黒なのか白なのか
直樹は、白人外だったのか。
裕馬は、部屋で一人考えていた。
高広が真なら亜由美はあって狐だ。
もしそうならラッキーだ。何しろ高広目線では2人外落ちたことになる。
だが、村人であった可能性が高い。
誰も庇っていなかったからだ。
とはいえ、庇う暇もなかったと言えばそうだ。
何しろ、誰も亜由美にあそこまで票が集中するとは思っていなかったのだ。
真希吊りの雰囲気だったのに。
裕馬は、思った。
真希は煌に入れ揚げていて、面倒を起こしそうで放って置けなかったのは確かだ。
だが蓋を開けてみると、真希より亜由美の方が多かったのだ。
…詩子が庇われたというのなら、真希も庇われた可能性があるのか。
裕馬は思った。
詩子にも真希にも入れられない誰かが、亜由美に入れたとしたらおかしくはない。
あれだけヘイトをかっていたのだから、亜由美に入れなくても真希に入れたら吊れただろう。
しかし、実際は真っ二つだった。
迷った村人と、人外票が亜由美に集中したから吊られたのかと考えたら、真希の方が怪しく見える。
というのも、諒が全く怪しくないのだ。
玉緒も詩子も、今は対抗がいないので真なのか偽なのかわからない状態だが、攻撃していた。
仮に両方共真だったなら、まずい行動だろう。
真希を吊って、色を見たい。
裕馬は思った。
諒と全く同じ意見だった和彦は美智から白が出ていて、実際白かった。
海斗は役職のことも含めてかなり白にしか見えなくなって来ている。
真希はめんどくさい位置なので、吊っておいても良いかも知れなかった。
裕馬が考え込んでいると、そこへ正志と海斗、そして煌と祈がやって来た。
相変わらず律儀に4人行動の4人だったが、正志が言った。
「煌が裕馬と話したいってさ。だから来た。オレ達は外に出てるよ。」
煌は、言った。
「君は声が聴こえるだろう。扉の前ではダメだぞ。離れてろ。」
正志は、呆れた顔をした。
「分かってるっての。」と、祈を見た。「さ、祈さん、行こう。」
祈は頷いて、心配そうに煌を見た。
煌ら祈に頷いて、そして海斗と三人で外へと出て行って扉を閉めた。
裕馬は、言った。
「どうしたんですか?わざわざオレの所にまで。」
「君の所だから来た。」と、ズイと寄った。「悩んだのだ。本当なら清の方が良かったが、とりあえず君に。君は顔に出るからな。隠し通せるな?」
裕馬は、顔をしかめた。
「なんのことです?」
煌は、言った。
「私は役職だ。」え、と裕馬が目を見開くと、煌は続けた。「祈も。私は祈を信じているし、玉緒さんと詩子さんは人外だ。人外は役職に二人、占い師に二人、そして霊媒に一人露出している。あと二人、囲われていなければグレーに居るか、亜由美さんで一人落ちている。」
裕馬は、混乱した。
祈と煌が役職…?!
「…待って下さい、でも祈さんは?本当に真役職なんですか?あなたは村に意見を落としてるし、2白出ているから限りなく真ですが、祈さんはそうじゃない。まだわからないのに。」
煌は、ため息を付いた。
「…気取ったからだ。まず、最初に玉緒さんが出た時、私は騙りだと思ったが、祈は猫又かもしれないから吊れない、と発言した。彼女は無意識に、狩人だとは言わなかった。他は猫又なのか狩人なのかわからないと言ったのに、彼女は猫又だけにしか言及しなかった。その時、祈が狩人なのでは、と思った。狩人は襲撃筆頭位置なので、私は知り得たことを皆に落とさなかった。正志と海斗が帰った後で、祈の部屋を訪ねて聞いた。君は役職なのかと。祈は、戸惑っていたが私には嘘は付けないと、狩人だと言った。やはり猫又だとは言わなかった。なぜなら私が猫又だからだ。」
煌が猫又なのか…!!
