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意見2

煌の部屋のチャイムを押すと、煌はすぐに応対してくれた。

煌のことは信用しているのだが、如何せん祈を盲信していてそれがどうも感覚だけのように見える。

論理的にものを考える煌には、珍しく理由が理由でない気がするのだ。

煌が提示した祈の発言云々のことも、それだけではどうも理由が薄い気がする。

だが、それを言うと煌がこちらの質問にも答えなくなりそうで、裕馬はそれには触れずに言った。

「どうだね?怪しいところは見つかったか?」

だから祈さんだと言ったらあなたは怒るんでしょうが。

裕馬は思いながら、首を振った。

「まだ何も。一対一で話すと、しっかり話を聞けるのもあってみんな白く見えて困ってます。真占い師が誰なのか、気になるところなんですけどね。」

煌は、答えた。

「そうだな。それも分かって来るだろう。それで、今夜はしかし、まだグレーからと考えているのか?」

裕馬は、顔をしかめた。

「いいえ。役職内訳をしっかり聞いて精査してからにしようと思っていますよ。もし三人とか出る所があったら、そこを吊っても良いかなと思ってます。もちろん、一番怪しい位置からですけどね。三分の二で人外なんですから、そこを詰めて行く方が良いでしょう。」

煌は、頷いた。

「それがいい。それで、私に何か聞きたいことがあるか?」

裕馬は、言った。

「あの、祈さんですけど。」裕馬は、黙ってられずに言った。「そこまで盲信するのはどうしてですか?できたらオレにも分かるように説明して欲しいんですよ。何しろあんまりオレは発言を聞けてないし、それになんだか潜伏臭がするから。もちろん、役職なんですから潜伏してるわけですけど。」

煌は、それを聞いてフンと鼻を鳴らした。

「…さては玉緒さんは狩人だと言ったな?」

それでバレるのか。

裕馬が驚いた顔をすると、煌は苦笑した。

「そら、顔に出ている。そうか、ならばどうなるかな。詩子さんがもし、狩人COしたなら詩子さんと玉緒さんは別陣営だ。猫又COしたら、同じ陣営ではないかな。なぜなら、同じ陣営ならば話はついているはずで、同じ役職は騙らないはずだからだ。片方が狂人ならばこの限りではないがね。知らずにCOしてしまってる可能性もある。」

やはり玉緒と詩子が人外の考え方だ。

裕馬は、言った。

「それはそうですけど、祈さんは?理由を聞かせてもらってないですけど。」

煌は、ため息をついた。

「…私は、恐らく一番祈と話していると思うのだ。彼女は、私と驚くほど同じように考えていて、同じ結論を出している。君もこれから祈と話すから分かるだろうが、祈はとても賢いのだ。村の思考だと思う。私だって何も考えずに盲信しているわけではないぞ。あれこれ鎌をかけて見ているが、怪しい所は何もない。」

それだけ賢いなら、煌さんだって騙されてるかも。

裕馬は思ったが、言った。

「…あなたが賢いと言うのならそうなんでしょうけど、だったら騙されてるとか思わないんですか?」

煌は、一瞬驚いた顔をしたが、クックと、笑った。

「騙される?私が?」と、裕馬を見た。「私を騙そうと思ったら、相当頭が切れねばならないな。それだけ頭が良いのなら、騙されても良いかと思うよ。とはいえ…君も、私を盲信しているのではないのかね?」

裕馬は、顔を赤くした。

確かにそうだけどさあ。

「…それは、煌さんがオレを騙してるかもってことですか?」

煌は、笑って答えた。

「冗談だ。だが、君は素直過ぎるのだ。何でも顔に出るしな。私は真猫又だから信じて問題ないが、騙されるな。もっともなことを言う人外も居る。君がここまで話していた中にもな。そうだな、ヒントをやろう。」と、指を一本立てた。「まず、皆が皆無難でもっともなことを言う時、それがおかしいかおかしくないかどう判断するかだ。思考の流れを考えるのだ。」

