ハーレム王の新しい嫁 5
……はぁ、どれくらい経ったのでしょうか?
私は、携帯食の最後の一欠片を取り出し、ゆっくりと咀嚼しながら、そんなことを考えます。
だけど、すぐに、口の中のパサパサ感に、思考が持っていかれます。
本当は水で流し込みたいところなのですが、それをやってしまうと、すぐに食事が終わってしまい、満腹感が得られません。
……もっとも、この一欠片だけでは、どうやっても満腹感を得ることはできないのですが。
それでも私はゆっくりと咀嚼を続け、ゆっくりと飲み込みます。
そして時間をかけてコップ一杯の水を飲み干していきます。
その後、私は空になった水筒についている魔石に魔力を注ぎます。
この水筒は魔導具で、この附属している魔石の魔力がある限り、きれいな水が満タンになるというものです。
とはいっても、小さな水筒なので、コップ2杯分で満タン。先程注いだ魔力量では、大体2回分で空になってしまいます。
つまり、水の残りは、あとコップ4杯分ということです。
もっとも、ギリギリまで我慢すれば、水がなくなる前に少しは魔力も回復するので、実際にはコップ10杯分位までなら、お水を出せるはずです。
私は、この魔導具があってよかったと心から思います。
この魔導具がなければクリエイトウォーターで水を出す必要があり、その場合、私の残存魔力では、コップ1杯の水を出したところで力尽きてしまうことでしょう。
他にも魔導具はあります。
私が纒っているマントは、人類にとって害毒である瘴気を防いでくれますし、右腕の腕輪には気配遮断の効果があります。
頭のサークレットは、装飾品というだけでなく認識阻害の魔術が付与されていますし、何より、足元に置いてある、一見ただの魔石に見えるものは、不可視フィールドを貼る結界石なのです。
これらの魔導具は、私の左手にある、時を止めるアイテムボッスの効果が付与された指輪に収められていました。
これがなければ、ここで動けなくなった時点で、私の命運は尽きていた事でしょう。何より、わたしたちが今まで生きてこられたのもこの魔導具のおかげと言っていいでしょう。
この指輪は我が国の国宝であり、非常事態のときの切り札なのです。
………盗んだんじゃないですよ?
私の名前は、メイリーン・シグナリア・アーシェス。アースガルズ皇国の第一皇女であり、皇家最後の生き残りなのです。
だからこの魔導具の正当な所持者であることは間違いないのですよ。
……最後の、とは言いましたが、父様や兄様達の死亡を確認した訳ではないので、ひょっとしたらどこかで生き延びている可能性もあるんですけどね。
とにかく、今の私の命綱はこの指輪の魔導具なのです。
とはいっても、現状役に立ちそうな魔導具は、先程挙げた以外無いのですけどね。
一応、マナ回復タブレットが1錠残っています。
これを使えば、動ける程度まで回復できる治癒魔法が1回分、もしくは、1日分の水を産み出す程度の魔力が回復できますので、本当に最後の最後の手段になることでしょう。
私の現状はこのような感じなので、自力で助かる事は不可と言っていいでしょう。私にできることは、助けを待つことだけ。
まぁ、アイリ以外に信用できる者が居ない現状で誰が助けてくれるのか?という現実の壁が周りを塞いでいますけど、諦めなければ何とかなると、私は信じているのですよ。
アイリは、私が動けなくなったことを知ると、私をこの樹の根元に座らせてから離れて行った。
彼女が私を見捨てて逃げ出したのではないことは理解している。逃げ出すのであれば、私の持っている魔導具を奪ったほうがより生存率が上がるのだから。
というより、私が動けなくなった時点で、彼女には魔導具の説明をして命じたのだ。「この魔導具を使って、あなただけでも逃げ延びて」と。
だけど彼女は、奪うどころか、魔導具を使いやすいようにセットした上で、結界を作動させ、自らは囮になるために離れていったのだ。
正直なところ、彼女が逃げ延びて助けを連れて戻ってくる確率は低い……殆どないと言ってもいいだろう。それでも私は信じてる……私の中の希望の光が消えない限り……。
………ごめんなさい、ちょっとカッコイイことを言ってみたかったのです。
実は私が信じて待っていられるのは理由があるんですよ。
信じるに値するだけの理由が……。それがなにか聞きたいですか?
聞きたければ「この哀れな下僕に、聡明なるメイリーン様のお考えを教えてください。一生ついていきますのでお願いします」と言って………って痛いですぅ。何するんですか!
