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ゲームの方法

…狂人。

直樹は、顔をしかめたいが、バレたらと思うとそれができなかった。

自分は、狂人なのだ。

つまり、人狼陣営が勝たないと自分は勝てないし、帰れない。

…切り捨てられるのかなあ。

直樹は、思った。

霊媒師に出てローラーされたり、人狼の代わりに吊られたり、狂人のやる事はたくさんあった。

だが、狼が誰だか分かっていないのだから、困った事になりそうだった。

そもそも、この村には人狼は何人いるのだろうか。

思っていると、パッと表示は消えた。

モニターからの声が言った。

『役職の配布が終わりました。では、役職の説明を致します。この村には、人狼3、狂人2、占い師2、霊媒師2、狩人1、猫又1、共有者2、妖狐2、そして村人が4居ます。』

もう一人狂人が居る…!

直樹は、胸が沸き立った。

良かった、自分は独りではないのだ。

とはいえ、誰がそうなのか全くわからなかった。

人狼も、3人しか居ない上に妖狐まで居て、占い師は二人も居るのだ。

全部をすり抜けさせるためには、恐らく狂人が霊媒師と占い師に一人ずつ出るのが良いのではないだろうか。

そして、黒っぽい所に白を打って行くのだ。

察して結果を出すのは、至難の業だったが。

だが、命が懸かっていると思うと、何でもできそうな気がしていた。

声は、続けた。

『ゲームの説明をします。まず最初に、ゲームを続行不可能なほど取り乱したり、またゲーム放棄をすることはルール違反とされて追放の対象になるのでお気をつけください。その際、仮にその人の陣営が勝利したとしても、賞金は入りません。戦略的に取り乱すことは有りです。人外が場を乱そうと演技をしているものと見なされます。それは、こちらで判断します。あらかじめご了承ください。』と、画面が切り替わった。そこには、時間と幾つかの項目が書かれてあった。『一日の流れをご説明します。朝6時に鍵が開いて全員が外に出られるようになります。そこからは自由時間で、皆様はその間に話し合って頂くことになります。そして、夜8時に、この場所に集まって頂いて投票となります。必ず誰か一人に投票してください。1分以内に投票されなかった場合は、追放となります。投票したい人の番号を入力して、最後に0を3回入力してください。夜10時にお部屋へ入って頂きます。その際、施錠され、外へ出ることは出来なくなります。それまでにお部屋へ入らなかった場合は、追放となります。村役職の役職行使は、10時から11時です。その間に、腕輪にて役職行使して頂きます。占い師は占いたい番号を腕輪のテンキーから入力して頂き、最後に0を3つ入れてください。その相手が人狼か、人狼でないかが表示されます。霊媒師の方は、その日に追放された方が人狼か、人狼でないかを液晶画面に表示されます。狩人の方は、占い師同様守りたい人の番号を入力して最後に0を3回入力してください。最後に共有者の方。お互いに此の時間に腕輪から通話が可能です。相手の番号を入力し、エンターキーを押してください。切る場合は同じくエンターキーを押したら切れます。11時になると、通話中でも切れますのでご注意ください。共有者以外の人には通話出来なくなっています。ご了承ください。』

…人狼は、どうなるのだろう。

狂人である直樹は、気になってじっとモニターを見上げて聞いていた。

声は続けた。

『それから人狼の方々は、11時から翌0時までの間、解錠されますので外へ出て話をすることができます。こちらは防音処理が完璧にされているので、聴こえる人は稀ですが、稀に聴こえる方も居るようですので、静かに階下へ降りてお話しください。襲撃先が決まったら、誰か一人の腕輪からその方の番号を入力し、最後に0を3回入力してください。お時間を過ぎますと追放になりますので、ご注意ください。朝6時になりますと、部屋が解錠されます。これが一日の流れです。』