裕馬は、眉を寄せた。

「思考の流れ?」

煌は、頷いた。

「その目線から見て前日に言っていた事と今日の行動が矛盾していないかということだ。変なことを言っていても、前日からの思考の流れから見て同じ流れの中にあれば、それは当人にとってはおかしくはない。そう考えるのが自然だと思われるのなら、その人はおかしくはない。」

裕馬は、ウンウンと頷いた。

煌は続けた。

「だが、真っ当なことを言っていても、前日からのその人の思考の流れからしたら自然ではないなら、それは取り繕っているということだ。その違和感が、人外なのだ。今のところ人外は上手くやっている。玉緒さんは役職の影に隠れて話さないことでぼろを出さないし、詩子さんも初日の投票の違和感をつつかれていたが、その他には怪しい所は見当たらない。皆無難に話して、後は議論の流れに任せている感じだ。とはいえ、そのうちにボロは出る。そこを見つけるよりないな。」

裕馬は、煌があれこれ各自の立場に立って考えているのだと、それで知った。

つまり、祈とあれだけ一緒にいて話すのだから、人外ならその違和感というものが見付からないからおかしい、ということなのだろう。

だから、祈を真置きしてしまっているのだ。

「…分かりました。」裕馬は、言った。「勉強になりました。でも、人外達の違和感も、まだないんでしょう?祈さんのことも、完全に盲信するのはやめて、フラットに考えてくださいね。オレもそうしますから。」

煌は、ため息をついたが、頷いた。

「とっくにそうしているのだがね。」

どこが?

裕馬は思ったが、何も言わずに立ち上がった。

そして、ふと言った。

「…あの、玉緒さんも。ちゃんと考えていましたよ?守り先とか。高広さん守りだと言っていたし、他に狩人が居たら相互護衛になることを話しても、それでいい、騙りはそのうちに破綻するからって。」

すると、にわかに煌の表情が変わった。

裕馬が驚いていると、煌が言った。

「…玉緒さんが、騙りは破綻するからと言ったのか?それともそんな意味のことを言っただけか?」

裕馬は、何をそんなにと思いながら、答えた。

「そのままです。騙りは破綻するから、って。」

煌は、険しい顔をした。

「ならばやはり玉緒さんは人外だ。しかも、狼。狂人でも狼と繋がっているだろう。」え、と裕馬が驚いていると、煌は続けた。「言ったではないか。違和感だ。初日からの行動との違和感。どうしてあれだけ人狼用語を知らなかった玉緒さんが、そんなにあっさり騙りだの破綻など使いこなせるのだ?それに、高広守りだって?理由は?」

裕馬は、混乱しながら答えた。

「え、え、それは徹か直樹が狂人だと思ったからって…。」

煌は、頷いた。

「狼がそう思ったから徹を噛んだ。狩人が高広を守るだろうと踏んで徹を噛んで噛み抜けたのだ。人狼同士は夜に話し合えるのだぞ?間違いない、狼で他の狼から入れ知恵されているのだ。狐なら、襲撃のことまでわからない。何しろ、あのスキルだしな。これが違和感なのだ、裕馬。そこに気付いて精査していかねばならないのだ。もっともなことを言っている。だが、昨日と比べてどうなのだ。」

裕馬は、呆然とした。

そうだ…どうして気付かなかった。

言われてみたら、玉緒はあそこまで人狼用語を使いこなせていなかったのに。

なら、やっぱり玉緒が偽なのか…?

裕馬は、困惑しながら煌の部屋を後にしたのだった。


次は、隣りの祈だ。

こうなったら、狩人だという祈の話をよく聞いて、自分が精査しなければならない。

煌が好意のベールで気付かないかもしれない違和感に、自分なら気付けるかもしれないのだ。

裕馬は、祈の部屋のチャイムを鳴らした。

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