一日目
「ちょっと待ってくれ。」1の悟が言った。「オレはお告げで3は人狼ではありません、と出たぞ。」
その3の美智が言った。
「え、私もよ。1は人狼ではありませんって。」
どうする?出る…?
直樹がハラハラしていると、真悟が言った。
「誰か二人が騙りだ。オレが真占い師。10は人狼ではありませんと出た。」
占い師が四人…!
直樹は、出なくて良かった、と思った。
この村には真占い師が二人居て、二人が騙りということは、恐らく狼陣営と狐陣営が一人ずつ出ているはずだ。
自分が出たら、まずいことになるところだった。
「え、え、書くよ、待ってくれ。」と、慌てて裕馬が立ち上がってホワイトボードに駆け寄った。「ええっと、咲子さんが9だから煌さん白、悟さんが美智さん白、美智さんが悟さん白、真悟が祈さん白か。となると、霊媒師も二人居るわけだし、出してグレー詰めか…?」
何やら、自分に問い掛けるような言い方だ。
隣りの真希が言った。
「なあに?なんだか疑問を持ってるみたいな言い方ね。」
裕馬は、顔をしかめて答えた。
「なんか口からすらすら出て来たけど、その意味を考えてた。なんかオレ、しょっちゅう人狼ゲームやってた気がする。学生の時だったかな。」
玉緒が、言った。
「グレーって何ですか?」
それには、隣りの正志が答えた。
「占いで色がついてなくて、尚且つ役職でもない位置のことだ。色がわからないってことでそう言うんだよ。」と、裕馬を見た。「だったらグレー詰めだな?」
裕馬は、頷いた。
「そうだな、霊媒師は二人居るんだし、仮に確定しても占い師に騙りが出てる以上狩人も守り先に困らないだろう。出てくれないか。」
高広が、手を上げた。
「オレ!オレが霊媒師。」
すると、徹も言った。
「オレも。オレも霊媒師。」
…出る?
あちこち見ながら迷っていると、裕馬が言った。
「…確定だな。よし、じゃあこのままグレー詰めだ。狩人にはこの二人のうちどっちかか、オレかここだというところを守って欲しい。じゃあ、真希さんから話を聞こうかな。」
出損なった…。
直樹は、ドキドキと打つ心臓が恨めしかった。
最初から決めていたなら良かったのだが、いきなり共有が出て、占い師が出て、自己紹介だとおっとり構えていたら出られなかったのだ。
とはいえ、もう片方の狂人だって同じかも知れなかった。
それとも、占い師に出ているのだろうか。あの、矢のような速さで。
直樹は、狼からも自分が狂人だとは分かっていないのだろうが、それでも何で出ないんだと責められているような気持ちになった。
そんな中で、真希が言った。
「…なんか、私も人狼ゲームに慣れてるみたい。こうなったらグレー吊りグレー占いってことね?狐が居るから、今夜は指定になるのね。」と、皆の顔を見回した。「でも…今の様子じゃ誰が何なのか全くわからないわ。一周意見を聞いたら分かるのかもしれないけど、今は全く。占い師は、最後の咲子さんが、なんか共有に促されないのにいきなり出て来て、それが真と思う人も居るんだろうけど…私には、他の仲間とバッティングしないように、先に出て来た人外に見えたわ。なんか、有無を言わさないCOの仕方でしょ?」
また、玉緒が言った。
「COって何?」
また、隣りの正志が言った。
「カミングアウト、みんなに明かすってことだ。」
玉緒は頷く。
思えば直樹も、言葉の意味が分かった。
つまり、人狼ゲームはしていたということだろう。
咲子が、言った。
「だって…共有者が出て来たから、もう役職を明かすんだと思ったの。だから急いで言っただけよ。そんなことで怪しまれたくないな。」
しかし和彦が言った。
「それもおかしな話だな。ここまで誰も出てないし、咲子さんで最後なんだ。占い師と共有は違うだろ。それなのに、おかしくないか。」
咲子は人狼なのだろうか。
直樹は、一応言った。
「それだけじゃ決められないんじゃないかな。確かにいきなりだったけど、共有もいきなりだった。それならお互いに白打ち合ってる悟さんと美智さんも、そんな偶然あるか?ってちょっと勘ぐるかな。どっちかが真はあるかもだけど、両方真ってことは無さそうだ。」
正志が言った。
「じゃあグレーの順番だからオレが話す。そうだな…今のところ全く色はついてない。出方となると、真悟が一番最後に出て来てちょっと真目あるかなってぐらい。様子を見て出て来た人外ってのもあるかもだが、仮に狼なら狐か狂人かどっちが出てるのか見えないし、狂人と被るのはめんどくさいから、出ない気がする。何しろいきなりのCOだったし、人外は話し合う暇もなかったわけだろ?その点では、真希さんの意見と同じで、被らないようにみんなが自己紹介だと油断してる時に出た咲子さんが人外かなとか思うかな。あくまでも印象だけどね。」
次は、玉緒だった。
が、玉緒に意見はあまり期待できない気がした。
「ええっと…私は全くわからないわ。というか、そんな風に考えるんだね。みんなの意見を聞いて、しっかり考え方を勉強する。それから意見を出すわ。」
確かにその方が良いだろう。
諒が、言った。
