ハーレム王の新しい嫁 6
「予知?」
「うーん、正確に言えば少し違いますね。予言とか神託と言った方が近いかもしれません。」
メイリーンがそう答える。
彼女はアースガルズ皇国の皇女だというが、そんな国は聞いたことがない。
だとすれば、世界崩壊に巻き込まれた、別世界にあった国なのだろう。
達がいた世界と違って、魔法が使えるものもそれなりの数がいたらしいが、それ以上に魔道具の開発が進んでいたという。
そして、その国では魔法を含め、力を持ったものが貴族と呼ばれ、国を治めていたのだという。
逆に言えば、力を持っていなければ国を治める事が出来ないような成り立ちだったという事だ。
メイリーンのいたアースガルズ皇家に連なるものも、非常に強力な力を持っていたのだが、メイリーンはその中でも非常に強力かつ稀な能力の持ち主との事だった。
その力が「予知」「予言」と言われる物なのだそうだが………。
「私の能力は、簡単に言えば、「運命の転機にかかわる事柄がわかる」というものなのです。」
「えーっと、どういうこと?」
クリムがメイリーンに聞き返す。
「んーっと、どういえばいいんでしょうかねぇ……。例えば、以前こんなことがありました。ある国……仮にA国としますね。そこを訪ねた時、私の中で「ネズミ」と「炎」そして、「シオジリ草」という薬草の名前が浮かんだのです。それこそが私に与えられた力なのですが、これだけでは何が何だかわかりませんよね?」
「うん、意味わかんない。」
「でも、私に与えられた力は100%の確率なのです。その国にとって、そのキーワードが重要な事柄に係っていることは間違いないのです。だから、私は外交官を通じて、その国の国王にそのことを伝えたのですが……。」
「まともに取り合ってもらえなかった……まぁ、当然よね。」
「……そういう事です。」
アンジェの言葉にメイリーンはさみしそうに頷く。
「で、結局どうなったの?」
「私が警告した三年後に、その国は滅びました。」
「なんで??」
クリムが驚く。
「きっかけは、流行り病でした。でも、その病は致死率が高いうえ、広がるのも早かったのです。ですから、国が対応に動き出した頃には、すでに国内の2/3が病に侵されていました。」
「……病気の媒体になったのが「ネズミ」という事だな。」
「よくわかりますね。おっしゃる通りです。そして、これ以上被害が広がらないようにするために、病にかかった人々を村や街ごと焼き払っていったのですが、国中に広がってしまってはどうしようもありませんでした。結局、被害が拡大するのを恐れた隣国の兵士たちが、その国を焼き払ったことで、病の拡大は収まりましたが、後に残っているのは焼け野原になった土地だけでした。」
「なるほど。その焼き払った「炎」が関係しているというわけか。じゃぁ最後の薬草は?」
「シオジリ草から抽出される成分を利用した薬が、その流行り病の特効薬なのです。「シオジリ草」というキーワードについて調べたところ、そのことがわかりました。」
「それって珍しい薬草なのか?」
「いいえ、生息地は限られますが、生息している場所であれば、雑草並みに蔓延っているものですよ。ただ、わが国には群生地がありましたが、彼の国にはなく、私がシオジリ草の効果を知ったのは、私の能力が発動してから約1年後の事でした。」
「だったら教えてあげればよかったじゃない?」
クリムがそういうと、メイリーンは悲しそうに目を伏せる。
「教えましたよ。その効能を知った時、きっとその国で病が流行るのだと確信しましたから。だから、今のうちにシオジリ草を大量購入して薬の生産に入った方がいいと。」
「……信じて貰えなかったのね。」
アンジェがそう言うと、メイリーンは軽く頷く。
「えぇ。信じてもらえないどころか、騙してその何の価値もない雑草を売りつけるつもりなんだろ!と、かえって怒らせてしまい、下手すれば戦争になるところでした。」
「まぁ、キーワードだけわかってもなぁ。解釈の違いで何ともなるような気もするし。」
