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六日目の朝と

その日の朝、もう慣れたように裕馬は目を開いた。

…今日も生きてた。

裕馬は思って、毎日のルーティン通りに起き上がると、トイレへ行って顔を洗ってから、閂が抜けるのをじっと待った。

すると、これまたいつものように6時きっかりに閂が抜けた音がした。

サッと扉を開いて外へと出ると、目の前の和彦の部屋の扉も開いて、和彦が出て来た。

「…裕馬は生きてるな。」と、和彦は廊下を見た。「みんな居るか?」

海斗が、こちらへと歩いて来ながら言った。

「僕も清さんも生きてるよ。犠牲が居るなら二階じゃない?」

裕馬は、頷いた。

「行こう。」

4人で、急いで階段を駆け下りて行くと、10号室の前に、真悟、諒、悟が立って開け放たれた扉の中を見ていた。

…やっぱり、祈さんか。

裕馬が思って近づいて行くと、正志が振り返った。

「…今、煌が中に居る。昨日は祈さんだ。祈さんだけ。」

諒が、言った。

「だったら悟が真だな。」裕馬は、睨むように諒を見る。諒は続けた。「ほんとは真占い師が確定するのは避けようと思ってたんだが、オレ達目線じゃ悟が狂人なのか何なのか、全く分かってないからな。真悟が狐、咲子さんか美智さんが真で悟が真なんだろう。内訳なんか、オレだって狂人と繋がってないんだから分からないんだよ。」

裕馬は、それには答えずに祈の部屋の中へと入って行った。

そこには、ベッドの上に横たわって動かない祈と、その祈の手を握って立ち尽くす、煌が居た。

「…煌さん。」

煌は、びくりと肩を震わせると、裕馬を見た。

「…死んでいる。もう冷たい。看取ることすら許されなかった。祈が苦しんでいないことを祈るだけだ。私は…何もできなかった。」

裕馬は、じっと動かず目を閉じている、祈の顔を見た。

襲撃されると知っていて、それでも煌を信じていると言っていた。

祈は、煌と一緒に勝って帰りたいのだ。

やはり、真狩人だったのだろう。

裕馬は、後ろを振り返った。

「…結果を聞いていいか?真悟さんは?」

真悟は、答えた。

「…オレは、海斗白。海斗は狐でも狼でもない。」

海斗が、驚いた顔をしたが他の皆も驚いた顔をした。

裕馬は、続けた。

「悟さんは?」

悟は、険しい顔で頷いた。

「オレは、やっと黒を見つけた。」と、和彦を指差した。「和彦は黒。人狼だ。今夜は和彦を吊ってくれ。」

海斗は、言った。

「どういうこと?昨日は、悟さんは祈さん、真悟さんは和彦さんじゃなかった?」

裕馬は、答えた。

「昨日煌さん達と話し合ったんだ。祈さんは真狩人。生きていたら必ずどこかで護衛を成功させるだろう。ということは、狼はきっと噛んで来る。悟さんが占うのをいいことに、そこが呪殺したのだと主張しようと処理しに掛かるだろうって。そうしたら、また分からなくなるからと、昨日は別の所を占ってもらってた。結果、こうなった。祈さんは狐じゃない。真狩人だったんだ。襲撃で死んでいるからな。昨日は、高広を吊ってしまっているし、今日からは真悟さんのグレー、悟さんの黒である和彦さんを吊って、明日諒さんを吊る。狐はもう居ない。海斗は悟さんと真悟さんの両方から白を出されてるんだ。吊る必要はない。」

諒は、言った。

「待ってくれ、だからって真狩人だと確定させるのはおかしいだろう!真悟はどうするんだ?」

煌が、祈から目を反らして、強い視線で諒を睨んだ。

「今日は、和彦を吊る。」煌は、じっと鋭い目で諒を睨みつけて、言った。「よくも…よくも祈を殺してくれたな。祈は真狩人だった。つまり、真悟の真は確定だ。海斗は白、残っているのは君達二人だけだ。きっと悟も真占い師だろう。狼に不利な結果を出している。そもそも、悟が真なら真悟に白を出しているのだから真悟はあって狂人だろうが。何を言おうと、今日明日で君達は吊る。絶対にな。」