◇
「酷いですよぉ。私、一応死にかけてるんですからもっと優しくするべきだと思うんですぅ。というか優しくしろ!」
地面に投げ出された少女は、そう言って訴えてくる。
「うるさいよ。それだけ元気になれば大丈夫だろうが。」
俺は、仕方がなく、落とした少女を抱きかかえ直しながらそういう。
腕の中にいる少女は、アイリに頼まれて助け出した娘だ。本人曰く、どこかの国の王女様らしいのだが。
「あんまり調子に乗っていると、裸に剥いてゴブリンの慰み物にするぞ?」
「ゴメンナサイ。それだけはやめて下さい。やっぱり初めては人間のイケメンがいいです。というか、イケメンには程遠いですが、アナタならいいですよ。どうです?生娘の王女様ですよ?抱きたくなってきたでしょ?今ならアイリも付けますよ?どうですか?」
「なんか裏がありそうだから断る。後、アイリはすでに頂いた。」
「な、何で断るんですかぁ。美少女ですよ、皇女ですよ、しかも、自分で言うのもなんですがロリ巨乳ですよ、脱いだら凄いんです。って言うか、何で、アイリが先なんですかぁ。私は大いに傷ついてます、ばいしょーを要求しますよぉ。」
「あぁ、うるさい。少しは大人しくしていろ。……心配しなくていいから。」
俺は彼女を優しく抱きしめた後、お姫様抱っこをする。
「うぅ……。今だけ、騙されてあげますぅ……ズルいですよぉ。」
メイリーンは小さな声でつぶやきながら、落ちないようにしっかりと腕を回してくる。
しかし、疲労の為か、その腕に力は入っておらず、しばらくすると、すぅすぅと寝息を立て始めた。
俺は、なるべく振動を与えないようにしながら、拠点への道を急ぐのだった。
◇
……ズルいです。この男の人はとってもズルいのです。
私は、彼に抱っこされているのが恥ずかしくて、寝たふりをします。
死を覚悟した数刻前。
彼はいきなり現れて「助けに来た」と言います。
彼は、まず私に何かのポーションを飲ませようとしました。
私は、見ず知らずの男から得体のしれないポーションを飲まされることに、非常に抵抗を覚えます。
だってそうでしょ?助けに来たって言ってるけど、何の証拠もないんですよ。そんな男からなんて、怖くて飲めるわけがないじゃないですか。
だけど、私のその躊躇いを、彼は動けないほど弱ってると勘違いしたのか、徐にそのポーションを口に含むと、あろうことか、私に口移しで飲ませてくるんですよ。
何してくれるんですかっ!私、初めてだったのにぃ……。
その後、軽い食事とお水を戴きました。
えぇ、頂きましたよ。見ず知らずの男?もぅ、そんなのどうでもいいです。私の初めてを奪われた今となっては、他事など、すべて些細な事なんですよ。
そして、私の回復を彼が待っている間に、情報のすり合わせを行います。
それによると、彼はアイリを助けてくれたそうで、わたしの事はアイリから頼まれたとの事でした。
だけど、まだ油断は出来ません。アイリが彼の下にいるのは確かなのでしょうが、無事にいるとも限りません。ひょっとしたら、無理やり従わされているという事も考えられます。
きっとそうです。弱っている私を、ちょっとしたお茶目を言っただけで、ポイっと投げ捨てる様な男ですよ。アイリだってきっと弄ばれたに違いありません。
……まぁ、私が色々ふざけた感じで言ったのも悪いのでしょうが、仕方がないじゃないですか。だって、怖くて、不安で、仕方ないのですよ。
冗談で紛らわせないと、不安で押しつぶされそうなんです。
……だけど、彼にはお見通しみたいでした。
不意に掛けられた優しい言葉……。もう泣きそうですよ。
だから私は、彼に身を委ねます。
私を救ってくれた王子様……イケメンとは言い難いのが難点ですが。
私は彼にすべてを委ね、任せようと思います。彼なら、きっと良い方向へと導いてくれるに違いありません。
……だから……今は……少しだけ……。
………休ませて……。
5月になりました。
GW真っ最中です……関係ないですが(^^;
100まであと三つ。
2万PVは難しそうですが、1万5千PVは手に届きそうな予感。
私の野望の為にも、是非是非応援よろしくお願いしますm(_._)m
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