キッチンにて
皆が同じ事を考えていたのか、ぞろぞろと歩いて行く先は、キッチンが多かった。
煌も祈に水分を摂っておいた方が良いとか話しかけていたので、それに伴って正志、海斗も一緒にキッチンへと入って行く。
清も、そんな波に乗って一緒にキッチンへと入って来ていた。
キッチンでは、先に来ていた和彦、諒、高広、悟、真悟が冷蔵庫の前でペットボトルを物色している。
煌が、それを見て面倒そうに言った。
「ああ、私は水でいい。正志、取って来てくれないか。」
いつもの事なのだろう、正志が面倒にそう顔をしかめたが、言った。
「仕方ねぇなあ。お前、そんなでよく今まで生きて来たな。人混みが嫌いって、だったらどんな田舎で生活してたんだっての。」
海斗が、その後に続いて笑いながら言った。
「煌さんはきっと、召使かなんかが居る場所で居て、その人達に全部やらせてたんじゃないの?電車とかバスとか混みそうなものは使わないんだよ、きっと車も運転手とかついててさあ。」
冗談のようだったが、それを聞いて裕馬は顔をしかめた。
確かに、煌はそんな感じなところで生活していてもおかしくはないからだ。
祈が、言った。
「ごめんなさいね、私が取って来るから。人混みが嫌いな気持ちは私にも分かるわ。煌さんは、自分に正直なかたなのよ。」
それには、正志が振り返って慌てて言った。
「祈さんはそこに居ろ。オレが取って来るから大丈夫だ。ちょっと文句言いたかっただけなんだ。」
その気持ちは分かった。
煌は、言った。
「正志がいいと言っているのだから気にすることはないのだ、祈。君は皆の食事を賄っているのだからいいではないか。」
それはそうなんだけど、煌さんは違うよね。
裕馬はそれを聞きながら思ったが、黙っていた。
和彦が、振り返って言った。
「まるで王様だな。まあ、オレ達と違って役職持ちなんだし、勝ってもらうためにはこうなるかもな。」
悟は、言った。
「オレは占い師なのにそこまで自信持って話せる事はないな。占い結果だけだ。それ聞いて分かる事を教えてくれって感じ。オレは真だし絶対に破綻しないから、結果だけは自信を持って言える。ほんとそれだけ。そこからどう思うとか言われても、ホントに見たまましか頭に入ってなくてなあ。」
裕馬が、言った。
「それでも思う事を言ってくれよ。君は自分の白先の美智さんが噛まれてどう思ったんだ?」
悟は、手にしたペットボトルのお茶を開きながら、答えた。
「うーん、普通は噛まれたんだから真だったのかって思うだろ?オレも今朝、そう思った。明日はオレかとも思った。でも、聞いたところ狼だって真占い師は残したいわけだろ?だったらオレは、残されるのかなと思った。真悟か咲子さんに狼が居るならヤバい噛みだから、残りは狐と狂人なのかなと思ったかなあ。」
真悟が言った。
「オレから見たら、お前の白先で噛まれたから真か狂人だなと思ってる。お前の色が気になるんだよ、咲子さんより。もし、美智さんが狂人で初日からお前を囲ってたら、これは漂白噛みだとも思えるしな。まあ、それだと咲子さんがオレの相方だし、明日色見てくれるかって思ってるけどな。仮にお前が狐で美智さん狂人だったら、美智さんの白先の和彦が狼で漂白噛みかなとか。真だったら、悟が狂人で咲子さんが狐になるから今夜オレが呪殺できるから良かったなって。そんなとこ。お前が相方だったら、とりあえずしっかりしてくれって感じだよ。まあ、今夜オレの色を見たら、お前にもオレが何なのか想像もついて来るんじゃないか。」
悟は、息をついた。
「そうだな。お前って白い。初日はお前が相方かと思ってたし、美智さんは狂人かなと思ってた。オレから見たら白だったから。今夜はグレーに色をつけられないから、グレーの意見はよく聞いて明日からの占い先を考えられるようにしたいよな。」
諒は、言った。
「…美智さんが真か狂人か、当たりはついてるのか?」
