五日目の投票
1 悟→11
4 高広→4
5 正志→4
7 真悟→11
8 諒→4
9 煌→11
10祈→4
11和彦→4
14海斗→4
15清→4
17裕馬→4
結局、その夜は高広が追放されて行った。
自分に入れていたぐらいなので、落ち着いた様子でこれまで追放された誰よりも穏やかな顔で椅子にぐったりと身を預けていて、一見して眠っているようにしか見えない様子だった。
そんな高広を重苦しい心地で部屋へと運んで行って、悟には祈、真悟には和彦を占うように指示をして、その日は解散した。
トボトボと部屋へと帰って行く裕馬に、祈が寄って来て、言った。
「今夜の事を話したいの。少し、部屋へ来てくれないかしら?」
守り先?
裕馬は思いながら、頷いてそちらへと足を向ける。
清もそれに気付いてやって来て、当然のように煌も後に続いて祈の部屋へと入った。
扉を閉じた後、祈より先に煌が言った。
「なぜだ?!」と、祈に詰め寄った。「なぜあんなことを!あれでは…あれでは今夜、君が襲撃される!悟が真だと言い出して、君が呪殺だろうと進めて行くつもりだぞ!それで、君は護衛成功で真証明ができなくなる!真悟まで吊らせて、間に合わせなくしようとしているのだ!」
祈は、頷いた。
「それでいいのです。それで、村人目線で懸念材料が縄を消費せずになくなる。グレー吊りに専念できますわ。真悟さん目線ではまだ2グレーありますが、狼は真悟さんを噛めなくなったので、最後まで占うことができる。今夜は和彦さんを占うのでしょう。そこで黒が出たら吊ればいいし、呪殺が出たら次は海斗さんを吊って真悟さんのグレーは消えるので、安心して諒さんを吊れます。仮に真悟さんが気になるのなら、真悟さんを先に吊ってもまだ縄は足ります。私に縄を使わせてはいけませんわ。まだ4縄あるんですから、大丈夫です。」
あの時、煌が言おうとしたのはこれだったのか。
裕馬は、思った。
「…つまり、今夜は祈さんが襲撃されるっていうんですか。」
祈は、頷く。
「恐らくは。あの時煌さんを止めたのは、狼にこちらがそれに気付いているのを勘付かれないためなの。縄を消費せず、私を追放するためには、襲撃を使うより他ないから。悟さんの占い指定先を私にした時から、私は今夜、呪殺を装って襲撃されると思っていたわ。悟さんが真なのか何なのか、まだ分からないけど、私目線からは真悟さんは真だと分かっているから、信頼してる。残りは、和彦さん、海斗さん、諒さん。村目線どうしても真悟さんが気になるのなら、諒さんの前に真悟さんを吊る。ただ、そうした場合、最終日に狂人の可能性がある悟さんが残ることになるわ。悟さんが真占い師であることに賭けるしかなくなる。だから、できたら信じて真悟さんを残して欲しいけれどね。」
清が、言った。
「…だったら、ギリギリに悟の部屋を訪ねて明日は祈さんではなく和彦を占うように言って、真悟には海斗を占わせたらどうだ?呪殺だと言えなくなる。確実に襲撃されたと言えるように。仮に悟が狂人でも、夜時間に出て来れないから狼にそれを知らせる術はないだろう。」
裕馬は、頷く。
煌が祈の両方の肩を掴んで、言った。
「駄目だ!君を襲撃させるなど…どうしてこんな事に!私を襲撃させて、狼を道連れにするはずだったのに!」
祈は、煌を見上げた。
「もう、駄目ですわ。今朝で気取られてしまったんです。狼だって馬鹿ではありませんから。そうそう騙されてはくれないのです。大丈夫、あなたは勝ってくださるんでしょう?私は真狩人であり、真悟さんが真占い師です。今日は縄に余裕もあったし、村を安心させるために高広さんが自ら犠牲になってくださいました。ですから、確実に明日から、真悟さんと共にグレーを詰めて、諒さんを吊ってください。お願いします。」と、裕馬を見た。「裕馬さん、占い先を変えて私が明日追放されていたら、私を信じて真悟さんのグレーを潰して行く事を進めてください。そして諒さんで終わりです。必ず勝てますから。狼の攪乱に惑わされないで。」
