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知らない場所で

1 (さとる)

2 真希(まき)

3 美智(みち)

4 高広(たかひろ)

5 正志(まさし)

6 玉緒(たまお)

7 真悟(しんご)

8 (りょう)

9 (こう)

10(いのり)

11和彦(かずひこ)

12直樹(なおき)

13詩子(うたこ)

14海斗(かいと)

15(せい)

16亜由美(あゆみ)

17裕馬(ゆうま)

18(とおる)

19咲子(さきこ)


ハッと目を開いた。

目の前のホワイトボードに、こんな名簿のようなものがある。

…いったい、何をしていたのだったっけ?

回りを見た。

回りには、同じように椅子にもたれ掛かって目を閉じている、結構な数の人達が居た。

…誰だったっけ…いや、オレこそ誰だ?!

彼は、愕然とした。

自分が、どこの誰だが分からないのだ。

何かヒントは無いかと急いでポケットをまさぐるものの、何も出て来ず腕には銀色の、時計のようなものが巻き付いていた。

そして、胸には大きく12直樹(なおき)と書いた札がついていた。

…直樹…そうだ、オレは直樹だ。

直樹は、隣りの人達を見た。

左には男性、右には女性が目を閉じてじっと横になっている。

直樹は、男性の方へと手を伸ばした。

「…もしもし?ええっと、和彦さん?」

胸に、大きく11和彦と書いてあるのだ。

相手は、うーっと唸ってから、目を開いた。

「…なんだって?」と、ハッとして起き上がった。「…あれ。オレ、何でここに居る?」

直樹は、言った。

「あの、オレも何か覚えてなくて。」和彦は、こちらを見た。直樹は続けた。「オレは直樹。苗字は思い出せなくて…あなたは和彦さんですよね?」

「なんでそれを?」と言ってから、自分の胸を見た。「ああ、そうかこれか。でも、なんでこんな所に居るんだろう。他の人達も…思い出せないんだが。」

直樹は、和彦もかと顔をしかめる。

「オレも分からないんですよね。年齢…は覚えてるみたい。22歳だった。」

和彦は、頷いた。

「オレも歳は覚えてる。34だ。」と、回りを見た。「お、みんな目が覚めそうだぞ。」

見ると、直樹と和彦が話しているからか、皆がもぞもぞと居心地悪そうに体を動かしているのが見える。

すると、次々に全員が椅子から身を起こして、回りを困惑気味に見ていた。

「…なんだここは。」一人の、若い端正な顔の男が言った。「どうして私はここに居るのだ?」

胸には、9(こう)と書いてある。

かなり若そうな男が、言った。

「ええっと、オレ大学から…なんだったっけ、何かのゲームの参加がどうのって言われて…」と、胸の札を見た。「確か、それでこの名札をもらったって事だけは何となく覚えてるんだが。そっちの真悟と一緒に。」

すると、7真悟(しんご)と書かれた札をつけた男が、頷いた。

「そうだ、そうだったな、正志(まさし)。それからどうしたんだっけか。何のゲームに参加しようとしてたのかも忘れてしまった。」

悟という札をつけた1番の男が言った。

「そうだったか…オレも確かにゲームに参加しようとしてて。大金が掛かってたはずだぞ?賞金があった。確かそうだ!」

賞金…!

直樹は、そう言われてピンと来た。

…そうだ、だったら自分は間違いなくそのゲームに参加しようとしただろう。

何しろ、こんな奨学金もどうしようもない時期になってから、母親からお父さんが失業したから後期の授業料が払えない、と言って来たのだ。

今からどうにか出来る事でもなく、就活もあってバイトもそんなに入れられない。

やっと4回生になって単位も取り、もう卒業して就職だと先を見ている中でのことだった。

もちろん、大学を卒業することが前提の内定なので、これまでに決まっている会社にも、入れなくなる。

何をどう考えても、そんな理不尽な事はなかった。

何とかお金を借りてくれないか、就職したら返すからと母親に言ってみたが、あちらも家のローンの事があってそれどころではないらしい。

できたらとっくにやっていると、逆に母親から泣き出されてしまって、もう何も言えなくなってしまったのだ。

和彦が、言った。

「そうだ!そうだった、賞金だ!オレ、それが無いと困った事になるんだよな…思い出した。」

全員が、目を開いてそれを聞きながら、まだ頭が混乱しているのか黙っている。

よく見ると、ここはふかふかの高そうな絨毯が敷き詰められた、まるで中世の城の中のような場所だった。

暖炉があり、その上にはキラキラと振り子を回す金時計が置かれてある。

今自分達が座っている椅子は、小さ目のソファのようなものを、丸く置いて全員が顔を合わせるように設置されている場所だったが、窓際の方にはもっと座り心地の良さそうなソファが並んでいた。

