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三日目の投票と四日目の朝

まだ三日目なのだ。

それなのに、もう一週間ぐらいゲームを続けているような気がしていた。

祈からは、今夜の守り先と、その理由を知らせて来ていた。

ほんとにそれで良いのかと疑問に思ったが、煌と話し合って決めたことらしかった。

なので、黙って頷くしかなかった。

その夜の投票は、玉緒の抵抗はあったが全員が共有の指定に従い、玉緒は一人、そんな決定を下した裕馬に投票して終わった。


『No.6は追放されました。夜時間に備えてください。』

声が告げる。

もうみんな無感動で立ち上がった。

今夜は、もう占い先は指定されているので、裕馬も倒れた玉緒を運ぶのを手伝った。

…あれだけ抵抗するのは、真だったからではないのか。

裕馬の中でそんな声が聴こえたが、裕馬はそれを打ち消した。

そうするより、なかったのだ。

これで良かったのだと、思うしかなかった。


夜の通信時間に、清が言った。

『お前は間違ってない。』清は、鼓舞するように言った。『大丈夫だ。オレも同意したことだし、煌さんは真猫又じゃないか。明日の噛み先でも、分かることがある。大丈夫だ、問題ない。オレ達は勝ちに向かって進んでるはずだよ。』

裕馬は、それを信じたいと頷いた。

「うん。分かってる。煌さんと祈さんを信じるしかもう、ないからね。明日の結果で…でも、間違ってたらどうなるんだろうな?」

清は、ため息をついた。

「だからそんな事は考えるな。このまま明日の結果を待つしかないんだ。オレも、不安はあったが今夜玉緒さんを吊ったことで腹が決まった。信じるしかない。」

そうだ、ここまで着たら信じるしかない。

だが、誰を?

裕馬は思ったが、清の言う通り、このまま進むしかもうないのだ。

縄の数は、5本になっていた。


次の日の朝、裕馬はハッと目を覚ました。

…生きてた。

裕馬は思って、体を起こした。

そして、机の上の金時計を見ると、6時までは後少しだった。

急いで起き上がってトイレへ駆け込むと、顔を洗ってきちんとしてから、扉の前で待つ。

すると、きっかり6時にバシンという音がして、閂が抜けたのが分かった。

扉を開いてすぐに目の前に飛び込んで来たのは、向かいの和彦の顔だった。

「裕馬!生きてたか。」

和彦は言う。

裕馬は頷いて、廊下を遠く見た。

昨日の夜、吊られたのは玉緒だったので二階の部屋だし、三階では和彦、海斗、清、咲子、裕馬の五人だったはずなのだ。

「清?!」

裕馬が叫ぶと、清が答えた。

「海斗も居る。ってことは、咲子さんか?咲子さんは?」

言われて、裕馬はハッとした。

咲子の部屋は、19号室なので清の向かいになるのだ。

清は、サッと咲子の部屋の前へと歩み寄ると、そのチャイムを鳴らした。

「咲子さん?出て来ないか、無事を確認しているんだ。」

だが、返事はない。

そもそもが、チャイム以外は外からの声が全く通らない仕様になっているのだ。

海斗が、言った。

「開けないと分からないって。」と、遠慮もへったくれもなく、ドアノブに手を掛けて開いた。「咲子さーん、出て来てって。」

海斗は、ズンズンと中へと入って行く。

裕馬が不安になりながらそこへ向かうと、海斗の後について、清も入って行くのが見えた。

和彦が後ろからついて来るのを感じながら扉へと到着すると、中から海斗の声が聴こえた。

「…咲子さん!」と、声は続けた。「咲子さんが襲撃されてる!」

…咲子噛み?!

裕馬は急いで中へと駆け込んだ。

すると、咲子は普通にベッドの上で眠っているかのように、上を向いて横たわっていた。

眠っているのと違うのは、胸が呼吸によって上下しないのと、顔色がびっくりするほど青いことだった。

「…煌さんだ。煌さんに見てもらわないと。」

清が、さすがに慌てたように言うと、海斗は言った。

「いくら医者でなくても、僕にも死んでるって分かるよ。だって、息してないし、唇が真っ青だもん。」

裕馬も、青い顔でどうしたら良いのかと考えていると、二階の人達が上がって来たのか、正志が顔を覗かせた。

「なんだ、咲子さん?どうなってるんだ。一人だけか?」

すると、真悟が言った。

「咲子さんは白だったぞ。オレ目線じゃ、咲子さんは狐か真か狂人だ。」

真希が言う。

「真はあり得ないわ!だから咲子さんは狐か狂人よ。」

黒を打たれているからだった。

清が、言った。

「その様子じゃ、二階は誰も?」

煌が、後ろから割り込んで来て、頷いた。

「二階には犠牲者は居ない。咲子さんだけだ。」と、さっさと入って来て、咲子を見た。「…私が診るまでもないだろう。他の人達と同じだ。死んでいるが、何時間も前に死んでいないような様子。」