そして、モニターの表示が、今度は建物の見取り図のような物に変わった。

声は何も話さない皆の中で、粛々と続けた。

『次に、この館の事をご説明致します。この後、お部屋の確認をしてくだされば分かるかと思いますが、二階に客室が1から10まで、三階に11から20まであります。20の部屋は施錠されていて使われません。皆様は、ご自分の番号のお部屋をお使いください。バストイレが完備されていて、クローゼットにはジャージなどご準備させて頂いておりますので、ご自由にお使いください。また、一階はここリビングと、お隣りのダイニングキッチンをご使用頂けます。大型冷蔵庫3台、家庭用冷蔵庫1台が設置されていて、中には食べ物飲み物が潤沢にあり、また毎日補充されます。存分にご利用ください。一階のお手洗いは、そちらにある一つです。男性用と女性用に分かれておりますので、ご利用ください。』

そして、何やら冊子の画像が現れた。

『詳しいことは、今お話ししたことも含めてお部屋に置いてあるこちらの冊子に書いてありますので、ご参照ください。それでは、本日は一日目になりますので、占い師の方には初日のお告げ先も併せて表示されていたはずです。ちなみに、初日のお告げ先は狐に当たることはありません。これより、夜8時の投票時間まで、存分に議論して投票先を決めてください。この度は、このゲームにご参加頂きまして、ありがとうございます。それでは、失礼致します。』

「え、待って…、」

誰かの声が言う。

だが、モニターの表示は消え、一方的な声はそこでブッツリと切れてしまったのだった。


シンと静まり返った後、高広と名札に書いてあるだいぶ歳上そうな男が言った。

「…どうする?なんか分からんが、確かにこんなゲームに挑戦しようと思った記憶はある。やるしかないが、君たちのことも何もわからないな。とにかく軽く自己紹介してから、話し合わないか。」

1の悟が言った。

「だな。ゲームをしないと追放なんだ。順番に自己紹介しよう。オレは1の悟、30歳だ。何をしてたんだっけな…会社員だった気がするんだが。何しろ詳しいことは出て来ない。よろしく。」

2の、女子が言った。

「…私もあまり覚えてなくて…ただ、何かうちの実家が困ってて大金もらえるならって思ったような記憶はあります。2の真希です。27歳です。よろしくお願いします。」

3の、落ち着いた感じの目が大きな美人顔の気の強そうな女性が言った。

「私は3、美智。36よ。事業に失敗したってことだけ覚えてる。絶対勝って帰りたい。よろしくね。」

隣りの、美智と同じぐらいの年齢に見える男性が言った。

「…オレは高広。37だ。美智さんとは歳が近いな。オレは…なんだったか。とにかく金が要るって焦ってたのは覚えてる。絶対勝つつもりだ。よろしくな。」

その隣りは、物凄く若く見えた。

なんなら高校生かもと思うぐらいだ。

だが、本人は言った。

「オレは正志。よろしく。20歳で大学生なのは覚えてるんだけど、金が要るのは学費だったかな。あんまり覚えてない。よろしく。」

歳は若いのに話し方は何か堂に入っている。

その隣りの、二十代後半ぐらいの、可愛らしいのだがか弱そうな女性が口を開いた。

「私は玉緒です。29歳で、会社員でした。なんでお金が要るのか、いまいち覚えていないんですけど、もしかしたら資格の学校に行きたいからだったかもしれない。うっすら覚えていて…職場が合わないなあって。勝ちたいです。よろしくお願いします。」

資格かあ。

1000万あれば、確かに学費と生活費は賄えそうだった。

隣りの、同じく二十代に見える男が言った。

「オレは真悟。24歳だ。よろしく。オレは何か金じゃなかった気がするんだよなあ…あんまり覚えてなくて。とにかくよろしく。」

うろ覚えなのは皆同じだ。

その隣りのしっかりしてそうな男性が言った。

「オレは諒。32。なんでだったかな…とにかく金が要るんだよね。ほんとに切羽詰まってたような気がするんだが、覚えてなくて。勝たなきゃな。よろしく。」

その隣りは、ちょっとそこらでは見ないような凛々しい顔立ちの男だ。

その男が、口を開いた。

「…私は煌。28だ。私は金に執着はないのだが…なぜここに居るのかわからないのだ。全く覚えていなくてね。だが、命が懸かっているのだから、本気でやるつもりだよ。よろしく頼む。」

