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ハーレム王のダンジョン探索 3

「なぁ、本当に行くのか?」


俺は肩の上の小さな妖精に声をかける。


「当たり前でしょ。大体今日は2階層迄探索するって言ったのはソーマでしょ。」


「それはそうなんだが……。まぁ、ここ以外はすべて探索し終わってるし、この先が下の階層へ続いていることは間違いないのだから、今日はここまでにして日を改めてもいいんだぞ?」


俺はそう言ってクリムを宥める。それというのも、マッピングから、この先には小さな広間があるだけというのがわかっている。


他の場所は全て回ったので、この先が最後の場所であることは間違いない。


そして俺の気配探知には、この先には今までの雑魚と比べようもないくらいの大きな気配があるのがわかっている。


つまりこの先にあるのはボス部屋であり、ボス戦なのだ。


そこまで分かっているのだから、ムリしてボス戦に入る必要もないと思う。


「色々歩き回ったし疲れているだろ?」


俺はクリムの説得を試みる。


「歩いてたのソーマだけだし。」


そうだった、彼女たちは俺の肩に乗っているだけだった。


「いや、それでも、それなりに戦闘繰り返してきたし。」


「後半は殆どクロちゃん一人で倒していたじゃない。」


「うっ、そうだった……。」


休憩が終わった後、エンカウントする魔物の様相が変わった。


それまでは1階層と同じく、コボルト、ゴブリンが中心だったのだが、休憩後の新たなフロアでは、天狗の格好をした烏顔の魔物……いわゆる烏天狗?が多くなったのだ。


相手が空を飛んでいるのに触発されたのか、烏……と言うか鳥というのが琴線に触れたのか、なぜかクロが張り切ってしまい、出てくる烏天狗全てをその爪で、咢で、瞬殺していったのだ。


その素早さはまさに神速というべきもので、俺は、獲物にゃん、と烏天狗を咥えて戻ってきたクロの頭を撫でてやること以外やる事はなかったのだ。



「えっと、つまり?」


「フラストレーション溜まってるのっ。ボス相手ならちょうどいいストレス発散になるでしょっ!」


(……アンジェ、どうしよう?)


俺は困ったときのアンジェさん頼みとばかりに、小声で相談する。


(やるしかないでしょ?大体、ソーマがクリムを「デート」なんて言って誘うからいけないんでしょ。期待が大きかった分フラストレーションが半端なく溜まってるのよ……もちろん私もね。)


(ソウデスカ……スミマセン。)


どうやらすでにボス戦は決定事項らしい。


「はぁ……じゃぁ、一応作戦会議な。」


俺は止めるのを諦めて、少しでも安全に進めるために作戦を考えることにした。


「いいか、俺たちの最大の弱点は盾役がいないことだ。」


そう、俺たちのパーティは基本アタッカーとバッファー、ヒーラーで構成されている。


しかも、そのアタッカーも基本遊撃系で正面からやり合うタイプではないのだ。


パーティ戦では、基本タンクと呼ばれる役割が敵を引き付け、その間にアタッカーが敵を屠っていくというのがセオリーなのだが、俺達のパーティにはタンクが存在しない。


「だが、逆に言えば、相手は的を絞ることが出来ないともいえる。」


ボスとはいえ、相手は1体だ。つまり、全体攻撃手段がない限り、敵が相手に出来るのは一人だけ。


ボスが誰かに的を絞れば、他のものが攻撃を仕掛け、一人に攻撃が集中しないようにしていけば、何とかなるかもしれない。


「クリムとクロは、相手の攻撃をかわすことを優先してくれ。」


ウチのパーティで最大の火力を持つのはこの二人だ。それだけに狙われやすいともいえる。


「アルちゃんは、二人のフォローをしつつ、相手の動きを封じるのを試みてほしい。アンジェは全体の指揮を執りながら魅了、ドレインを仕掛けてほしいが、回復を優先に頼む。」


アルちゃんの攻撃手段はその糸だ。あらゆるものを切裂き、拘束し圧殺する。攻撃だけではなく、防御にも回避にも移動にも使え、その糸を使った多元高速機動攻撃には、クロでさえも手を焼くほどである。


俺?勿論手も足も出ないよ。


正直、この三人に、アンジェの指揮が加われば、俺の出番なんか無いに等しい。


一応、三人が攻撃している間に、背後からそっと忍び寄ってドレイン攻撃を行う予定ではあるが、正直どこまで戦力になるのか……。イカン、自分で考えていて落ち込んできた。


「ま、まぁ、とにかく、慎重に行こうぜ。」


俺は自らを奮い立たせて、そう言い、ゆっくりと扉を開くのだった。



「牛?」


「牛ね。」


「にゃん。」


三人?の口からそんな言葉が漏れる。


ボス部屋の扉を開けた途端、眼に入ってきたのは一面の草原。


そして、その中心にいたのは……牛だった。


いや、こういう場合、牛の顔をした化け物、ミノタウロスというのが定番ではないのだろうか?


しかし、目の前にいるのは確かに大きいが、半人半牛ではなく、まごう事なき牛だった。


しかも、草を食んで、思いっきり牧歌的でのどかな風景だ。


「えっと、この場合、どうすれば……?」


流石のアンジェも、この光景に困惑している。


いや、そんな縋る様な目で見られても、俺だってどうしていいか分からん。


「とりあえず、話してみよっか?」


クリムがそんな事を言う。


「いや、話すって……牛の言葉なんか分からんぞ?」


「そこはそれ、気合で何とかしてみるよ。」


クリムはそう言って牛に近づいていく。


「ねぇ、大人しくビーフシチューになって?」


「あほかっ!」


俺は慌ててクリムを引きずり戻す。


「誰が大人しく食材になるってんだよ。ほら見ろ、怒らせたじゃないかッ!」


牛はこっちを睨みながら、小さく「ブモっ」と啼く。


すると、背後にある魔法陣が輝きだす。


「クッ。新手かっ。」


俺は戦闘態勢を取る。


しかし、そんな俺達をあざ笑うかのように、出てきたモノたちは、先にいたウシの周りに集い………草を食みだす。


「……。」


「……。」


「……。」



……大きな牛を中心に群がって草を食む牛たち。


一部の子牛たちが、母牛に群がり、その乳を飲んでいる。


お腹がいっぱいになったのか、その場に蹲り寝ているウシや、そのそばで転がりまわっている子牛の姿も見える。


実に牧歌的でのどかな光景だ。


「……。」


「……。」


「……どうする?」


アンジェが聞いてくる。


「……とりあえず、あの奥の魔法陣に行ってみるか?」


俺達は一応警戒しつつ、牛たちの群れを通り抜けて奥で光っている魔法陣の前に辿り着く。


この階層の他の場所に、下へ行く道がなかったのはすでに確認済だ。だとすると、この魔法陣は転移陣で、下の階層に繋がっているはずだが……。


「ここは全員で異動しましょ。」


アンジェの言葉に、他の皆が俺の肩に、頭に乗ってくる。……小さいってこういう時に便利だね。


皆が俺に掴まっているのを確認して、魔法陣に足を踏み入れると、一瞬にして景色が変わる。


草原が姿を消し、扉が一つあるだけの小さな部屋の中へと移動していた。


俺は、扉に手をかけ、一度深呼吸をした後、思いっきり扉を開いた。






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