「なんかさあ、初心者バイアス掛かるよな。だったらなんだってこのゲームに参加したんだって思うな。このままだと、意見が伸びないから玉緒さん吊りになるんじゃないか。真希さんの言うことはもっともだし、正志も和彦も直樹もしっかりしてた。占い師はだから、咲子さんが怪しい筆頭かなと思う。グレー吊りだったら今夜はオレ、このままだと玉緒さんに入れるかな。」
玉緒が、ショックを受けた顔をした。
和彦が、まあまあ、となだめるように言った。
「まあ分かる。でも、占えば良いだろうし、もっと他の意見も聞こうや。とりあえず…グレーの中は意見が今のところ悪いとは思えなくて、わからないな。直樹は意見は違うが、確かに悟と美智さんのお互い白はどっちかが人外でもおかしくはないかな。だから、咲子さんの件で意見が合わなくてもまだ怪しくはない。今夜は占い師吊りじゃないから、明日からの結果を見てラインとか見てけば良いかなとは思う。今は、咲子さんが怪しい。以上だ。」
「ラインって何?」
また玉緒が言う。
正志がまた一々答えた。
「繋がりだよ。意見とかで繋がりがある無しって判断するんだよね。例えば、占い師が黒とか言ってそこ吊って、次の日霊媒の意見が白黒になったら黒の霊媒とラインがあるわけ。今回は両方霊媒確定してるから、それはないけどな。」
玉緒は、また頷く。
…これが延々続くのかな。
直樹は思ったが、口を開いた。
「次、オレだな。ええっと、諒さんの意見は白いと思った。確かに玉緒さんがこのままだと、人外だった時にめんどくさいことになるから、吊りたくなるよね。何しろここまでみんな意見がしっかりしてる。後半の意見を聞いて決めるけど。」
隣りの、詩子が言った。
「…そうね、確かにみんなが言う通りだけど、まだ初日だし、あんまり責めたら玉緒さんがかわいそうよ。でも、しっかりどう思うのかは落として欲しいかな。占えば良いって言っても、誰が真占い師なのかわからないのに、人外が安易に黒を打てる位置になるんじゃないかと思うのよ。みんな、今の様子だと黒とか聞いたら信じそうじゃない?吊り縄消費に使われてしまうわ。」
隣りの海斗が言った。
「それをSG位置って言うんだよね。玉緒さん、覚えた?」と、言ってから、続けた。「そうだなあ、僕は玉緒さんが白なら諒さんと和彦さんが怪しいかなって思ったよ。特に諒さん。結構強い言葉で言ったよね。玉緒さんがわけも分からず吊られる未来が見えちゃう。でも、狼だったら白くなるよなあ。ここ、色わかりやすいし、19人だから吊り縄8で7人外でしょ?余裕あるんだし、初日に吊っとくのもありかな?みんなはどう思う?」
直樹は、玉緒が狼だったらと思うと気が気でなくて、つい言った。
「いや、でもよく考えようよ。縄を無駄にできないし、できたら黒を吊りたいじゃないか。狼だったら逆にヤバい動きだし、いつでも吊れるんじゃないかな。」
海斗は、直樹を見てにんまりした。
「そう?霊媒が絶対残るから今日は吊り得なんだよ?というか、直樹怪しいなあ。さっきから怪しまれるところを庇おうとしてばかりじゃないか。人外なの?」
直樹は、しまった、と思いながら首を振った。
「なんでだよ!村の意見が人外に流されてたらヤバいから言ってるだけだって!だってここまで、玉緒さん怪しい、咲子さん怪しい、ばかりじゃないか。誰も庇わないのはおかしいだろ?」
海斗は、うーんと顔をしかめた。
「にしてもさあ。その庇ってるのが君だってことじゃないの?うーん、わからないなあ。咲子さんが玉緒さんと同陣営だとしても、囲ってないもんね。これだけヤバいって分かってなかったからなのかな?いや…やっぱりわからないな。」
隣りの、清が言った。
「…オレも思ったかな。直樹はあちこち庇ってるしな。とはいえ、グレーには共有の相方と猫又と狩人が居る可能性があるし、慎重に考えないとな。猫又は露出させたくない。狼を一匹持っていけるし。そうそう簡単には初日に囲われてないだろうしね。もし吊るなら、玉緒さんが役職に当たってないのを祈るしかないわけだ。」と、玉緒を見た。「もし役職だったら、吊られそうになったら言わないとダメだぞ?」
玉緒は、頷いた。
「はい。」
本当に分かってるんだろうか。
とはいえ、玉緒は役職はないとは言わなかった。
もし、無いと言えば今頃玉緒一択だったかも知れない。
亜由美が、言った。
「…占い師の真贋は全くわからないけど、こうなって来ると占い師とその白先にも話を聞きたいわ。だって、囲われてる可能性が高いんでしょ?特に狐。だから、白先の相互占いも考えて、きちんと話を聞いておくべきだと思うの。占い師達だって、誰が相方なのか知りたいじゃない。玉緒さんは良いわよ、分かってないんだし、今夜誰にも決まらなかったらそこを吊るしかないんだし。意見が聞けてないからね。でも、それはまた考えて行くとして、全員の話を聞きましょうよ。私は特に、みんなに疑われてしまっている咲子さんの話が聞きたいな。」
亜由美で、グレーは最後だった。
裕馬は頷いて、言った。
「じゃあ、まず白先から話を聞こうかな。一番疑われてる、咲子さんの白の煌さんから。」
煌は、頷いて顔を上げた。