ハッキリとした分かりやすい日本語だ。

話し方から頭が良さそうな感じだった。

何より二十代には見えない落ち着きがあった。

隣りは、さらさらの黒髪に、沁み一つない肌の品の良さそうな女性だった。

「…私も、何度も考えておりますけど全く心当たりがありませんで。(いのり)と申します。歳は33。よろしくお願いします。」

33なのか。

とてもそうは見えなかった。

そんなに美しい顔立ちというのでもないのだが、それでも美しい。

そう思わせる話し方と仕草だった。

隣りの男は、最初に直樹が話し掛けた男らしい、という言葉がぴったりのがっつりした体型の短髪の男だった。

「オレは和彦。34だ。自営業だったみたいだ…詳しいことは思い出せない。多分何かポカやって金が要るんだろうな。頑張るよ。よろしく。」

直樹は、自分の番だと口を開いた。

「オレは、直樹。22歳です。オレ、実家が大変で大学の後期の授業料が払えないことが分かったのを覚えてて。就活して何社か内定もらってるのに。頑張ります。」

この中では、もしかしたらかなり具体的に覚えている方かもしれない。

直樹は思ったが、皆は頷くだけだった。

次は隣りの、13番の女性だった。

こちらは長い黒髪で愛らしい顔立ち、清純派アイドルだとしても驚かない女性だった。

「詩子です。私も余り覚えていなくて…なんだろう、何かに追われてたような。詳しいことは全く出て来ません。勝ちたいです。よろしくお願いします。」

追われてる…?

とてもそうには見えなかった。

着ている服は高級ブランドの物だし、よく手入れされた髪や肌は、何かに追われて憔悴した感じではない。

その隣りの、かなり若い男性が言った。

「僕は海斗。26歳。僕はほんとに全く覚えてないんだ。金が要るのかどうかも覚えてない。とはいえ、多分要るからこそこれに参加したんだろうから、頑張るつもりだよ。よろしくね。」

海斗は、26とは思えないほど童顔の男だった。

話し方もやっぱり子供っぽい。

隣りの男が言った。

「え、お前26?オレは28だが二歳違いとは思えないな。」と、皆を見た。「オレは(せい)、何人かも言うようにオレもなんで金が要るのか分からなくてなー。もしかしたら、スロットが好きだったから借金あるのかもしれない。今はスロット熱も全く感じない。いっそこのままの方が良いのかもとか考えるぐらいだ。以上だよ。」

賭け事好きならあり得るなあ。

直樹は、思って聞いていた。

それよりここまで、誰が狼で誰が相方の狂人なのか、全くわからない。

隣りの女子が言った。

「私は亜由美、27歳です。勝ちたいけど…あんまり人狼ゲームをしてこなかったような気がするから、不安だけどよろしくお願いします。」

亜由美は今時のOL風のセミロングの髪に軽くウェーブが掛かった髪型で、そこそこ綺麗だった。

次の、しっかりしてそうなザ・会社員風の男性が言った。

「オレは裕馬。26歳。もう出るよ、オレは共有者だ。」え、と急にゲームの話になったので、皆が驚いた顔をしていると、裕馬は続けた。「相方と話し合う暇もないしね。相方は潜伏してもらうよ。オレがゲームを進めるね。」

共有者が出た…!

相方は潜伏してくれとわざわざ言ったということは、その相方は裕馬より後ってことか…?

だが、残りは二人しか居なかった。

隣りの、徹と書いた札を付けた男性が言った。

「びっくりした、マジか。もうゲームの話になるんだな。オレは徹、29歳だ。ちなみに何も覚えてない。よろしく。」

やっと最後だ。

次は女子で、また愛らしい感じのスッキリとしたボブヘアで前髪が降りた、女性だった。

「私で最後ね。あの、私は占い師よ。9白。」

え!

直樹は、目を丸くした。

真…?!それとも狼?狐…?

まだまだだと思っていたのに、一気に緊張した。

それは村の人達も同じようだった。

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