裕馬が絶句していると、煌は続けた。
「祈は真狩人だ。昨日は迷った末に高広を守った。しかし狼は徹を噛んだ。今夜は高広は守れない。真なら恐らく襲撃される。君は、私を狩人だと思っておくのだ。私は自分を襲撃させようと思っている。役職内訳を聞かれたら、なので、祈は、猫又と答えるように言ってある。私は狩人だと騙る。狼は私を噛むだろう。道連れにできる。明日以降、顔には絶対に出すな。今夜の通信で、清にも言っておけ。わかったな。」
裕馬は、何度も頷いた。
煌は、自分を噛ませようとしている。
つまり、真だとしか思えなかった。
もう、こうなったら詩子と玉緒を問い詰めて、狩人ではない方を、つまり猫又を騙った方を吊るか。
裕馬は、思った。
そうすれば確実に一人外が落ちて、縄が無駄にならずに済むのでは。
裕馬は、顔を上げた。
皆の前でCOしろと言うからめんどくさいことになるであって、今の煌のように、共有の自分にだけ話すように言えば良いのではないか。
裕馬は、早速部屋を出て、一人一人部屋を訪ねることにしたのだった。
順番に回らねば、誰が何であるのか透けてしまう。
なので、裕馬はまず、2号室の真希の部屋へと向かった。
真希の部屋には誰もいなかったが、裕馬の訪問に驚いた顔をした。
「あら。どうしたの?」
裕馬は、答えた。
「一人一人個別に話を聞いて行くことにしたんだ。みんなの前では言えないこともあると思って。今いいか?」
真希は頷いて、扉を大きく開いた。
「ええ、どうぞ。」
裕馬は、中へと入って扉を閉めると、言った。
「単刀直入に言う。真希さんほ役職持ちか?」
真希は、ため息をついて首を振った。
「だったら良かったんだけど。私は村人よ。ただの素村なの。」
裕馬は、慎重に頷いた。
「そうなんだな。それで、君は誰が怪しいと思う?」
真希は、立ったままで落ち着かない顔をしたが、答えた。
「そうね…またあなたから見たら嫉妬だなんだと言われるかもしれないけど、煌さんと祈さん。というか、煌さんは白いわ。村のために頑張ってるのはその行動でも分かるから。でも、祈さんなの…煌さんに保護されたいから、上手く取り入ってる気がしていて。だって、大した発言もないのに生かされてるのはおかしいわ。真悟さんの白先だから?でも、真悟さんが真なのかどうかもまだ分かっていないのよ。悔しいけど、祈さんはそうでもなくても、煌さんは祈さんばかり見ている気がするの。騙されてるんじゃないかと思うわ。みんなの前で言ったら、まためんどくさいとか言われて本気で吊られるかもしれないから、言えなかったけど。」
裕馬は、顔をしかめた。
そうなのだ、煌は祈を信じていると言ったが、なにやら男女関係のバイアスがかかっているように思えてならないのだ。
煌が猫又であるのは間違いないにしろ、祈が狩人である保証はどこにもない。
闇雲に信じてしまっていいのだろうか。
「…参考になったよ。君の意見はきちんと頭に入れて考えるから。じゃあ、時間がないから次行くね。話を聞かせてくれてありがとう。」
真希は、案外に裕馬が受け入れてくれたので、意外だったのか少し、気を良くしたような顔をした。
「こちらこそ。話を聞いてくれてありがとう。」
裕馬は、真希の部屋を出た。
そして、正志の部屋へと向かったが、チャイム。鳴らすと正志が出て来て、やっぱり中には煌、祈、海斗が居た。
「あれ。どうした、オレに用か?」
裕馬は、頷いた。
「今、順番に回ってて。占い師と霊媒師以外の人達と個別に話してるんだ。だから申し訳ないけど、みんな一人ずつ部屋へ入っててくれないか?」
煌が、眉を上げた。
「ほう?もしかしたら、役職者を探しているのか?」
海斗が、手を打った。
「そうだよ!共有だけに言えば良いじゃないか。良い考えだね、じゃあ僕、みんなに言っておくよ。部屋に戻ってろって。」
祈は、立ち上がった。
「では、私も部屋で裕馬さんをお待ちしますね。」
煌も言った。
「そうしよう。真希さんには話を聞いて来たのか?」
裕馬は、頷く。
「はい。とにかく全員に話を聞いて行くつもりなんです。みんなの前ではできない人も居るだろうし。」
煌は歩き出しながら頷いた。
「良いことだ。では戻ろう。」
海斗、煌、祈の三人は正志の部屋からでて行く。
正志は、扉を閉じてから、言った。
「…煌の入れ知恵か?」
裕馬は、苦笑した。
「うん…まあ。そんな感じかな。」
何しろ、煌があんなことを言いに来たから思い付いたのだ。
正志は、顔をしかめた。
「だろうな。じゃ、まあ座れよ。」
長居するつもりはなかったのだが、正志が奥へと歩いて行くので、裕馬は仕方なくそれについて窓辺の椅子へと歩いたのだった。




