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共有者

裕馬は、悩んでいた。

今のところ、相方に黒を打つような共有トラップにも人外はかかっていない。

相方は、上手く隠れてくれていた。

朝の会議は、とりあえず今夜は直樹を吊ると決めたのだが、まだ空気は晴れていなかった。

明日、高広吊りを完遂するかどうかなのだ。

ローラーを掛けると決めたからこそ、占い師同士の相互占いを決めたのだが、完遂しないのならとりあえず残して、今夜はグレーを占わせて出た黒を吊って色を見るということもできる。

裕馬が一人リビングで悩んでいると、そこへ煌、祈、正志、海斗がキッチンから出てやって来た。

この4人は、宣言通り一緒に居るんだな。

裕馬は、思った。

とにかく見るといつも一緒なので、人外が紛れていても仲間と接触する暇もないだろう。

正志が、言った。

「ちょっといいか、裕馬。煌達と話し合ったんだが、占い師同士の相互占いは、ちょっと待ったらどうだ。」

え、と裕馬は顔を上げた。

今、考えていたところだったからだ。

「…でも、煌さんはさっき真占い師を確定させようって。」

煌が、言った。

「確かにあの時は、霊媒の精査などどうでもいいと完遂しようとしていたからそう言ったが、先ほどの。高広の意見はもっともだと思った。それに、直樹は早々に諦めて部屋から出ても来ない。真霊媒なら、最後まで村を説得させようと、仮に吊られるにしても意見は落としておこうとするものだろう。なので、信じたわけではないが、高広は一度残して明日出るだろう黒を吊ってもいいかと思ったのだ。人外ももちろん黒を打って来るだろうが、それは真占い師がそろそろ黒を引き当てるからだ。噛み先も、共有ではなく占い師に入る可能性がある。狼だって狐の位置を知りたいだろうし、今奇数進行なので一GJでは吊り縄は増えない。猫又が居るかもしれないので、グレーや白先は噛みづらい。だから、今夜はすっかり安心しているだろうグレーの狼から指定しろ。私が思うに、恐らく真の一人は真悟ではないかと思っている。」

裕馬は、え、戸惑った顔をした。

「真悟?確かに真悟は白いけど…狐の可能性は?」

煌は、首を振った。

「ない。真悟は見ていると、初日から誰を指定されても焦る様子もないし、他の占い師のように他を無駄に攻撃しない。あれは真占い師だからこその余裕だと思われる。狐ならば、何としても生き残らねばならないので、あんな風にはなれないし、仲間らしいラインもない。美智さんにはある。悟もどうかわからない。咲子さんは…真悟とは違った意味で孤独に感じる。」

それには、海斗も正志も驚いた顔をした。

祈が頷いた。

「そうなの、仲間が居ないような。雰囲気がピリピリしていて、真悟さんのようにゆったり構えている感じではないの。でも、私とは違って女子達の輪には入っているし、何が孤立感を感じさせるのかわからないけれど、どこか孤独。昨日の投票も一人だけ詩子さんだったわ。あんなに目立つ票を入れるのは、狼じゃない。だったら、真か狐なのかな、って。狼同士は話し合えるけど、狐同士はどうなのかしら。仮に咲子さんが狐ならば、相方はどこに?…煌さんは咲子さんを怪しむところから囲われてはいない。悟さんにも占われた。悟さんが狼なら、狐を囲う可能性があるから安易に他の占い師の白先に白を重ねたりしないだろうし、あっても狂人かなって。そんな風にいろいろ考えると、真悟さんは台風の目的存在で、浮いて来るし限りなく真なのだろうなって、結論になったんです。」

そうかも知れない。

咲子は一人戦っているような印象だ。

村人で真占い師なら、もっと回りと合わせて来てもいいのに…でも、性格だったら?

「…咲子さんの性格だったら?」裕馬は言った。「あんまり回りを信じられないような。」

煌は、頷いた。

「だからこそ真か狐だろうなと思ったのだ。とにかく、指定先は任せた。私達が指定するわけにはいかないからな。まだ確定白ではないのだから。」

海斗は、言った。

「それでも2白だけどね、煌さんは。オレなんか完全グレー。もう、早く占って欲しいぐらい。」

…グレーから指定するなら役職はどうするんだよ。

裕馬は思ったが、そこでは何も言わなかった。

それは、自分が決める事だからだ。

もう、自分だけで抱えておけなくて、裕馬は相方に相談しようと立ち上がった。

すると、煌が小声で裕馬の耳元で言った。

「…相方は、キッチンに居るぞ。」

そして、怪訝な顔をする海斗と、呆れたような顔をする正志と、分かっていない祈を連れて、そこを出て行った。

…透けてる…?!