諒が言った。

「だったら、呪殺じゃない。真悟が、呪殺を追わせるために襲撃したんじゃないのか。ということは、真希さんが狼で真悟が狼なんじゃ。」

だが、悟が言った。

「いや、オレは昨日真悟を占って白が出ている。真悟は、真か狂人だ。死んでないから狐はない。オレ目線じゃ、美智さんと真悟のどっちかが狂人でどっちかが真の相方になるから、咲子さんが襲撃か呪殺で死んでいる事から狼はないので狐。真悟が呪殺を出した相方か、それとも狼と繋がっていて真を取らせるために噛んだのかと考える。狼は絶対にない。」

違う。

裕馬は、思った。

襲撃では絶対にない。なぜなら…。

「…これは呪殺だ。」え、と皆が驚いた顔をする中で、裕馬は続けた。「こうなる事を考えて、昨日狩人は咲子さんを守っている。咲子さんに襲撃だったら通らなかったはずだ。だから狼は、真占い師確定を嫌って噛み合わせて来た。つまり、咲子さんが偽だと知っていて、そこが狐だと透けて呪殺が出たのを知られるのを阻止しようとしたんだ。ということは、真希さんは白。咲子さんは呪殺されたんだ!」

しかし、海斗が顔をしかめた。

「狩人が守っていたの?でも、玉緒さんがもし真だったら?真悟さんが狂人だったら、狼は普通に噛めたよね。」

しかし、高広が言った。

「それはない。玉緒さんは、黒だった!つまり、残っている狩人が真狩人だから、守れていないのはおかしいんだ。だから、裕馬が言う通り呪殺が起こったんだよ!そして、狼は真悟の真確定を恐れて咲子さんを噛み合わせて来たんだろう。そうとしか考えられない。オレも裕馬も生きてるし。」

海斗が言った。

「ってことは、狼には咲子さん狐が透けていたってことだよね?つまり真希さんは黒じゃないんだ。狐でもない、なぜなら狐の咲子さんが黒を打ってるから。だったら真悟さんが真占い師だから、真悟さんの白先は全部白だ。悟さんは…?どうなるんだろう。」

しかし、和彦が言った。

「…上手いこと行き過ぎてる気がする。」皆が、え、と和彦を見る。和彦は続けた。「仮に玉緒さんが真だったとしたら?そうなると高広は狂人で、真悟は狼か狂人だ。祈さんと清のどちらかを囲い、呪殺に見せ掛けて咲子さんを襲撃。騙りの狩人は護衛できないから噛まれた、ということも考えられないか?狩人は?この二人のうちの一人なんじゃないのか?となると、正志だって囲われてる可能性はあるぞ。」

裕馬は、顔をしかめる。

正志が、言った。

「そう考えてもおかしくはないが、だったら悟、美智さん、咲子さんの内訳は?お前は咲子さんが噛まれていることから、真か狂人だと言うんだろう。だったら狐はどこだ?グレーか?グレーに2潜伏で狼もその中に?咲子さん真なら悟はない、なぜなら咲子さんに占われているはずなのに生きているからな。美智さんの白でもある。仮に咲子さんが真だったら、真希さん黒でこの噛みをするか?おかしくないか。お前目線、じゃあオレ、真希さん、真悟、祈さんか清のどちらか一人、高広が狼陣営ってことなのか?だったら、オレと高広は真希さんに入れていて初日の投票、そのせいで真希さんは死ぬ寸前だったぞ。どう説明するんだ?」

そうだ、投票結果がある。

裕馬は、混乱しそうな頭で必死に考えながら、言った。

「…とにかく、今は一旦これまで。考えて来るから。いろいろ出揃って来て、対立位置も出て来て当然だ。ゆっくり考えよう。いつも通り、8時にリビングで。集まったらその前でも始めるから、なるべく早く降りて来て欲しい。」

皆は頷いて、そしてその場は解散となった。

それでも、何やら不穏な空気が流れ始めていた。

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