裕馬は、息をついた。
「わからない。狼には分かっていて、それで噛んでるわけだろ?でも、どうにもわからないんだよなあ。そもそも役職だって玉緒さんがほぼほぼ人外なんだろうけど、違ったらまた明日から厳しくなるよな。高広が真だと決め打って考えるしかないのかな。」と、煌を見た。「どう思います?」
煌は、正志から水を受け取りながら、答えた。
「今の時点で村目線で分かることなどないな。私目線では私が真で、各役職達も同じだろう。そして、各役職が皆、占い師達から白をもらっていて、玉緒さんだけがグレー。議論にも不参加ぐらいの勢いで無言。村目線でも吊ろうと判断するのは当然だ。間違っていないのではないのかね。それとも君は、もう一人の狩人の方が偽だと思うのか?」
裕馬は、慌てて首を振った。
「いえ、そんな!そんなことは思っていません。残すからには信じているからですし。」
煌は、頷いた。
「ならばいい。高広はほぼほぼ真だと私は思う。直樹が真ならお粗末過ぎて、狼勝ちでもいいかと思うほどだ。だから、私は高広を吊りきろうとは言わないのだからな。」
高広は、苦笑した。
「オレは何度も言うけど真だから。狩人が護衛成功さえ出せたら、濁るなら吊られてもいいけどな。」
清が、言った。
「君が真なら遅かれ早かれ噛まれるのでそれは必要ないかな。狼はかなり噛み先に困っているはずだし。玉緒さんが狩人でなければ、今夜は守り先は占い師の誰か、高広、裕馬の三択だろう。つまり、狼の噛み先もそこだけだ。確定しそうな真占い師か、共有か、霊媒。玉緒さんがもし黒だとしても、色を見られたくないとは思えないしな。むしろ、切ってるだろうから見て欲しいんじゃないか?となると、呪殺を確定させないために占い師の狐位置を噛み合わせるか、呪殺を出すかもしれない真占い師を噛むか…。そんなところじゃないか。」
確かにそうかもしれない。
煌は、言った。
「まあ、ならばお手並み拝見だな。待ってみよう、明日の朝を。」と、伸びをした。「休憩なのだぞ?私は部屋に帰る。祈、行くぞ。」
祈は、急いで立ち上がった。
「はい。」と、正志と海斗を見た。「行きましょうか。」
4人は、相変わらずな様子で一緒にキッチンを出て行った。
あんなに自分中心な感じで、祈は疲れるだろうなと裕馬も皆もそれを見送りながら思ったのだった。
諒が、ペットボトルを手に言った。
「…煌さんは何なのかわからないが、これだけ共有に信頼されているんだから確定している共有の相方なのか、猫又のどっちかなんだろう。だが、マジで盲信していいのかって思うな。祈さんも…頭の良い人みたいなのは、今の会話でも分かる。どっちかが狩人の対抗で、人外で玉緒さんが真だったらお手上げだ。あんなのに玉緒さんが勝てるはずはないし、上手く騙されてたりしたらと思うと今夜玉緒さんを吊るのも怖い気がする。」
それには、和彦も頷いた。
「謎なんだよな、あの4人。いつも一緒にいるし、あの中に村人も居るはずだからおかしければ気付いてるんだろうが、あの二人のうちどちらかだったとしたら、海斗と正志のことも簡単に騙してるような気もしてくる。まあ、オレでも残りの誰が対抗だったとしても玉緒さんを吊るだろうし、裕馬の判断は間違ってないと思いたいけどな。」
裕馬は、痛いところを突かれた気がして黙った。
だが、清が言った。
「何も見えないのに、村を統率して進めるのはかなりの重労働だ。それをかって出てくれてるわけだし、責めるのは間違いだ。どんな結果でもな。オレは、信じて進めるべきだと思うぞ。上手いこと狼が猫又を噛んでくれたら、連れてってくれるしな。共有目線では猫又が確定しているわけだから、呪殺と間違えることもないし。な、裕馬?お前はお前がいいようにしたら良いんだよ。」
裕馬は頷いて、今夜の吊りが早く終わって、明日の結果を見たいとその場から逃げ出したい気持ちになっていたのだった。