裕馬は、頷いた。
高広を吊ったのは、間違いだったのではないか。
今日から、煌が言うように和彦、海斗と吊って諒を吊り切った方が、村はすんなり勝てたのではないのか。
悩んだが、どうしようもない。
自分には、自分に出来る事をするだけなのだ。
裕馬は、施錠時間ギリギリに悟と真悟の部屋を訪ねる事にして、項垂れる煌を後目に、祈の部屋を後にしたのだった。
ガックリと肩を落とす煌に、祈は言った。
「煌さん、大丈夫ですから。仮死状態でしょう?仮に後遺症が出てしまっても、あなたは医師であられるのですから、私を治してくださるでしょう。信じていますから。」
煌は、顔を上げた。
「祈…そうなっても何としても、私は君を助けるから。ここを無事に出るためには、どうあってもこのゲームに勝たねばならない。君を連れて、ここを出ると決めているのだ。君を守ろうとしたことが裏目に出た…君を犠牲にせねば、真証明ができないなんて。」
祈は、煌とは対称的にスッキリとした顔をしていた。
「平気です。煌さん、あなたの青白い顔を見る事を思えば。私には発言力もないし、あなたのように人を動かして進んで行く事もできない。私一人が残されても、陥れられて吊られる未来しかないように思えていました。あなたなら、きっと勝ってくださるから。信じています。」
煌は、涙を浮かべて祈の頬に触れた。
「祈…やっと君の気持ちが分かった気がする。死ぬのではないと思っていても…未知の薬に、君が晒されることを思うと胸が恐ろしく苦しいよ。」
祈も、煌の頬に触れた。
「私は平気です。また会えますから。」
煌は頷いて、祈に唇を寄せた。
祈はそれを受けて、その感触に覚えがあるような気がして、戸惑っていたのだった。
裕馬は、10時45分になってから、二階へとそっと降りて、まずは真悟の部屋へと行った。
時間ギリギリだったので驚いた顔をしていたが、真悟は急いで中へと入れてくれた。
「どうしたんだ?もう時間だぞ。」
裕馬は頷いて、言った。
「真悟さん、今夜は海斗占いで。さっき話し合って決めて来たんだ。」
真悟は、驚いた顔をした。
「別にいいが、呪殺狙いか?和彦はどうするんだ。」
裕馬は、頷いた。
「大丈夫です。こっちで考えてるから。じゃあ、悟さんの部屋も行かなきゃならないんで。」
真悟は、頷いてまた扉を開いた。
「言われた通りにするよ。」
裕馬は頷いて、急いで今度は悟の1号室へと向かった。
1号室のチャイムを鳴らすと、悟も驚いた顔をした。
「え、裕馬?時間大丈夫か?」
裕馬は、急いで中へと入ると、扉を閉じた。
そして、言った。
「悟さん、大事な事なんだ。今夜は、祈さんじゃなくて和彦さんを占って欲しい。」
悟は、頷いた。
「それはいいが…祈さんは良いのか?狐だったら呪殺できるかなと楽しみにしてたんだけどな。」
裕馬は、何度も首を振った。
「うん、それは分かってるけど、グレーを潰しておきたんだ。君の真を確定させるためにも、先に黒を見つめて欲しいと思うし、グレーに狐が居るんだったらそれを呪殺して欲しい。そもそも、狼が言う事を信じるのも難しいし、まだ祈さんが偽とは決まってないだろ?真悟の後追いの結果出しをしたところで、悟さんが真占い師だったら、役に立たなくなるから、面白くないだろうって思って。」
悟は、それには何度も頷いた。
「それはそうだよ。そもそも高広は白だって言ってるのに、結局今日は村目線での懸念材料とかで吊ってしまったじゃないか。オレだって、真としていろいろ役に立ちたいと思ってるからな。」
裕馬は、時計を気にしながら、頷いた。
「うん。だから頼む。今日は和彦さんで。間違えるなよ。」
悟は、腕輪を示した。
「任せとけ。お前が帰ったら入力して結果を見ておくよ。」
裕馬は頷いて、もう残り少なくなった時間に急いで扉から駆け出して行った。
部屋へ飛び込んですぐに、ガツンと閂が掛かった音が聞こえた時には、ホッと胸を撫で下したのだった。




