ハーレム王のダンジョン探索 4
「パンパカパーン!おめでとうございますっ!」
俺が扉を開くと、軽快な音楽と陽気な声が出迎えてくれる。
「何だぁ?」
「おめでとうございますぅ。あなたは、ここを訪れた最初のお客様なのですぅ。」
「はぁ?」
「ささ、どうぞどうぞ、奥へおいで下さい。」
目の前の床が光り、前方へと導くかのように、光の道が出来上がる。
「えーと……。」
「さぁさぁ、遠慮は無用ですよ~。」
俺はキツネにつままれた感じで、声に導かれるまま、歩いていく。
そして、光の道の先にはテーブルがあり、そこには光に包まれた少女が席について手招きをしていた。
「さぁさぁ、どうぞおかけになって。」
俺は言われるがままに席に腰を下ろす。
クリムもアンジェも、呆気に取られているのか、何も言わない。
「初めましてぇ。ダンジョンコアでぇ~す。あ、今お茶入れますね。コーヒーでいいですか?」
「あ、あぁ、ブラックで。」
思わずそう答えるが……。
「って、コーヒーがあるんかいっ!」
俺が異世界に飛ばされてから結構立つが、コーヒーを目にしたことは無かった。
この世界ではお茶と言えばマテ茶かミラ茶が普通だ。一応変わり種として豆茶というのもあるが、これはどちらかというと豆乳に近いものだった。
転生前の俺は、かなりのコーヒー党で、1日平均5杯のコーヒーを飲んでただけに、コーヒーが飲めないというのを残念に感じていたものだったが……。
「私カフェオレで。あ、砂糖はたっぷりね。」
「……私はミラ茶で。」
「にゃん。」
俺の困惑をよそに、クリム達は平然と注文を付けている。
「お待たせですぅ。お茶請けはカステラですよぉ。」
「カステラ迄……。」
俺は混乱する頭を振り払い、出されたコーヒーに口をつける。
「……美味い。」
あまたのコーヒーを数多く口にしてきただけに、通ぶるつもりはないがそれなりにコーヒーには煩いと自負している俺だ。
その俺をもってしても、ここまでおいしく感じるコーヒーに出会ったことは無かった。
昔、一度だけ、銀座にある超有名な専門店で、1杯5000円もするコーヒーを飲んだことがあるが、その時以上の衝撃を、俺は今受けていた。
「お口に合って何よりですぅ。お代わりありますよ?」
「もらおう。」
俺は遠慮なくお代わりを申し出る。こんな機会、今を逃したら今度いつ出会えるか分からないからだ。
ダンジョンコアを名乗る少女は、ニコニコしながら、コーヒーを飲む俺を見つめている。
色々聞きたいこともあるが、今はまず、このコーヒーを心ゆくまで味わいたい。
そんな俺の気持を知ってか知らずか、少女は「美味しいですか?」と訊いてくる。
「あぁ、今まで飲んだことのある、どのコーヒーより旨い。」
「それはよかったですぅ。でも、おにぃさん大物ですよねぇ?」
少女が感心したように頷きながら言ってくる。
「何がだ?」
「だってぇ、普通、こんな怪しい場所で出された飲食物って、怪しんで手を付けないですよぉ?でもおにぃさん達は平気で口にしてるし。」
その言葉を聞いて、アンジェ達が固まる。
俺も思わず吹き出しそうになったが……こんなおいしいコーヒーを吹き出すなんて、コーヒーに対する冒とくだ、と、意志の力を総動員して飲み干すことに成功する。
「……一応聞くが、何か混ぜてあるのか?」
「いーえ。ごく普通のおもてなし用の飲み物と御茶うけですよぉ?」
俺はその言葉を聞いて安堵しつつも、さらに訊ねてみる。
「だったら何であんなことを?」
「ですからぁ、何もいれてないって言っても信じる人はいないってデーターベースから導き出されてるんですぅ。でも、そういうのって、淋しいじゃないですかぁ。だから、美味しい、美味しいって言ってくれるおにぃさん達は大好きですよぉ。」
そう言って抱きついてくる少女。
「離れなさいっ!」
それを見たクリムが間に割り込もうとするが、少女は離れようとしない。
「いやですぅ。おにぃさんのものになるって、決めちゃいましたからぁ。」
……えっと、俺のモノになる?