今は9人、悟、正志、真悟、諒、煌、和彦、海斗、清、裕馬だ。

悟は絶対に和彦に入れる。真悟もグレーを潰したいので入れるだろう。そして、裕馬、清、煌の票は確実に和彦に入るので、それで5票、他が全て真悟に入れたとしても、必ず和彦は吊れる。

役職者たちの、数の暴力なのだ。

和彦は、ため息をついた。

「…そうか、だったらオレ吊りだな。」と、足を階段へと向けた。「だったらそれでいい。もう疲れたしな。部屋へ戻る。時間になったら投票には行くよ。悟が真か狂人か、みんな目線じゃ分からないだろうし、オレがいくら言っても誰も意見を覆さないだろう。役職者で票は決定してる。夜まで自由にさせてもらうさ。」

和彦は、それだけ言うと階段を上がって行った。

自分がいったい何なのか、和彦は一言も言わなかったが、裕馬は間違っていないと、今度こそぶれずに吊り切ろうと決心して、動かない祈の顔を振り返った。

煌は、まだ祈の手を握ったまま、その隣りに立ち尽くしていた。


9人居るのに、誰もリビングへは降りて来なかった。

どうやら、朝の確認の後に、皆さっさとキッチンから食べ物だけを取って来て、部屋にこもっているらしいと、後から訪ねて来た清に聞いた。

今夜は和彦を吊るが、明日諒を吊るまでに必ず誰かが噛まれることになる。

それは、恐らく共有のどちらかだろうと思われた。

…ここまで生き残っただけでも大したものだ。

裕馬は、自分に言い聞かせた。

一時は襲撃されると怯えたものだったが、狼はそれどころではないらしく、他の役職ばかりが命を落とした。

そして狩人を失って、生き残るのは難しい。

裕馬は、シンと静まり返ったリビングで、放置されているホワイトボードを見た。

そこには、コツコツと積み重ねて来た占い先や霊媒結果、役職CO、吊った人達、犠牲者など、これまでの軌跡が残されていた。

そこに、祈の名前や今朝の占い結果を書き込んで、裕馬は思った。

…誰がもう一人の狐だったのだろう。

書き終わってペンのキャップを閉じながら、裕馬はじっと考える。

真悟が真占い師だった。

恐らく悟もそうだろうと思われるが、今夜は念のため真悟には悟を占わせておこうと思っている。

真悟の結果は、初日祈、二日目正志、三日目清、四日目咲子白で五日目諒が黒、六日目の今日は海斗白だった。

咲子で呪殺が出たことが確定して、咲子は狐。

祈が真だったことから恐らく高広も真で、玉緒黒。

諒は黒確定、悟が黒を出した和彦は、真悟目線でも限りなく黒になる。

海斗が白だったからだ。

真悟目線、今生き残っている9人の内、確定役職は煌、裕馬、清で白。正志、海斗は白先なので白、自分は占い師、残りは悟、和彦の二人だ。

狼が確定しているのは、吊られた玉緒、諒だろう。

仮に高広が真悟寄りの結果ばかりを出していた人外だったとしても、亜由美は黒だと分かっていて、正志本人が居ない今は、そうだとしても特に脅威はない。

祈が真な以上、玉緒はなんであろうと人外だからだ。

吊り縄はあと、4本。

今は、真悟目線では自分のグレーを吊りきったら終わるという、簡単な盤面になっているのだ。

…でも、高広さんはきっと真だった。

裕馬は、昨日ひよったことを後悔していた。

高広は、村の意見が荒れるのを見て、ならば自分を吊れと言った。

そして、自分自身に投票してまで村目線を整えて去ったのだ。

高広のためにも、必ず間違えずに勝とう。

裕馬は、そう決心していた。

もう勝てるはずなのだ…必ず、真悟が真占い師なのだから。

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