狐はどこに
正志と清と裕馬は、煌の部屋を訪ねた。
何度チャイムを押しても反応がないので、祈の部屋かと思いながらも扉を開くと、そこでは、煌が窓際の椅子で額に手を置いて、テーブルに肘をついて考え込んでいるところだった。
「…煌さん。」
裕馬が声を掛けると、煌はそのままの姿勢でチラと目だけで裕馬達を見た。
「…何だ。もう道筋は決まっているのだろう。」
だが、裕馬は首を振った。
「違うんです。昨日の噛み先なんです。どうやら、狼が噛んだのは、真悟らしくて。」
煌は、さすがに驚いたのか顔を上げた。
「…諒がそう?」
清が、頷く。
「そうなんだ。下で、正志と一緒に居たら。ああ、正志はオレ達の内訳を知ってる。何しろ、聴こえるヤツだから。」
煌は、苦々しい顔で正志を見た。
「ああ、だろうな。いい、座れ。」
三人は、そこにある椅子に分かれて座る。
煌は、疲れたような顔で、言った。
「それで、諒が真悟を噛んだと言ったのか。」
正志は、首を振った。
「ハッキリとは言わねぇ。清に、ほんとにお前は狩人かって言って来た。で、オレはもうこうなったら別に生き残ろうとは思わないが、このまま狐の思い通りにされるのは癪だから教えてやるんだ、オレが黒を打たれるのを、黙って見てると思うのか?って言った。つまり、真悟が真かもしれないから、噛んだってことだろ?で、噛めなかった。でも、狩人は煌さんを守ってたって言った。狼目線、ってことは真悟は狐だって分かったってことだろ?で、昨日の呪殺は無かった事になるから狩人は偽、狂人なのか、それとも狐なのか分からねぇってことは、狼ではないわけだよな。真悟偽になったら、一気にいろいろ透けちまうのにあんなことを言って来るってことは、狼目線狐が二人生き残ってる可能性が高いって事なんじゃないのか。真悟と、初日に囲われた祈さんって考えたら、スッキリするような気がして来て、そうなった時の内訳を考えて…ちょっと、ゾッとしたんだけどよ。」
煌は、黙ってそれを聞いていたが、フッと肩の力を抜いた。
「…狐噛みのことを、考えなかったわけではない。だが、あの状況なら縄が増える事を恐れて狼は私を噛んで来るだろうと思っていたので、私守りと聞いて、ならば護衛が成功した、と考える事にしたのだ。だが…真悟が偽で狐だというのなら、そこを占って白を出している悟も偽、つまり美智さんと咲子さんが真になるので狂人になるぞ。つまり、もう真占い師は生き残っていないことになる。吊るより他、狐を処理する方法がない。だが、その場合狼目線では清は狐ではあり得ないのだ。なぜなら清は真悟だけでなく咲子さんからも白が出ていて、生きているから。一番真悟と繋がりがあると思う役職者は、祈。狼目線、このことで私達の正確な内訳が見えて来ているのかもしれない。ならば…祈は襲撃されないな。」
正志が、言った。
「ちょっと待ってくれ、そういう事じゃねぇ!祈さんが狼目線で狐に見えるって事は、つまりそういうことだろうが!護衛成功じゃなかったんだぞ?このままだと…どうなるんでぇ。」
清が、言った。
「ええっと、咲子さんが真になるから真希さんが黒。そこに白を出している高広さんは偽。だから亜由美さんも黒、諒さんが黒、真悟さんと祈さんが狐?で…狼は真希さん、亜由美さん、諒さんで狂人は高広さん、悟さん、狐は真悟さんと祈さんって事になるんじゃないのか。生きてるのは諒さん、高広さん、悟さん、祈さん、真悟さんの五人だから、グレーを吊ってる暇がない。今夜海斗を吊ったら縄が足りなくなる。それどこか、狼は狂人を噛むはずないし、ギリギリだぞ。七日目に七人残りになった時、狂人二人と狼が残ってる事になるから、村人が1人間違ったら終わりだ。次の日パワープレイ。もし、諒が言うのが間違ってないんだったらだがな。」
煌は、言った。
