒さんと…和彦さん、徹、悟さん、咲子さん…玉緒さん、美智さん、真希さんか。手分けして呼んで来てもらえないかな。」

直樹が、頷いて立ち上がった。

「あ、じゃあオレが。」と、亜由美と詩子を見た。「女子は頼める?」

二人は、渋い顔をする。

「あの…真希さん、来るかな。」

煌に、こてんぱんにされたのだ。

裕馬は、ため息をついた。

「来なけりゃ吊られるかもって脅してくれ。ほんとに…こんな時に。」

亜由美と詩子の二人は頷いて、立ち上がった。

「じゃ、僕も行くよ。」

海斗が立ち上がって直樹に並んだ。

そうして、4人は残りの人達を集めるためにリビングを出て行ったのだった。


上に向かって行くと、意外なことに1号室の悟の部屋に、諒、和彦、徹が集まって話していた。

海斗が、言った。

「あれ。みんな悟さんの所に居たの?他の人達は、リビングに集まってるよ。そろそろ会議しようって。」

悟が、驚いた顔をした。

「まじか。みんな部屋に籠ってるのかと思ってた。ここに居たら、外の音が全く聴こえないんだ。めちゃくちゃ静か。」

諒も、頷いた。

「そうだよな。みんな寝てるのかって話してたんだよな。」

和彦が、言った。

「だからさっきノックしまくったって言っただろうが。全然聴こえないとか言って。ここにはチャイム鳴らさないと、外からの音は完全に遮断されてるわけだな。」

4人か…。

直樹は、思った。

普通に考えたら、狼同士が話し合ってたと思いたいところだが、他はどうあれ徹だけは確定霊媒師だ。

なので、それはないと思われた。

「…みんな待ってるよ。女子のことは亜由美さん達が呼びに行ってくれてる。」

と、扉を開くと、すぐ隣りの2号室の扉が開いていて、その前に亜由美、詩子、美智、玉緒の4人が立って、何やら真希と言い合っていた。

「だから!笑いに来たの?!詩子さんも煌さんなんでしょ?私が手酷く撥ね付けられたって下で噂してたんじゃないの?!」

和彦達が、驚いた顔をする。

何も知らないのだから、何事かと思うだろう。

…ここは、無視して通り過ぎるべきかな。

直樹が、海斗と無言で目を合わせて頷き合って歩き出すと、それに気付いた亜由美が、こちらに振り返った。

「ねえちょっと!真希さんを説得してよ、夕方の会議しなきゃならないのに!」

逃げられなかったか、と顔をしかめた海斗と直樹がため息をつくと、何も知らない諒が言った。

「いったいなんの事だ?詩子さんと真希さんが煌さん挟んで三角関係とかか?」

余計なこと言うなって。

直樹が思って渋い顔をしたが、海斗が答えた。

「違うよ。煌さんはゲームに集中したいし女性云々今はいやなんだって。だから、言い寄って来る真希さんは鬱陶しがられて怒られたみたいなんだ。終わってからなら、いけるかもだよ?だから。」

真希は、そう言われて、え、と表情を変えた。

「…煌さんがそう言ったの?」

海斗は、頷いた。

「うん。今はそれどころじゃないからって。だから、僕は終わってからならいけるのかなって思っただけ。ここは、上手いこと議論を進めて良い心象稼いだ方が後で良いんじゃない?今はマイナスになっちゃってるんだからさあ。村のために頑張る姿を見せるべきだよ。」

上手いこと言うなあ。

直樹は、感心した。

若そうに見えて頼りないのかと思っていたが、海斗は世渡り上手に見えた。

亜由美が、何度も頷いた。

「そうよ。今はそれどころじゃないし。後からなのよ、きっと。頑張ってる姿を見せたら、きっと心も解けてくるんじゃない?」

真希は、掴んでいたドアノブを離して、扉を開けた。

「…そうね。私が慌て過ぎたわ。会議に行く。」

詩子が、急いで言った。

「じゃあ、三階の咲子さんも呼んで来ましょう。」と、海斗を見た。「じゃあ、後でね。」

真希を入れて5人になった女子達は、三階へと上がって行った。

直樹は、それを見送ってため息をついたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