狼の話
オレ達は、初日の夜にドキドキしながら外へ出て、シンと静まり返った中をリビングへと静かに降りた。
リビングは昼間の喧騒などなかったように静かで、最初は怖かった。
メインの照明もついていない。
暖炉の上のランプとか、オレンジ色の光だけなんだ。
もちろん、廊下も足元を照らす低い位置にあるランプのような小さな灯りだけで、夜は本当に不気味な様子だった。
そんな中で、顔を突き合わせたのはオレ、和彦、そして玉緒さんだった。
玉緒さんは、昼間にあまりにもお粗末だったので、リスクを冒して部屋に向かって、役職騙りをしろと教えたんだ。
その際、あんな発言…村人だとかどうだとか、そんな発言をしてしまっていたので、他の女子を使うようにと入れ知恵した。
外から役職だと知れた方が、恐らく怪しまれるのもマシだからと。
本当は、オレも和彦もあんな様子の玉緒さんには困っていたし、初日から切る事しか考えてはいなかった。
吊ってもらって色を見て、その上でオレ達が白置きされるように持って行くしかないと思っていた。
だから、ずっと玉緒さん吊りを押していた。
本当は、誰か占い師に騙りで出ようと考えていたのだが、まだ話し合いもできていなかったので、躊躇った。
そしたら4人占い師が出て、狂人が出てくれたのだとその時気付いた。
二人共に出ていないのは、霊媒に三人になった時にわかった。
狐がローラーされやすい霊媒に出て来るなんて考えられないし、そっちも狂人のはずだ。
つまり、占い師に真真狂狐、霊媒に真真狂だろうとオレ達は思っていた。
いろいろあって初日は亜由美さんが吊られたが、亜由美さんが白なのはオレ達には明白だった。
あんな感じでも玉緒さんも人数のうちなので、まあ、とりあえず生き残ったことを労い、そして次の日からの動きをしっかり教え込んだ。
共有に何か聞かれたとしても、大丈夫なように念入りにオレと和彦で文言まで教えた。
玉緒さんはあれでしたたかなところがあって、初心者のふりはしていたがある程度は人狼ゲーム自体は理解していた。
とりあえず、オレ達からしたら、別々にして生き残りをかけないといけないと玉緒さんに言い、これからも攻撃はすると思うから、勝ちたいなら協力しろと言って、その日は和彦と話し合った末に徹を噛むことにした。
直樹は、あれは狼目線でも狂人だ。
やり方が悪いが、なんとか役に立とうとしているのはわかった。
だが、本当に役に立ちたいなら、潜伏しておいてくれた方が良かったかもしれない、と思っていた。
となると、高広も徹が真だが、高広さんがあまりにも真っぽくて。
狩人が護衛するならそこだろうと考えて、徹の方にした。
万が一狂人だったらヤバいと思いながらも、とにかく一人でも落ちたらみんな怪しむからとそこを襲撃すると入力した。
その日は、そのまま部屋に帰った。
和彦には、そこまで完璧にオレと意見を合わせない方がいい、とは言っておいた。
二日目、襲撃が通った。
狩人との三択に勝ったのだ。
とはいえ、今日は占い師からの占い結果が落ちる。
緊張して聞いていると、悟が煌さん白、咲子さんが清白、真悟が正志白で、美智さんはなんと、和彦白だった。
オレ達目線、美智さんは狐か狂人だ。
とりあえず和彦が囲われたことにホッとしたよ。
そして、亜由美さんの霊媒結果から、思った通り直樹が狂人で、高広さんが真だと分かった。
オレ達が、真霊媒だった徹を噛めたことは喜ばしいことだったが、直樹のその後の反応がまずかった。
縄を消費して消えてくれたら良かったものを、あいつは事もあろうにルール違反で死ぬ事を選んで、勝手に死んで逝った。
オレ達からしたら、それでグレー詰めになったらオレがマズい位置に居るので、本当にやめて欲しい動きだった。
高広吊りをして欲しいと思ったが、村は案外に賢くて、特に煌さんが嫌になるほど面倒な方向から考えて来るので、鬱陶しかった。
さっさと疑って吊りたかったが、なかなか隙がなかった。
そんな中で共有者が個別面談なんかし始めて、役職者を全て把握し始めた。
間違いなく、狩人には対抗が出るだろう。
そうなったら玉緒さんを真っ先に吊って白証明に使おうと考えていたが、何と狩人は三人居るのだという。
その内の一人が、詩子さんだと。
オレ達は、混乱した。
狼目線では、占い師には狂人と狐が出ていて、直樹も恐らく狂人、その上でまた役職騙りとなったら、考えられるのはもう、もう一人の狐しかなかった。
しかし、狐が狩人に出るなど、全体未聞だ。
狼が一人を犠牲にして、噛めなかったから狐だと言ったら、その時点でアウトなのだ。
…まさか、占い師に狐が二人…?