大きな窓の外には、広い芝の刈り込まれた庭があって、ずっと向こうには高い塀があった。

どうやらここは、どこかの城の中なのか、洋館の中のようだった。

天井は高く、上にはキラキラと光るシャンデリアが吊り下がっていた。

そして、そんな場所には不釣り合いな、大きなテレビのモニターのようなものも吊り下がっていた。

「…なんだろう、見覚えがあるような。」煌が言う。「だが、知っているはずもないし。」

すると、天井のモニターがパッと青い画面になった。

「!!」

皆がびっくりしていると、モニターから声が聴こえて来た。

『皆様、今回は人狼ゲームで一攫千金リアル人狼ゲーム会にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。では、早速ですが確認事項をご説明してからゲームを始めたいと思いますので、よろしくお願い致します。』

悟が、言った。

「おい、ゲームに参加して勝ったら賞金だって聞いてこれに申し込んだ事までは覚えてるんだけど、頭がぼんやりして何も思い出さないんだ。自分達の名前すら…苗字が出て来ない。どういうことだ?」

声は、答えた。

『それがご希望であったので、こちらで対応させて頂いたのですが。」え、と皆が眉を寄せると、声は続けた。『いろいろなご職業の方々が集まって居ましたので、それでは不平等だと。皆様ハッキリとは思い出せないでしょうが、弁護士の方、医師の方、様々なご職業の方々が混じっております。それが平等ではないという意見があり、私達はそれを飲んで記憶の処理をさせていただきました。ちなみに、勝利陣営の方々はきちんと元に戻しますのでご安心ください。敗者陣営の方々は…ああ、今回は、罰金100万円を振り込んで来られた方が四人しか居ないので、その他の方はそれ相応の対価をお支払いくださるという事で。』

直樹は、顔をしかめた。

「…対価?罰金の話は…」思い出して来た。「…あったな。でもそんな金額を振り込むなんて詐欺だったらと思うと入れられないし。対価ってなんだ?」

声は、答えた。

『命です。』

え、と皆が息を飲む。

命だって?!

「え、待ってくれ!だったら借りてでも入金したのに!」

悟が叫ぶ。

声は、答えた。

『何度もお送りしたはずですがね。それ相応の対価ですが、よろしいですか、と。あなた方は良いと言った。勝てば良いのだからと。確かにその通りですので、我々は何も申し上げませんでした。』と、言葉を止めてから、また続けた。『…皆様、本日が一日目ですよ?今夜には投票もありますし、夜は人狼の襲撃もございます。このまま、無駄なもう終わった話に興じていて良いのですか?ご存知だと思いますが、ルール違反は追放となります。ゲームはここへ来たからには必ず参加しなければならない。投票は必ずしなければならない。時間に正確に従わねばならない。その他、いろいろなルールがあります。違反したら、有無を言わさず追放です。これも、皆様が記憶を処理される前に承諾されてサインされています。勝てば一人1000万円の賞金が、負ければ命が無くなります。勝利陣営は返ってきます。ルールはもう適用されているので、もしこの場でゲームに参加しないというかたが居たら今申し出てください。追放処分と致します。もちろん、その場合賞金も出ません。』

皆が、シンと黙り込む。

煌が、言った。

「…私が保険を掛けていないと思えないのだが、その罰金を先に支払った4人の中に私は入っているか?」

声は、答えた。

『ゲームの進行上、それが影響を及ぼす可能性があるので、お答えできません。』

煌は、また黙った。

モニターの声は、容赦なく言った。

『説明を始めます。現在の時間は、午前11時です。夜の8時には、人狼だと思われる方々に投票する必要があります。先に、今から役職を配布しますので、ご自分の腕に嵌まっている、腕輪のカバーを外して中をご覧ください。』と、モニターの画面には、腕輪の画像が現れた。『その液晶画面に、役職が現れます。それを確認してもらいます。1分間表示されますので、回りの人に見えないように気を付けてご確認ください。ちなみに、人狼、狐の役職の方、そして共有者の方には、仲間の番号も一緒に表示されますので、しっかりと覚えてくださいますよう、お願い致します。では、どうぞ。』

全員が、必死に腕を手で隠して表示を確認した。

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