裕馬は、愕然とした。

煌には、共有の相方が透けているのだ。

何しろ、清は今さっきそこへ入って行ったからだった。


キッチンへと入って行くと、清と和彦、諒、高広が座って空になったカップラーメンのカップを前に、話していた。

よく考えたらもう昼を過ぎていて、食事をしておかないと昼の会議を招集することもできない。

清が、振り返って言った。

「ああ、裕馬。飯食ってないんじゃないか。まだ悩んでいたのか。」

裕馬は、他の三人が居るので、どうしようかと思ったが、頷いた。

「そうなんだ。でも、そろそろ昼飯食っとかないとって。今、煌さん達4人が出て行ったけど。」

和彦がそれには答えた。

「ああ、相変わらず祈さんがせっせと飯作って、それを男3人が分け合って食べてた。羨ましいって言ったら、夜はカレーを作るのでどうですかって気を遣ってくれて。あの人は良い人だよなあ。」

ふと見ると、炊飯器がシュポシュポ言っているのに気が付いた。

もしかしたら、祈は皆のために米を焚いているのかもしれない。

「え、それってオレ達も食べられるかな。」

高広が苦笑した。

「多分。早い者勝ちになるかもしれないけど、できるだけみんなが食べられるようにたくさん作るって、さっきまでジャガイモの皮をめっちゃ剥いてたよ。ピーラーが1個しかないから、みんな手伝うわけにもいかなくて、仕方なく玉ねぎの皮剥いてたら涙が出て大変だったんだ。昼の会議がどうなるか分からないから、終わったら煮込み始めるってそこの大きな鍋に野菜だけ漬けてあるんだ。会議、どうするんだ?」

それは急がなきゃならない。

裕馬は、急いで冷凍のパスタを冷凍庫から出して電子レンジへと放り込むと、時間を合わせてスイッチを押した。

そして、答えた。

「オレが食べ終わったらみんな呼ぶよ。というか、ちょっと悩んでて。高広が、真目高いなあって思い出してさ。となると、今夜は占い師の相互占いより、グレーを詰めさせて出た黒を精査して、吊って色を見させた方が良いんじゃないかって思って。」

清が、真剣な顔をした。

「そうか。…そうだな、確かに高広は直樹より真目は高い。直樹が真だったとしても、縄に余裕があるから1日ぐらい待てるんだよ。グレーに狼が居たら、この2日は縄が掛からないって安穏としてるような気がするし、仮に直樹が狼だったとしても、霊媒に出た時点でこうなるのは分かってただろう。狼からしたら想定内だから、とりあえず他の狼が吊られないのが一番だから、切ってると思うしなあ。そうするか?今夜は直樹で、明日は占い師が見つけた黒から。」

諒が、言った。

「だが、人外だって黒を打って来るだろうし、真占い師が白しか見つけられなかった時は無駄にならないか。」

だが、清が言った。

「確かにそうかもしれないが、人外だって思い切って黒打ちしなきゃならなくなる。何しろ、まだ役職は玉緒さんしか出てないし、他は潜っている状態だ。共有ですら出ていない。完全グレーは4人だが、それぞれの占い師の白先だって、他の占い師にとってはグレーになるからそこも指定に入る可能性があるし、しかしそこが必ず村人とは限らない。偽の占い師の白先なら狐の可能性もあるから、狐だったら黒を打っても問題ないが、共有だったりしたらマズい事になる。つまり、黒を打ちづらい。噛み位置も難しい。役職を出してなかったことが功を奏してるのかもしれないぞ、裕馬。とりあえず、それで行こう。村に提案しよう。というか、お前が共有なんだからそう思うならそうしろ。」

裕馬は、頷いた。

清がそう言うのなら、そうするのが一番だ。

最初に、共有者として軽く話した時に、清が頼りになると思った。

最初は清に出てもらおうと思ったが、よく考えたら最初はそこまで盤面が詰まっていないので進行も難しくないような気がした。

露出したら、襲撃される。

清が先に出ていて襲撃されたら、自分が残って最終盤面まで生き残っていたら、村を導けるような気がしない。

そんなわけで、清には後を頼むと言って、自分が先に出ると決めたのだ。

清なら、グレーに居ても疑われず残ってくれそうな予感がした。

その予感は、正しかった。

とはいえ、煌に透けているかもしれないと、伝えておいた方がいいのだろうか…。

伝えるとしても、夜の役職行使の時間の通話の時で充分だ。

裕馬は、そう思いながら、パスタを啜っていたのだった。

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