昼の会議
昼の会議は、食事を終えた14時からにする、と皆に話して回って、まだ食事をしていなかった女子達が慌てて降りて来て、キッチンから男性達は追い出されるようにリビングへと出て来ていた。
相変わらず、煌たち4人は一緒に行動していて、そこへ合流して来て昼の会議をそこで待っている事にしたようだ。
大概面倒だろうに、文句ひとつ言わずに一緒に行動しているのに、裕馬は言った。
「あのさ、別に何をしてても一緒に居なくてもいいけど。」それを聞いた、4人がこちらを向いた。裕馬は続けた。「大変じゃないか?食事も全部一緒だし。」
しかし、煌が首を振った。
「私は別に。私と祈…さんが一緒でない時は離れている。祈さんが食事を作ってくれるので、どうせ一緒だし。他の二人は居ても居なくてもどっちでもいい。」
正志が、顔をしかめて言った。
「お前がそんなだからオレ達が一緒に居てやってるんだろうが。居ても居なくてもいいってどういうこった。」
海斗が、まあまあ、と脇から言った。
「僕は一緒に居て良かったと思ってるよ?ご飯おいしいし、煌さんってめっちゃいろいろ見ててさあ。聞いたら何でも答えるの。この人ほんとに頭が良いんだ。きっと普通の医者じゃないんじゃないかな。ちょっと見たことないほど頭が切れる人だと思う。」
裕馬は、身を乗り出した。
「マジか。だったら煌さんが村人だったら最強なんだけどな。2白出てるし、ほとんど村だよね。最低でも後1個白が出たら確実。助けて欲しいなあ。」
煌は、苦笑した。
「占い師は、狼も絶対に一人は噛まねばならない時が来るだろう。仮に狼が居たら後ろへと先送られるだろうが、もし狂人しか居ないのなら今夜ぐらいから気を付けておかねばならないと思う。村人も、片白でも白置き黒置きして考えて行かねばならない時が来る。そういう時は、初日からの発言と行動を思い出して考えるといいのだ。私は、自分が白だと知っているので、むしろ誰か黒を打ってくれたらと思っているよ。噛まれないし、私はそれを跳ね返すだけの思考力があると思っているから。」
だろうな。
裕馬は思った。
だからこそ、黒など打てない気がする。むしろ、噛んで来るんじゃないだろうか…。
そこへ、諒が入って来て、椅子へとどっかりと座った。
清が、諒を見て言った。
「…どうだった?」
諒は、ため息をついて首を振った。
「駄目だ。全く出て来る様子はない。というか、外から声が聴こえないんだな?だから、チャイムを連打したんだが、応答がないんだよ。中で何をやってるのか気になってドアを叩いたり声を上げたりしたが、聴こえないんだから仕方ないわな。もう、ほっといて直樹無しで話をしよう。で、どうせ今夜は直樹吊りだし。」
だが、煌がそれに眉を寄せて、鋭い声で言った。
「…待て。」諒が驚いて煌を見る。煌は続けた。「何が何でも引っ張り出さねばならない。なぜなら、直樹が投票しなければ、恐らく直樹はルール違反で追放される。呆けていても何でもいい、とにかく扉を壊してでも引っ張り出さねば、直樹がルール違反で追放になったら、もしかしたら投票対象が居なくなったことになって、他の誰かを吊らねばならなくなるのではないのか。そうなったら、高広を残すと言っているが、余裕がなくなって残せなくなるのでは。」
裕馬は、サッと顔を青くした。
言われてみたら、そうなのだ。
このまま直樹が投票を放棄してしまったら、土壇場で他に投票しないと、全員がルール違反で追放されてしまう。
そんな土壇場になったら、誰に入れると考えたら、結局困った村人の思考は一つ。
霊媒ローラー完遂することだ。
煌が言う通り、高広を吊る事になってしまうのが目に見えるのだ。
「ヤバイ!」裕馬は立ち上がった。「煌さんが言う通りだ、こっちの計画通りに行かないかもしれないぞ!直樹を引っ張り出して、あいつの腕輪で勝手に何でもいいから入力して投票しないと!」
だが、正志が言った。
「扉を壊すのか?どうやって?一見木製だが、あの扉はそうとう分厚いぞ。多分、中身は鉄板だ。多分防音のための処理がされてるんだと思う。だから声が中へ通らないんだっての。」
諒も、困惑した顔で頷いた。
「だよな。オレ、何度も叩いたから分かるが、めっちゃ重い音がするんだ。壊すのは無理だぞ、どうする?」
煌が、顎に手を置いて、じっと考えた。
「…蝶番の所は?」
蝶番?
