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ハーレム王のダンジョン探索 1

「なぁクリム。」


「なぁに、ソーマ。」


「デートしよう。」


いつもと変わらない日常のある朝、俺はクリムに声をかける。


……これが非日常への始まりだったことに、俺は最後まで気付けなかった。



「…………。」


「…………。」


「えっと……。」


俺は声を掛けようとして躊躇う。こんな時なんて声を掛ければいいんだ?


「……。」


「……。」


「あのぉ、クリムさん、アンジェさん?」


いつまでもだんまりを決め込んだまま、俺を睨み続ける二人に、思い切って声をかけてみる。


「……何よ?」


「……何ですか?」


「えっと、何をそんなに怒ってらっしゃるのでしょうか?」


「「はぁ?」」


俺が思い切って訊ねてみると、二人から虫けらを見るような目で反応された。


「ソーマ、マジに言ってるの?」


「まさか、ソーマがここまで頭が悪いとは……。」


呆れかえった声で嘆く二人。


俺は仕方がなく、側にいるクロに助けを求めるべく視線を向けるが、クロは、何故か視線を逸らす。


その背中に乗っていたアルちゃんは「やれやれだぜ」というように前脚を広げ軽く首を振っている。


これは、完全に俺が何かをやってしまったようだ。そこまでは分かるのだが、問題は何をやってしまったかという事で……。


「えっと、出来ましたら、私が何をしでかしたのか教えて頂けると……。」


俺は仕方がなく二人に教えを請う。ここでのポイントはあくまでも下出二出る事だ。それくらいは今までの経験で学習している俺だった。


「ソーマ、アンタバカなの?ないわ~、」


「さすがにそれはないですねぇ。」


更にあきれ返る二人。


「はぁ、いーい、ソーマ。アンタ朝私になんて言ったか覚えている?」


それでも、きちんと答えてくれるあたり、クリムはやさしいと思う。


「あぁ、それくらい覚えているよ。一緒に出掛けようって誘ったよな?」


そう、俺はただ誘っただけだ。それなのになぜこんな目に合うのだ?


「そうじゃないでしょ?アンタは私に「デートしよう」って誘ったのよっ!」


「そうね、そして、その舌の根も乾かない間に、私にも同じこと言ってきたわね。」


「あー、まぁ確かに。だけど、男と女が出かけることをデートと言うんだろ?何がおかしいんだ?」


「おかしいわよっ!」


俺の言葉にクリムがキレる。


「いーいっ!デートっていうのはもっとロマンチックで甘酸っぱいモノなのっ。二人っきりで一緒に出掛けて、映画観たりショッピングしたり……そして夕日をバックに二人の距離が段々と……。」