オレ達目線でも混乱したまま、玉緒さんすら吊っても良いと思っているぐらいなので、別に誰でもいいと思っていたら、詩子さんは村騙りだったと自ら告白した。
これには、村人も腹が立ったかもしれないが、オレ達だって腹が立った。
お前のお蔭で考えた時間を返せと言いたかったよ。
まあ、何にしろ白だったので、詩子さんが吊られたのはホッとした。
まだ、狼は全員残っていられたからだ。
そして、その夜もオレ達は集まった。
玉緒さんは居るだけで全く役に立たないので、とりあえずこう言われたらこう、とだけ指導して、その日は誰を噛むかで和彦としっかり話し合った。
美智さんが偽なのは、和彦に白を打って来たので分かった。
狂人だったらいいが、悟も偽で狐だったら後々めんどくさい事になる。
縄が心配だったが、ここは美智さんを噛んでみよう、という事になった。
噛めたら狂人で、真目が上がって和彦から縄が遠ざかるし、噛めなかったら狐だと狼目線で確定する。
そうなったら、処理の仕方も考えられるというものだ。
そんなわけで、その日は美智さんを襲撃し、無事に通って三日目になった。
朝、美智さんが襲撃されたと皆が色めき立つ中で、オレ達は占い結果が待ち遠しかった。
オレ達にとって、狐も敵なので、居場所を把握しておかねばならないからだ。
今のところ、呪殺は出ていない。
真占い師が占った所は狐ではないので、そこは噛んでも大丈夫だと分かるし、やりやすくなる。
結果は、悟が海斗白、真悟が清白、咲子さんが真希さん黒だった。
その時、オレ達には分かった。
咲子さんが偽なのだ。
ということは、残った真悟と悟が真占い師で、悟に占われて白が出ていた美智さんは狂人、そして、咲子さんは狐でしかなかった。
はっきり言って、真占い師は1人だけで良かった。
これは、後で思ったことだ。
美智さんを噛むなら、真悟か悟を噛んでおけば、真占い師の結果は1人分落ちなかったし、きっと狼は楽だった。
美智さんを残しておけば、結果騙りをさせて囲わせることもできたのだ。
それを、早まった、と後で思った。
その時は狐をどうやって処理をするかと迷ったし、黒を打ってくれたのでそこを吊ることもできるなと狂人より仕事をしてくれたかと思ったが、実際狼にとって、狐はマジで面倒な存在だった。
残していたら面倒が起こるし、だがそこが狐だと指摘したらなぜに分かると疑われる事になる。
特に煌さんなんかは、きっと分かるのは狼だけだとすぐに突き止めてしまうだろう。
迷っていたら、それどころでない事態が発生した。
煌さん、清、祈さんを役職COさせたのだ。
この三人が、確実に真役職なのはオレ達目線では見えていた。
だが、内訳が全く分からない。
裕馬が初日からいろいろ聞いている煌さんは、もしかしたら共有者の相方かと思った。
だが、清も落ち着いていて自分が疑われても大丈夫な役職かと初日から思っていたのもあって、そっちも共有者の可能性があった。
どちらにしろ、この中の猫又を噛んでしまったら、それでアウトだ。
なので、役職だけはハッキリするまで、ここには触れない事にした。
そしてその日、共有者は玉緒さんを吊ると言い出したのだ。




