守った先
「…どうして私を噛ませなかったのだ、祈。」煌は、部屋へ入るなり言った。「そうしたら狼が1落ちて、その位置で今夜もう一人を探して狐が処理できているか精査して、問題なければそいつを吊れば、ゲームは終わったのに。あのままでは、私は噛まれず君が今夜噛まれることになっていたのだぞ。咄嗟に清に振って清が汲んでくれたから良かったものの、まずいことになっていたところだ。」
清が、なだめるように言った。
「落ち着いてください、煌さん。祈さんが真狩人だと分かっただけでも良かったではないですか。狐なのでは、と、昨日の投票で疑っていたんですから。」
煌は、ため息をついた。
「だから祈は真だ!言っているではないか。」
祈は、下を向いて言った。
「…私を守って死ぬなんて、そんな犠牲を出したくなかったのですわ。あなたは信じてくれていましたが、皆は信じていなかった。信じてくれているあなたが、死んでいるのを見るのは嫌だったのです。なので、例え護衛成功しなくても、あなたを守るつもりでいました。絶対に死なせたくないと思っているのは、何もあなただけではありません。私もあなたを死なせたくないのです。」
煌は、表情を緩めた。
「…祈…。」
裕馬は、ため息をついて言った。
「どちらにしろ、明日は煌さんが噛まれるでしょう。何しろ、共有者だと言ってしまったし、狩人は連続護衛が出来ないんですからね。そして、次の日に清だ。祈さんは最後まで噛まれない。」
祈は、言った。
「今夜は裕馬さんを守って、明日清さんを守ります。もう一度護衛成功を出したら、もう狼は心が折れるのではないでしょうか。煌さんが噛まれずに済む方法はありませんか。猫又だと明かしてしまえば噛まれないのでは。このままでも、充分村人は勝ちます。わざわざあなたを噛ませる必要なんかありませんわ。」
煌は、ため息をついた。
「祈、言ったではないか、私は死なない。きっと罰金を払っていると思うのだ。村勝ちのためにさっさと噛まれてしまった方が、村がおかしな方向へ行かずに済む。君が襲撃されてしまったら、その方が私は困るのだ。」
「でも…、」
「ストップ。」裕馬は言った。「あなた方がお互いにお互いを死なせたくないのは分かりましたけど、でも村目線です。説得しないといけないんですってば。煌さん、視点整理をしてくれませんか。これで、真悟は確かに真ですか。」
煌は、まだ祈と話したかったようだったので、フッと鼻で息を吐くと、面倒そうに裕馬を見た。
「…君は私にばかりそのように。少しは自分で考えようとは思わないのかね。私の結論は言ったな。グレーを吊り切るのだ。真悟が諒に黒を打った。今夜は諒を飼っておいて他を吊る。」
清が、取り成すように言った。
「煌さん、面倒なのは分かるが、村人にも分かるように、納得できるように説明したいと思っているので、オレ達がしっかりと理解しておく必要があるんだ。すまないが、現在の状況を整理して聞かせてくれないか。」
煌は、ため息をついて祈を見た。
祈は、黙って頷く。
煌は、仕方なく言った。
「…では、今日は祈が真狩人だと分かった。つまり、今残っている猫又、狩人、共有者の中には人外は居らず、騙っていた玉緒さんは人外、それを先に指摘していた高広は真だろうと思われる。つまり、高広目線の騙りである直樹、玉緒さんは人外。そして、一昨日の夜の咲子さんの追放はやはり、狩人が真だったことから噛めなかったことになるので、咲子さんは呪殺。つまり真悟は真占い師で、その黒先の諒は確定狼だ。ということで、狐は咲子さんで一人、狼陣営は玉緒さんと諒、直樹は恐らく狂人だろうが、これで7人外の内4人外を確実に捕捉できたことになる。もし、高広が気になるのなら、今夜真悟に占わせてもいい。ちなみに高広が生き残りをかけて真結果を落としている狐か狼の場合、直樹が真だから亜由美さんが黒。諒が黒、悟が偽で狂人、玉緒さんが人外、咲子さん狐、高広が人外で残りどこかに1人外。玉緒さん、高広の内訳が分からないので残りの人外が狐なのか狼なのか、狂人なのかは分からない。この場合、生きてる人外は高広、悟、諒なのでそこに3縄使うことになるから、真悟のグレーの和彦、海斗を吊ってもまだ縄は足りる。縄が増えたからな。ちなみに悟が偽ならば、咲子さんが狐で美智さんが真なので和彦は白だとわかる。結論、まずグレーを吊りきって真悟に狐対策で高広を占わせ、結果が黒、もしくは呪殺が出たなら悟も吊る。そして高広、その場合和彦が白だから、諒で終わりだ。仮に真悟が生き延びたらその後も結果は落ちるのでそこまで吊る必要もなくなるかもしれない。つまり、呪殺で縄が減っても問題ない。それが私が見ている道筋だ。つまり今夜は、海斗か和彦のどちらかを吊るべきだろう。悟偽を追っているのなら、海斗が安牌だな。」
裕馬は、目を開かれるようだった。
そう、祈が真確定したことで、真悟の真も確定したのだ。
後は、高広が真結果を落としている狐か狼であることをケアして真悟に占わせ、仮に噛まれても今夜は狩人は真悟を守れる。
今日は、悟偽のケアで海斗から吊り、高広白が出て生き延びたらローラー続行して和彦、諒で終わりになる可能性がある。
その場合、狐が生き残っているとしたら海斗しか居ないだろうが、まだ分からない。
だが、ここまで追い詰められた狼を庇わない狂人も居ないだろうし、悟が狂人ならばどこかに黒を打っただろうと思われた。
清が、言った。
「真悟さんが真確定で、狩人も真確定。分からないのは悟さんと高広さんで、そこは今夜真悟さんを守って色を落とさせる。真悟さんのグレーから今夜は吊る。悟さん偽のケアで海斗から。真悟さんの高広さんへの結果次第で先に悟さん、高広さんを吊り、諒さんは飼って最後に吊る。それで良いですか?」
煌は、頷いた。
「その通りだ。だが、今夜恐らく私を噛んで来るので狼は間違いなく道連れになるぞ。必ず噛める位置だからな。そうなっても、必ず諒は最後にするのだ。狐の位置が全く分かっていないからな。恐らく、咲子さんに黒を打たれているから昨日吊られた真希さんではないので、まだ残っている可能性がある。後は頼んだぞ。」
祈は、黙ってそれを聞いている。
清と裕馬は、同時に頷いたが、狼が何を考えているのかなど、今の時点では全く分からなかった。
しかし、抜け道などないように見えていた。
裕馬と清はそこで煌の部屋を出たが、祈はまだ残っていた。
恐らく、煌に猫又だとCOしろと説得しているのではないだろうか。
そんなことをしても、文字通り命懸けで祈を守ろうとしている煌には、全く聞き入れてはもらえないことは清も裕馬も分かっていた。
祈は真狩人だったし、裕馬は特に案じてはいなかった。
清と煌に守られて猫又の位置に収まった祈は、どう足掻いても煌より先には襲撃されない位置になったし、ここまで狭まると守り先も当てやすくなるので、居てくれるのはありがたかった。
清も、そう思ったからこそ祈を残すことに加担したのだろうと思われる。
結局、共有者は白確定なだけで何の能力もないので、村を勝たせるためには盾にもなろうと言うのだろう。
何しろ、一度は清を守る事もできるのだ。
ただ、タイミングの問題だった。
裕馬と清は、そのままキッチンへと降りて朝食を済ませて、そして朝の会議に挑むことにしたのだった。




