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ハーレム王と新しい世界 7

「さて、そろそろかなぁ……。」


『マスター、女性の寝姿を覗くのは感心いたしません。』


俺は、クリムたちが眠っているはずの儀式の間へそっと忍び込もうとしたが、扉を開けようとしたところで、ターミナルのビャクレンに見つかり、締め出されてしまった。


「そうは言うけど、気になるだろ?」


予定では、二人はそろそろ目覚めるはずなのだ。


『それでもダメです。……そんなことより、例の少女が森の中を走っています……どうやら何者かに追いかけられているようですが?』


俺はその言葉を聞くなり、飛び出していく。


クロとアルちゃんがそれに気づいて追いかけてくる。


「クロ、先に行って、ミューナを守ってくれ。」


俺がそういうと、心得た、とばかりにクロは森へ向かって飛んでいく。


クロならば、俺より数倍早く、ミューナのもとに駆けつけることが出来るだろう。そして、この付近に出る魔物程度なら、クロは簡単にあしらえるはずだ。


「アルちゃん、周囲の警戒を頼んだ。」


俺はあるちゃんにそう告げると、アルちゃんは片足を上げ、了承の意を告げると、そのまま樹伝いにどこかへと移動していく。


俺はそれらを確認し、急ぎながらブレスレットに仕込んだ魔石を通じてビャクレンと連絡を取る。


「ビャクレン、状況は分かるか?」


『……現在、監視対象は敵性勢力に追い詰められ、移動を止めております。このままでは監視対象の死傷は免れ……いえ、訂正いたします。現在、マスターの使い魔Kが、監視対象の下に辿り着きました。ただし、敵性勢力の数が多く、監視対象が傷つくのは時間の問題かと思われます。』


「その敵性勢力ってのはどれくらいいるんだ?後、その正体は分かるか?」


『……現在のデータから、敵性勢力の数は約50。その正体はエルフ族である可能性が57%。』


……57%って、また微妙だな。


「わかった。状況に変化があればまた教えてくれ。」


『Yes.My Load。』


俺はビャクレンとの通信を切ると、スピードを緩め、代わりに気配を殺していく。


現場まであと少し。ビャクレンの情報通りであれば50人からのエルフがいることになるが、エルフであれば、当然この森の地の利を生かしてくるだろう。


そんなところに正面から飛び込んでいっても、クロの足を引っ張る未来しか見えてこない。


だから、俺は俺なりのやり方で敵を減らしていく。


俺はその場で足を止め、集中して気配探知の範囲を広げる。


……いた。


ミュー名は大きな樹の根元で蹲り、その前で守るようにしてクロがいる。


その正面には、エルフ(仮)が7体いるが、クロの戦闘力の前に攻めあぐねている。


その後方で援護を受け持っている個体が5体。現在直接に攻撃を仕掛けているのはこの12個体岳だが、さらに深く探ってみると、ミュー名のいる辺りを中心に包囲をしようとしている個体が約30体いるのがわかる。


「……とりあえずは、っと。」


俺は、周りを取り囲むエルフ(仮)の中で、一番遠い位置にいる者に狙いを定め近づいていく。



ズシャッ!


俺は少し離れた場所から、前方のエルフ(仮)に狙いを定め、その背後から首を掻き斬る。


エルフ(仮)は声をあげる間もなく絶命する。


「……確かにエルフっぽいけど、セレーナたちとは違うよなぁ。もしかしてダークエルフ?」


俺は息絶えたエルフ(仮)の傍によってその遺体を検める。


外見……特にその特徴的な耳の形はエルフそのものなのだが、セレーナたちが揃って美形でありすらっとした長身であるのに対し、目の前の遺体は、やや小柄で、美形とは言えなくもない……要は普通の顔立ちなのだ。


