四日目の投票と五日目の朝
そのまま、4人と8人は別に話して分かれたまま、夕方の投票時間になってしまった。
4人の内、海斗と真希はそれは不服そうな顔を隠そうともしていなかったが、諒と和彦は諦めたような顔をしている。
そんな中で、もう慣れたように皆は音声に従って粛々と投票した。
『投票が完了しました。』
どうなった…?
裕馬も、皆も急いでモニターを見上げる。
すると、そこにハババと結果が上から出て来て表示された。
1 悟→2
2 真希→4
4 高広→2
5 正志→2
7 真悟→2
8 諒→2
9 煌→2
10祈→8
11和彦→2
14海斗→2
15清→2
17裕馬→2
…真希だ。
しかし真希と祈だけ別の所に入れている…。
「ウソ!」真希は、立ち上がった。「どういうこと?!高広さんに入れるってみんな言ってたじゃない!」
それには、海斗が答えた。
「君が居ない時に話したんだよ。グレーって言っても、君には咲子さんから黒が出てるんだ。ってことは、真悟さんが偽なら咲子さんが真だから、君は黒だろって。この中からなら、君しかないよ。」
真希は言い返そうとしたが、モニターからの声がそれを遮った。
『No.2は、追放されます。』
「そんな!」真希は言った。「私は村人…、」
そこで、真希は目を開いたまま、動かなくなった。
話している途中だったので、口も半開きのままだ。
声が、告げた。
『No.2は追放されました。夜時間に備えてください。』
…圧倒的だった。
皆、思っていた。
その中で、祈だけが諒に入れているのは、悪目立ちしていた。
…もし…もし、真希が狐で、祈も狐だったなら…?
真悟が狂人、咲子も狂人だったなら、あり得る展開だ。
まさか狂人二人が出ているなんてことはないと思いたいが、わからない。
裕馬は、今夜は自分か、と、祈が真狩人でない未来が見えて来て、気が遠くなりそうだった。
真希を部屋へと運んだ後、占い先は後で知らせると言って、一旦部屋へと帰って裕馬は考えた。
…もし、悟と美智が真だったら…?
悟が白を出しているのは、本人も言っていた通り美智、煌、海斗、真悟。
そして美智の白は悟と和彦だけだった。
二人のグレーで今残っているのは諒、正志、役職には祈、高広。
必ず吊られた人外は亜由美か玉緒。
狐がどこなのかわからない。
悟目線では美智が相方なので真悟が狂人で人外、そして諒、正志、祈、高広の中に必ず狼二人と、狐が生き残っているなら居る。
となると、占い先は高広にした方が良いのだろうか。
そう、高広人外が出たら、悟目線ではスッキリして来るのでは。
裕馬は、煌の話を思い出した。
『悟と美智さんが真の場合。悟から見て真悟は白なので狂人になる。となると、咲子さんは襲撃されているので同じく狂人。狂人二人が占い師に出ている視点になる。となると、霊媒師には狐か狼が出ていた事になる。そこで他の役職の視点、真悟の呪殺を装った噛みという事になるから、残っている狩人は狼。玉緒さん黒を打っている高広は狼。直樹が真なので亜由美さんが狼。つまり、悟、美智さん視点での狼は高広、残っている狩人、亜由美さん、狂人は真悟と咲子さんということになるかな。』
つまり、高広を占われて呪殺か黒が出たら、祈の偽が確定するのだ。
後4縄なのに…やはり狐は残っているなら呪殺しかない。
もし、祈と高広が狼だったとしたら…!