俺がそういうと、メイリーンは寂しそうに頷く。
「そういう事なのです。でも、私に降臨する言葉は100%何か重大な事柄、危機を回避するためのヒントに繋がっているのです。だから、アイリを救ったのですわ。」
「アイリのこともその予知でってことか。」
アイリが、王女の気まぐれで助けられた、という事は聞いているが、メイリーンからしてみれば、必要だから助けた、という事なのだろう。
「えぇ、アイリの時は、はっきりしていましたから……『アイリという名の少女が私を救う』って。」
「はっきりしているけど……中途半端だよなぁ。」
「いつ、とも、何で、どうして、というのもわからないですからねぇ。」
俺とアンジェはお互いに頷き合う。
的中率100%なだけに無視できないというのが、さらなる厄介さを生み出している。
「そして、今回逃げ出す際にも「アイリの存在」「魔道具」「運命に弄ばれる男」「大きな代償」という言葉を賜っていましたから、きっと助かると信じていましたわ。」
「その『運命に弄ばれる男』って俺の事か?」
俺がそういうと、その場にいた女の子たちは、そろって大きく頷く。
「……嫌すぎる。」
心当たりがあるだけに、頭を抱えたくなるのだった。
「それで、これからどうする……と言うか、どうしたいんだ?」
俺は心の中の葛藤に一段落着けると、改めてメイリーンに向き直りそう訊ねてみる。
彼女が行く所がないというのであれば、ここで面倒を見る気はある。
しかし、俺の裁量を越えるような「お願い」をしてくるようであれば、見捨てることも視野に入れて行動を決める必要があった。
「そうですねぇ。できれば厄介ごと諸々事含めて、ソーマ様にお世話になりたいと思っています。代価は私の一生です……って言うか、養ってくださいよぉ。ついでに面倒ごと引き受けてくださいよぉ。今ならアイリちゃんと一緒で、義理姉妹丼が楽しめますよぉ。」
急に甘えた声で迫ってくるメイリーンを押さえつけ縛り上げる。さすがに、アンジェやクリムの目の前では、下手なことは出来ない。
「どうしよう……捨ててくるか?」
俺は、縛り上げたメイリーンの首根っこを掴んで、クリムに見せながら聞いてみる。
「ちょっとぉ。捨てるって何ですかぁ。私の扱い、酷くありません?これでも皇女なんですよ、皇女ですよっ!」
ジタバタ暴れるメイリーンをベッドの上に放り投げる。
そこには、すぅすぅとアイリが寝息を立てて寝ているため、さすがのメイリーンも大人しくなる。
「ん-、ここまで懐かれたら、捨てても戻ってくるんじゃないの?」
「それに、アイリちゃんだけ飼って、メイちゃんだけ捨てるって言うのは、アイリちゃんが納得しないでしょ?」
クリムの言葉に、メイリーンが、そうだそうだ、と、声をあげずに大きく頷くことで同意を示す。
「でもなぁ……いいのか?」
俺はちらりとメイリーンを見ながら、クリムとアンジェに訊ねる。
この場合の「いいのか?」はハーレムに入れて可愛がってもいいのか?というお伺いである。
「まぁ、今更ペットの一人や二人、増えてもいいんじゃないの?」
「私を一番可愛がってくれるなら許す。」
「まぁ、そういう事であれば……。」
俺はアンジェとクリムの了解を得たので、メイリーンの下に行く。一応本人の意思確認も必要だからな。
「という事で、一応聞くけど、ペットか奴隷、どっちがいい?」
「えーと、何が「と言うわけ」なのかわからないですが、その二択であれば、ペットでお願いするにゃ。」
くぅっ、あざとい。
語尾に「ニャ」を付けるだけでなく、手招きなどのポーズとか、よくわかってらっしゃる。
メイリーン、恐ろしい子。
「じゃぁ、まぁ、そういう事で……いただきまーす。」
「え、あっ、ちょっと、……何で……いやぁぁぁぁぁ。」
その部屋では、メイリーンの悲鳴と嬌声が朝まで響き続けるのだった。
因みに、アンジェとクリムは席を外しているのだが、翌日色々な問題が起こるのは、また別のお話……。
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