そして、最も大きく違うのはその肌色。


セレーナたちハイエルフは一様に透き通るような白さだったが、こいつの肌は褐色……まではいかないもののやや濃い肌色だ。


地球で言う黄色人種が、少し日焼けして耳を尖らせたらこんな感じになるだろう、と言えば一番理解しやすいかもしれない。


ただ、ダークエルフというには、イメージから離れすぎているので、何とも言えないもどかしさがある。


「っと、それよりお仕事、お仕事。」


気配感知で探ると、包囲網がいびつな形になり、クロたちの前には10個体の気配がある。


クロの奮闘により、かなりの数が減り、包囲どころじゃなくなったようだ。


俺はそのまま気配を消して、手近にいるダークエルフ?達を屠っていくのだった。



「ふぅ、これで終了、かな?」


俺は足元に転がっているダークエルフもどきを見下ろしながらそう呟く。


こいつの生命活動を止めたことにより、周りの敵性勢力の気配がすべてなくなった。つまり危険の排除が終わったという事だ。


俺はいつの間にか戻ってきていたアルちゃんに、ノッカーたちと連絡を取ってもらい、魔石の回収と、まだ魔石化していない遺体の回収を頼む。


そして俺自身は、震えて蹲っている少女の許へ赴く。


「よう、ミューナ。怪我はないか?」


俺は近くで見守っているクロの喉を撫でながら少女に声をかける。


「お……おにぃ……ちゃん、おにぃちゃん助けて、ママが、ママがっ……。」


俺の姿を認め、ほっとしたのか、抱き着いてきて泣きじゃくるミューナ。


「ミューナ。落ち着いて。大丈夫だから。ちゃんと説明してくれるか?」


俺は泣きじゃくる少女の頭を撫で、あやしながらゆっくりと声をかける。


「ヒック……ヒック……う、うん……。」


ミューナは撫でられているうちに、段々と気を取り直していく。


「あ、あのね、おにぃさん。……こんな事、お願いしていいのかわからないのだけど、ママを助けてっ。ママが助かるなら、ミューナは何でもします。おにぃさんの奴隷でもなんでもなるから、お願いっ、ママを助けてっ!」


ミューナが必死になって訴えかけてくるが、状況がわからない事には何とも答えようがない。


ミューナを宥め、落ち着かせた後、一緒にミューナの母親がいるという隠れ家に向かう事になった。


道中ミューナが話をしてくれる。


母親の事、自分の事、そして襲ってきた連中のことなどだ。


ミューナによれば、襲ってきているのは、この世界の『デミエルフ』という種族らしい。


デミエルフは、エルフとよく似た外見ではあるがエルフではなく、精霊との交信も出来ないし、寿命も人族より短く、外見以外はエルフとは似ても似つかぬ種族なのだそうだ。


そんなデミエルフに何故追われているかというと、ミューナの母親はハイエルフで……と言っても、俺達が元居た世界のハイエルフ……セレーナ達とは何の関わり合いもないそうだが……、デミエルフの間では、ハイエルフの生き血をすすると外見が美しくなり、ハイエルフの生き胆を食せば寿命が30年延びる。そしてハイエルフを生きたまま喰らえば、エルフに進化できると言い伝えられているらしい。


なので、ミューナの母親はデミエルフたちに追われ、そのせいで身を寄せていた小さな集落から追い出され、ミューナと共に、逃げ隠れしながら、細々と生活してきたのだという。


その過酷な日々が、ミューナの母親の生命力を削り、この地に辿り着いた時には、起き上がるのもきつい位になっていたという。


幸いにも、この地についてからデミエルフの姿を見ることはなく、森の恵みが豊富なお陰で、何とか生きていくのに不自由はしなかった。


気が抜けたためか、ミューナの母親はしばらくすると、起き上がれなくなり、それからはミューナが森に出かけては食べるものや薬草を摘んできて、母親の世話をするという生活が続いていたという。


だけど、先日、いきなりデミエルフたちが家に襲い掛かってきたという。


ミューナの母親はその身を護るため、そして何よりミューナを逃がすために、なけなしの魔力を使い、デミエルフたちを弾き飛ばし、家の周りに結界を張ったという。


結界は非常に強力で、デミエルフ程度では近づくことも出来ないのだが、それも結界を張った術者の魔力が尽きるまでの事。このままではいずれ結界は消え失せ、再度デミエルフたちが襲ってくるだろう。そして何より、結界が消えるという事は、母親の命が尽きるという事であり、ミューナは黙ってその時を迎えるなんてことを許容できるはずもなかった。


そして母親も、自分の命が長くないことを知っていて、今のうちにミューナだけでも遠くへ逃げるように、という。


だからミューナは決意した。自分が助けを呼んでくることを。


ミューナの頭の中には俺の事がよぎる。助けてもらえる保証はないが、それでも、母親を助けてもらえるのであれば、自分の身を差し出しても……というより、ミューナには自分の身を差し出す以外に何も持っていない。


とにかく、一縷の望みにかけて、俺がいると思われる、以前聞いたノッカーの集落を目指して走ってきた、という事だった。


「あ、あそこです。」


ミューナの話を聞き終え、しばらく歩くと少し開けた場所に出る。


そこには粗末な小屋がぽつんと立っている、どうやらアソコガミューナの住んでいる場所らしかった。


「おかぁさぁーん!」


ミューナは堪らずに駆け出していく。


慌ててクロがその後を追いかける。気配は感じないが、まだ小屋の周りに危険がないと決まったわけじゃないのだ。


俺は用心しながらも、速足でミューナの後を追いかけるのだった。




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