裕馬は、そう決断して、仮に狼ならばどうせ0時まで話し合いに出て来るのだからと、悟には高広、真悟には諒を占うように指示するために、それぞれの部屋へと向かったのだった。
正志と話した通り、施錠時間ギリギリになってから、裕馬は祈の部屋を訪ねた。
まだ煌は居て、どうやらそろそろ部屋へと戻ろうとしていたのか、裕馬が入って行くと立ち上がっていた。
「裕馬?どうした、もう後10分だぞ。私は隣りだから良いが、君は三階だろう?」
裕馬は、頷きながら急いで言った。
「祈さん、今日はオレじゃなくて清を守って欲しい。」
祈は、驚いた顔をしたが、スッと真顔になると、言った。
「…今夜は、私に任せて欲しいの。明日の朝にはどこを守ったのか煌さんに知らせる。あなたの指示で、今夜護衛成功が出るのかわからないわ。私は今、護衛を成功させないと誰にも信じてもらえないでしょう。煌さんまで疑われてしまう。私の責任のもとにやることだから、私が考える。ギリギリまで考えさせて。」
煌は、息をついた。
「祈は、さっきからこう言うのだ。明日護衛成功を出せなかったら、自分が狩人だと皆に言うと言う。私は構わないと言ったのに、迷惑をかけるのは嫌だと言うのだ。」
今夜の襲撃は、煌、清、裕馬のうち誰かだろう。
初日から落ち着いて話していた清は、裕馬とも頻繁に意見交換していたので、こうなった以上共有の相方だと透けている可能性があるからだ。
初日、霊媒の三択を外した祈が、今回の三択を勝ち抜けるのか。
それとも、最初から守ることなどできない人外なのか。
裕馬には、分からなかった。
なので、仕方なく頷いた。
「…分かりました。じゃあ、必ず成功させてください。必ず。信じますよ。」
祈は、緊張気味に頷く。
煌が、チラと金時計を見て、せっついた。
「ほら!君は早く戻れ!共有がルール違反で追放になったら目も当てられない。猫又噛みで縄が減ることになる。行け。」
裕馬は頷いて、扉を出て階段を駆け上がって行った。
煌は、祈を振り返った。
「…祈。私は君を信じている。仮に成功しなくても、君は真狩人だ。」
祈は、煌を見つめた。
「煌さん…。」
煌は、そこを出て行った。
程なくして、部屋の鍵は音を立てて閉じたのだった。
次の日の朝、裕馬はハッと目を覚ました。
…オレは生きてる。
裕馬は、思わず自分の手を見た。
しっかり動くし、死んではいない。
金時計は5時50分を指し、もうすぐ解錠時間だ。
急いで起き上がると洗面所へ駆け込んで、トイレを済ませて顔を洗った。
冷たい水が、ぼやっとした思考をクリアにしてくれる。
このまま、後は誰が犠牲になっているか、占い結果はどうなったか、だった。
解錠の音がして、裕馬は部屋を飛び出した。
この階で生き残っているのは、裕馬を合わせて和彦、海斗、清の4人のはずだった。
「…生きてるな、裕馬。」
裕馬は、答えた。
「狼は、噛みナシ選択はできないよな?ルールブックに書いてたよな?」
清は、頷く。
「できない。必ず誰かを襲撃しなきゃならないはずだ。」
裕馬は、頷いて階段へと足を向けた。
「行こう。二階だ。」
皆は頷いて、階段を降りて行く。
すると、煌が階段を見上げて二階の階段の下に立っていた。
「…犠牲は?」
裕馬は、首を振った。
「誰も。そっちはどうですか?」
煌は、首を振った。
「誰も。」
見ると、困惑した様子の悟、高広、正志、真悟、諒と、真顔の祈が立っていた。
…護衛が成功したのか。それとも狐噛み?
裕馬が思いながら煌を見ると、煌は言った。
「…護衛先はどこだね、清?どうやら狼は私を噛んだようだな。」
え、と裕馬が清を見る。
清は、ハッとしたように答えた。
「ああ…君だ、煌さん。狼はまんまと君を噛んだんだな。これで皆に、オレが真狩人だと知ってもらえたよ。疑われるのは心外だ。」
祈さんは、煌さんを守ったのか。
というか、煌は今度は清を狩人だということにしたのだ。
煌は、言った。
「私は共有者だ。裕馬の相方。清が真狩人だと証明するために噛ませようとわざとああして振る舞った。祈が猫又だ。私達は、真役職なのだよ。高広を疑うのは、なので筋違いなのだ。これで11人、縄が増えたぞ。」
悟が、言った。
「…裕馬が言うから高広を占ったが、白だったぞ。オレ目線、高広は真か狂人だが、限りなく真だと思うけどな。つまり、狩人の真証明もできたし、人外は直樹、玉緒さんで確実に2人落ちてる。昨日の真希さんは?」
高広は答えた。
「白。だから、狐か村人だよ。オレ目線ではね。」
すると、黙っていた真悟が、言った。
「…諒さんが黒。」え、と皆が真悟を見る。「黒だ。オレ目線ではだから、役職にはもう人外は居ないんじゃないかと思う。悟と結果が合うし、美智さんが真だとしても悟はマックス狂人だ。まだ5縄もあるし、役職以外の残ってる諒さん、和彦さん、海斗を吊りきってまだ悟やオレを吊ったって縄は足りる。というか、正志も皆目線じゃあ怪しいなら、占い師を一人残して村目線のグレー全部吊りきっても勝ち。それとも村は、悟が怪しいならまだ高広偽を追うのか?どうなるんだ、視点整理しないと。」
裕馬は、混乱しながらも、頷いた。
「…後で。後で考えよう。7時半にリビングに集合で。煌さん、話があります。」
煌は、頷いた。
「こちらへ。私の部屋へ。清、君も来たら良い。君は護衛成功で自分の真を証明したんだからな。」
清は頷いて、黙っている祈も共に、煌の部屋へと入って行った。
裕馬は早く盤面整理をして、頭をスッキリさせたかった。