「アンタ自分が何言ってるか分かってるのっ!」
「分かってますよぉ。」
少女はそう言って俺の唇を奪う。
想定していなかったために、躱すことは出来なかった。
少女の舌が俺の口内に侵入し、蹂躙していく。
……くっ、これはヤバい……。
少女の巧みな舌遣いによって、俺の理性が吹き飛びそうになる寸前、少女は俺から口を離す。
「登録完了しました。これで私の全てはおにぃさんのモノですよ。」
「キィッ!なんてことするのよっ!」
「クリム、落ち着いて。それよりあなた、ダンジョンコアって言ったわね?」
荒ぶるクリムをアルちゃんに任せ、アンジェが少女の前に出る。
因みに、俺は茫然としたままだ。
「ハイ、ダンジョンコアでぇ~す。」
「どういうことか説明してもらえるかしら?状況が理解できないわ。」
「えーと、今の私はマスターでありおにぃさんのモノなのでぇ、情報開示には、おにぃさんの許可が必要でぇす。」
「私はソーマの嫁よ。私の言葉はソーマの言葉と同意よ。」
「そうなんですかぁ?」
少女が俺に聞いてくる。
「あ、あぁ。アンジェと……そこのクリムは俺の嫁だ。後俺もどういうことか知りたい。」
「……了承。アンジェ様、クリム様を第二位権限者として登録しましたぁ。じゃぁ、何から話しましょうかぁ?」
「……あなたの事から、現在の状況に至るまでを時系列に沿ってお願い。」
アンジェがそう言うが、その表情は、呆れかえっているというか、困惑しているというか……。まるで、クリムが突拍子もない事を言い出した時と同じ表情をしていた。
「では、まず私に自我が目覚めた時からですねぇ……。」
◇
私はダンジョンコア……。このダンジョンを司る者。
いつ、どこで、どのように、私が生まれたのかは分からない。気づいた時には、私は存在し、そう意識していた。
覚醒した私は、周りを探る。自分の周りに小さな空間があるだけ。
狭いのはヤダな………。
そう思った私は、広くなれと念じる。
暫くすると、周りが広くなったのが分かった。
どうやら、私の意志で周りの空間を調整することが出来るらしい。
意識を深く鎮めると、他にも色々出来ることを理解した。
何故そんなことが出来るのかは分からない、ただ出来るという事が分かっているだけだった。
私は周りをもっと広げようとして、ふと思いとどまる……騒がしいのはイヤだな、と。
でも、空間は広げなければいけない、そんな心の奥底で何かが命じる。
だから私は間を取って上の空間を広げることにした。
最初に作った拠点は重要な場所。そこを中心に周りをどんどん広げていく。
そんな作業をしていると、心の奥底で何かが命じる。大事な場所は守らなければいけない、と。
でも、護るといっても……。
そう考えると、心の中にイメージが沢山思い浮かぶ。どのイメージも、大事な場所を守ってくれるとても強いモノ……だけど可愛くない。
あ、でも、これなんかは可愛いかも?
そのままでは可愛くないので、その気に止めたモノをベースに可愛らしくアレンジした守護者を作る。
うん、いい出来だ。こういう風景を平和って言うんだよね。
私は出来上がった重要拠点の様子を見て満足に浸る。
私が深く考えると、様々な事柄が浮かんでくる……この事をデーターベースの検索というらしい。
そして私には、司る空間内であれば、そのデーターベースをもとに、様々なことが出来る能力がある。
何故そんなことが出来るのか?とか考えるのは無意味だ。ただ出来るという純然たる事実があり、それ以上でもそれ以下でもない。
そして、私の空間に出入りする入り口が必要だと感じたので、出入り口を作る。
すると、そこから色々なものが入り込んでくる。
それらを吸収するとエネルギーが溜まっていくのが分かる。このエネルギーがないと何もできないのはすでに知っている。
私は効率よくエネルギーを溜めることにする。……と言っても私が何かをする必要はない。私がそう考えるだけで、後は広がった空間が勝手にやってくれるのだ。
◇
「ちょっと待って。あなたがダンジョンを管理しているんじゃないの?」
「ん~、意識して手を出せば、色々出来るけどぉ、それだと無駄にエネルギーを使っちゃうからぁ、基本放置だよぉ?」
「……つまりどういうこと?」
クリムがはてなマークをいっぱいにして聞く。
「えーとぉ、少し待ってね……。……うん、OK。分かりやすく言うとねぇ、私は企業の社長さんでぇ、こういう方針だっていううだけなのぉ。後は、部下が独自に判断して動くってわけぇ。私はその結果……マナを受け取るだけなのね。で、たまに視察といってそれぞれの部署を覗くのよぉ。それでおかしなところがあれば指摘するのぉ……。こんな説明でわかるぅ?」
「よくわかったわ。それで今の貴女の状態は、ソーマというオーナーの下で働く雇われ社長ってわけね。」
「うーん、愛人を兼ねた美人秘書がいぃなぁ。」
「……あなたの中のデーターベースってどうなってるのか、甚だ疑問だわ。」
アンジェはこめかみを押さえながらそう言うのだった。
まぁ、結論だけで言えば、ここのダンジョンはまだ生まれて間もないらしい。
そして目の前の少女は、ダンジョンコアが外部と交渉用に創り出した、有機的外部インターフェースで、……まぁ、敵意の無い魔物みたいなモノであり、人型の外部入力装置みたいなものだ。
そして、ダンジョンに入り込んできた異物……俺達は平和的に交渉できる相手と認識、そして、交渉が決裂した場合、敵わないことを理解し、さらには俺の人柄であれば任せても安心と判断して、権限を譲渡することにしたらしい。
俺のどこを見てそう判断したのか分からないが、認めてもらったことには素直に感謝することにした。
尚、女性型の魔物の製造は出来るかと訊ねたら、出来るけどしないと断られた。
理由を聞いたら、性交渉をするなら自分と、と言われ、それを聞いたクリムによって、俺は引きずるようにして地上へと戻されたのだった。
いや、俺だってね、こんな少女には手を出す気はないよ?ロリコンじゃないからね?
……でも、今度はクリムがいないときに訪ねてこようと思うのだった。
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