清が、深刻な顔で首を振った。
「分からない。壊すのを前提に見てないからな。それに、工具がない。」
祈が、言った。
「…キッチンに、包丁とこん棒だったらありましたけど。確かに他は見当たりませんわね。」
こん棒って。
「そんな重い扉を支えている蝶番を、こん棒で壊せるとは思えないな。」煌は、言った。「とりあえず、できることが無いか見て来よう。裕馬、君は残ってどうしても直樹が出て来ない場合の吊り先を考えておくのだ。正志、和彦、ついて来てくれ。完全グレーは残れ。このまま直樹が出て来ないのなら、ローラー完遂で高広にするのか、それともグレーを詰めるのかの二択になるはずだ。グレーなら誰を吊るのか、そこを決めておかねばならない。手が欲しい時はまた応援を頼みに降りて来る。頼んだぞ。」
裕馬は、不安な顔で頷いた。
確かにその通りで、一瞬でそんな判断ができる煌が、とても心強かった。
「行こう。」
煌は、正志と和彦を連れて、リビングを出て行ったのだった。
残された、清が言った。
「あっちは任せよう。直樹が真霊媒なら、投票放棄なんかしないはずだし、こうなったら高広を真置きして、グレーを精査するしかない。完全グレーは真希さん、諒さん、詩子さん、海斗だな。」
裕馬は、頷く。
「そう。話を聞くか。」
真希が、言った。
「待って、でも、まだ直樹さんが偽とは限らないでしょう?吊られるから混乱しているだけで、投票には出て来るかもしれないじゃない。」
裕馬は、答えた。
「それならそれでいい。直樹を吊ればいいからな。でも、もし煌さんが言うようにこのまま出て来なかったら、その時大変だぞ?ここの運営者が待ってくれるとは思えない。結局高広とかなったら、もっとまずいことになる。何しろ投票放棄なんて人外ぐらいしかしないだろうし、そうなったら高広は真霊媒だからだ。できれば霊媒師は残したいじゃないか。だからグレー精査するんだ。」
海斗が、言った。
「僕は白だから他の三人から選んで欲しいけど、ここまでの投票とかを見ても吊り位置筆頭なのは詩子さんだと思うよ。昨日投票対象になったのは亜由美さん、詩子さん、真希さんで、真希さんと亜由美さんに投票が集中していたことから狼もそのどちらかに入れてることになる。ということは、真希さんは白の可能性が高い。詩子さんが庇われてるように見えるから、この中からなら詩子さんだよ。」
咲子が、言った。
「私もそう思う。同じように考えたらやっぱり亜由美さんは白で、直樹さんが偽だから、高広さんが真。狼に庇われてるように見える詩子さんは、限りなく黒だわ。何よりあれだけ仲が良かった亜由美さんを吊ってるのよ。」
詩子は、言った。
「そんなの!みんながラインとか言うからそうじゃないと証明しようとして入れただけなのよ?!私一人で亜由美さんを吊ったんじゃないわ!そもそも完全グレーの人達は、怪しくないじゃないの。それよりは、和彦さんとか、正志さんとか清さんで囲われてるんじゃないの?!そうだわ、きっと完全グレーはみんな白なのよ!だから落ち着いていられるのよ!狼が占い師に出てたら、いくらなんでももう囲ってるはずよ!」
清が、言った。
「それでも村目線じゃまだグレーが多いんだぞ。そっちを詰めてって占い師が黒を探しやすいようにするのが一番いいんだ。全員村ならすまないが、今夜はこの中から吊るので良いとオレも思う。直樹が出て来たら、今夜占ってからになるんだがな。」
直樹は、狼の首を絞めているのかも知れない。
ふと、裕馬はそれを聞いて思った。
どういうことだ…つまり、やっぱり直樹が真霊媒なのか…?
諒が、言った。
「まあ、確かに清の言う通りだ。オレもこの中から詰めるのが一番だと思う。ただ、思うんだ。仮に直樹が偽なら、この中に狼が居たらその首を絞めてることにならないか?直樹が白なら、今朝の結果で狼は直樹が真なのか狂人、狐なのか知ったはず。繋がってるとかないよな?」
海斗が、顔をしかめた。
「どこにそんな暇があったんだよ。もし繋がってるなら、朝の会議の前になるよね。狼が狐かもしれない直樹に話に行ったかもってこと?それで直樹が狼に狂人だって騙った狐だったら、狼は詰みだよ?そこまでバカな狼じゃないと思うけどなあ。もし僕が狼だったら、観察するけどね。狂人なのか狐なのかって。もし真だったら、直樹は村のために狼が居るグレーを吊らせようとこんなことをしてるってこと…?あの直樹が、そんな深い考えに到るのかな。無理があるよね。僕には、ただ人外で吊られることを嘆いてどうにでもなれと思ってる気がする。ルール違反で追放とかも、頭にないんじゃないかな。」
そうだ。
裕馬は思った。
そもそも良く考えることができる人なら、あんな霊媒の出方はしないのではないだろうか。
仮に狂人だとしても、恐らくまだ繋がっていないだろう。
裕馬は、言った。
「…そうだよな。結果で直樹を偽と知ったとしたら、そもそもオレがもし狼だったら、今夜噛む。噛めたら狂人だし、噛めなかったら狐だ。狩人が真と確定しない霊媒を守るはずはないしな。それでも充分役に立つ。直樹が真だったと思って、次の日高広吊りの流れになるからだ。結果も直樹のものが信じられる。狼が、そんなに急いで直樹に接触するはずはない。」
高広が、言った。
「となると、諒も怪しいのか?昨日は…確か真希さんに入れてるよな。」
美智が、言った。
「待って、私は和彦さん白を見ていて、同じ意見だった諒さんは白いと思っているわ。それに、みんなが怪しんでいる玉緒さんが諒さんに入れてるのよ?玉緒さんをめっちゃ叩いていたのは諒さんだったじゃない。役職だと言ってるけど、みんな信じてるわけ?」
そうなのだ、玉緒なのだ。
役職COしているので蚊帳の外になっているが、本来それがなければ真っ先に吊られていてもおかしくはない位置だった。
だが、玉緒を精査しようとしたら、他の役職COを募らねばならない。
裕馬は、ため息をついた。