クリムがそう言いながら俺に詰め寄ってくる。


「なのに、なんなのよこれはっ!二人っきりじゃなくてアンジェまでいる、……ここまでは現状から仕方がないと許容できるわよっ!」


「そうね、クリムがいる事は私も同意だわ。」


「……二人とも同意して許容しているならいいじゃないか。何が問題なんだ?」


俺としては、嫁は平等に扱うべきだと思っている。ある一人だけに傾向しては国が傾く、と昔の偉い人が言っていた……気がする。


「……このボケガァッ!」


クリムが逆上して拳で殴ってくる……が、小さいのでダメージはない。それどころか、小さいのがポカポカと叩いてくる様は可愛くて気持ちがほっこりしてくる。


「はぁ……。あのね、ソーマ。私たち二人を平等に誘ったところまではいいわ。でも、今居る場所はどこ?」


「どこって……ダンジョン?」


そう、ターミナルのエリア内にダンジョンらしきものが発見されたと、ビャクレンから聞かされたのが昨日の事。


とりあえず安全確認も兼ねてダンジョンを調べる必要が出てきたので、二人を誘ったのだが……。


「だったら、ダンジョンに行くって普通に言えばいいでしょっ!なんでそれが「デート」なのよっ!私の純情を変えせぇっ!」


クリムがポカポカしながら言う。


「いやぁ、ダンジョンデートってこっちの世界では普通じゃないのか?」


以前冒険者仲間が「ダンジョン行こうぜ!」って、男女問わず気軽に声をかけていたのを見かけた事が有る。


「ダンジョンデートかぁ、いいなぁ……」と、つぶやいていた女性冒険者の姿を見かけたこともある。


「俺、この依頼が終わったら、彼女をダンジョンに誘うんだ!」と意気込んで依頼に向かった冒険者の姿も……。


だから、この世界では気になる女の子をダンジョンに誘うのは、十分デートとなりえる……と思っていたのだが。


俺がそう答えると、アンジェとクリムが頭を抱える。


「……はぁ、もういいわ。ソーマだしね。」


「そうね、ソーマだもんね。それより、このダンジョン何なのよ?」


暫くして復活したアンジェとクリムがダンジョンについて尋ねてくる。


「あぁ、ここが発見されたのは昨日の事なんだけどな……。」


俺がビャクレンから聞いた知識では、この世界……と言うか、前の世界でのダンジョンは、マナが正常に流れず、よどんだところに瘴気が混じることによって「ダンジョンコア」という魔石が生み出される。


そのダンジョンコアが身を護るために地中深くに沈み、さらには守護者(ガーディアン)を生み出していく。


守護者(ガーディアン)が活動するためにはそれなりの空間が必要となり、その為に空間を広げていく。


しかし、空間を維持するためには大量のマナが必要となる。そのマナを取り込むため、地上の生き物を誘い込むための入り口が作られる。


その入り口から入り込んだ生物が、ダンジョンの中で息絶えると、そのマナをダンジョンが吸収する。


より多くのマナを吸収するために、ダンジョンの中に餌を用意する。


その餌に釣られた生物を効率よく殺害するために魔物が生み出される。


魔物が倒した生物はマナとして吸収され、魔物が倒されても、その魔物はマナとして還元される。


より多くのマナを吸収するためには、より多くの餌が必要となり、空間が必要となる。


そうして徐々に広がっていくのがダンジョンだという事だ。


放置しておくと広がり過ぎて手に負えなくなるダンジョンだが、ダンジョン内で生み出される魔物を定期的に一定数減らしていけば、ダンジョンはそれ以上大きく広がらず、また、ダンジョンが生み出す餌……つまり資源や宝物の量や質が上がるという。


これは、ダンジョンがより多くのマナを回収するために、よりよい餌を用意しているのだと一説では言われているが定かではない。


この自然の宝物庫……ダンジョンを有する国は、ダンジョンを国の管理下に置き、冒険者を優遇し、より多くの冒険者をダンジョンに送り込んで魔物の口減らし、資源や宝物の回収を行って、国の運営資金にしているという。


ただ、ここまでの情報は、あくまでも以前の世界の話しであり、世界が再構築された今では、どこまでこの常識が適応されるかは分からないとのことだった。


「だからな、それを調べるのが第一目標。ビャクレンによれば、先日まではここに入口らしきものはなかったことから、このダンジョンは生まれたばかりだろうって話だ。今の内に調べて、悠揚そうなら管理下に置く、危険そうなら大きくなる前にダンジョンコアを潰す……そう言う事なんだよ。」


「ふーん。まぁそう言う事なら仕方がないよね。」


クリムはアンジェに視線を向ける。


「そうね、仕方がないわね。……ところで、ソーマの本音は?」


クリムの言葉を引き継いでアンジェがそう聞いてくる。


本音か?決まってるじゃないか。資源はこの先様々なものを生み出していくのに必要だし、宝物だってそう。有用なものもあれば、不必要な物でも、今後何処かとの取引に使えるかもしれない。なんせ俺達の拠点には生産大好きノッカーさん達がいるんだからな。資源や金はどれだけあっても足りないくらいだ。


「決まってるじゃないか。可愛い女性型魔物がいれば捕まえて調教するんだよっ!……あっ。」


しまった、本音と建て前を間違えた。


そう思ったが既に遅い。


クリムやアンジェだけでなく、クロやアルちゃんも交えた通称「ミニマムズ」の面々が俺に向ける視線が異様に冷たい。


「あ、あのですね、今のは違くて、つい本音と建前がですね……。」


時すでに遅し、というのはこの事を言うのだろう。結局、最初の魔物と出会うまで、彼女たちの視線が和らぐことは無かった。




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