「…それでも、私は祈が真だと思うぞ。」皆が顔をしかめると、煌は続けた。「狼の言うことなど信じられるというのか。そもそも、そうやって攪乱しなければ勝てないと思ってそう言っているのではないのか。大体、狐から黒を打たれているのだぞ?だったら対抗して、真悟は偽だと言えば良かったではないか。それなのに、あっさり認めて…その場合、諒はラストウルフになるのだろう。そんなに簡単にあきらめるものなのか。私は、違うと思う。玉緒さんと祈なら、祈の方が真だった。真悟は最初から他と比べて落ち着いていたし、真らしい動きをしていた。悟に占われるというのに、特に構えている様子もなかった。祈は狐ではない。だから、真悟は狐ではない。私は見えたままだと思っている。諒は、昨日からやたらと狩人偽、咲子さんと美智さんが真という世界線を追わせようとしている。私が思うに、この二人のうちどちらかに、相方が囲われているのではないのか。咲子さんは私と清しか白を出していないが、美智さんは悟と和彦に白を打っている。どちらかがもう1人の狼だとしたら?…その場合は和彦だが、私は、その1人を何とか残そうとしているように見えてならないがね。」
正志、清、裕馬の三人は顔を見合わせた。
そう言われてみたらそうなのだが…。
しかし、祈が人外だと思って庇っているのだと言われたら、そうも見えて来てしまう。
こと祈に関わる事に関しては、どうあっても煌を信じるわけには行かなかった。
…諒と和彦が狼で、あんなに同じ意見を出して一緒に戦うだろうか。
しかしそれを言い出すと、海斗も真希も同じように固まって、昨日は話していたものだった。
最後には、その皆に票を入れられたのは、真希だったのだが。
そこから見ると、真希は白だったようにも見える。
諒から、投票されているからだ。
咲子は狐では無かったとしても、偽だったのではないか。
ふと、裕馬はそう思った。
が、そうなると悟が破綻するのか。真悟白、美智白、咲子は噛まれているから白となれば、真と狂人二人というおかしな盤面に…。
裕馬は、頭を抱えた。
お願いだから、確定結果が一個でも見つかったら。
裕馬は、今日の海斗吊りについて考え直さなければならないのかと、苦悩したのだった。
結局、その後裕馬はまた皆を召集した。
午後3時を回ったところだった。
祈も、顔色は悪いが出て来ている。
それを、煌が心配そうに見ていた。
海斗が、面倒そうに言った。
「なに?もう今夜は僕吊りなんでしょ?なんで集まってるんだよ。」
裕馬は、答えた。
「気になることがあったからだ。」と、諒を見た。「諒さん、昨日噛んだ先を教えて欲しい。狐を放置したくないんでしょ?」
諒は、フンと鼻を鳴らして、言った。
「…真悟。」知っている以外の皆が、目を丸くする。「真悟を噛んだ。狩人が煌さんを守っていたと言うのなら、真悟は狐。その真悟に呪殺が出せるはずはないから狩人も偽だ。だから玉緒さんに黒を打ってる高広さんも偽だと村人には見えるんだろ?」
裕馬は、眉を寄せる。
海斗が、言った。
「そんな…真悟さんが狐だったら呪殺できてない悟さんも偽じゃないか!もう真占い師は居ないことになる!」
その通りだった。
悟が、言った。
「え?そんなはずはない!真悟はあって狂人のはずだ。狩人はほんとに煌さんを守ったのか?」
諒が、言った。
「なんとなく、そんな気がしたんだよな。でも、真の可能性もあるし、オレに黒を打たれたら困るから確認のために縄が増えるのを覚悟で噛んでみたんだよ。そしたら、生きてた。やっぱりこいつは狐かと思っていたら、狩人は煌さんを守ったと言う。オレ目線では狐確定したので、どうしたものかと考えた。もうオレで最後だから、このまま放置して狐勝ちにするしかないかと悩んだが、腹が立って来て。どうせ狼だと言われるなら、ここは狐も道連れにしてやろうと思った。だから、教えたんだ。」
諒で最後…。
裕馬は、考えた。
ということは、やはり真希、亜由美で狼は落ちていて、残りは狐二匹だけだということだ。
「…狂人は?」清が言う。「通じてるんだろう。」
諒は、首を振った。
「こっちからそうだろうなと思っているだけ。というか、見えてるだろうが。狩人と真悟が恐らく狐、オレは最後の狼。となると他の偽の役職者は?」
高広と悟。
皆の視線が、二人に向いた。
高広が、慌てて言った。
「違う!オレは真霊媒だ!狂人じゃない!諒は嘘をついてる!」
悟も、同じく言った。
「オレもだ!オレも狂人じゃない!真占い師だ!」
もう、分からない。
裕馬は、頭を抱えたかった。




