ハーレム王と新しい世界 6
「ぐぎゃぎゃっ!」
「よし、生きたまま捉えることが出来たぞ。」
俺は捕まえた魔物に目をやる。……と言うか一点に目が吸い寄せられる。
その魔物はハーピー族だった。
女性の姿形をした魔物。違うのはその腕が羽根になっている事、と脚が鳥のものであることを除けば人間の女性と大差はない。
つまり、その胸部にはたわわに実る二つの果実が……。
「ふんっ!」
俺の目の前で、いきなりクリムがその手に持ったナイフで獲物の心臓を突き刺す。さらにそのナイフを通して電撃が流れ込み、ハーピーは一瞬にして絶命する。
「何するんだよっ!せっかくこんなおっきな……。」
「大きい何?」
「あ、いや、そのですね……。」
クリムの異様な迫力に思わずしり込みする。
「胸かっ、胸なのかっ!大きけりゃ、魔物でもいいのかアンタはっ!」
「いいんだよっ!弄ぶだけなら魔物でもいいんだよっ!」
思わず言い返してしまう。この世界に来てから全然エッチできなくて溜まってんだよっ!
「むきぃッ!アンタを殺して私も死んでやる!」
「こら、バカッ、よせっ!それはマジにシャレにならんっ!」
俺はクリムの周りに集まる魔力を慌てて霧散させる。
俺達がそんな感じで騒いでいると、アルちゃんがツンツンと突っついてくる。
「あ、どうしたアルちゃん?」
俺がアルちゃんの方を見ると、アルちゃんは、クイクイっと後方を指さす。
「ん?」
俺は指示された方に視線を向ける。そこには気絶した女の子が居たはずだが……。
「いない……。」
さっきまでそこで気絶していた少女の姿がない。
「にゃにゃにゃん、にゃん。」
「えっと、俺達が騒いでいる間に、逃げた?」
「にゃん。」
どうやら、俺達の声で目を覚ましたらしいが、丁度その時、クリムがハーピーにとどめを刺す処だったらしく、また、その後言い合いを始めたせいで、怖くなって逃げだしたらしい。
クロも止めるべきかどうか迷ったらしいが、とりあえず問題ないと見逃したという。
「……あんな小さな子が、何でこんな所にいたのかしらね。」
先程とは打って変わって心配そうな声音で言うクリム。
なんだかんだ言っても、クリムは優しい子なのだ。
「さぁな。とりあえず、ここは監視対象にして、俺達は戻ろう。」
俺も、気にはなったが、今できることは無いと判断してターミナルへ戻ることを提案する。
クリムも、今はどうしようもない事を理解して頷いてくれた。
◇
「よう、また会ったな。」
「へっ、あっ……。あ、……おにぃさんでしたか。」
少女は俺の姿を認めて、ホッと気を抜く。
「この間は本当にありがとうございました。」
そう言ってぺこりと頭を下げる少女。
「もう何度もお礼を言ってもらったからいいよ。それより、今日も薬草集めかい?」
「ハイ、お母さんの臆するを作らないといけないので……。」
「そっか。なぁ……。」
「いえ、大丈夫です。」
俺が何かを言いかけると、それを遮るように断りを入れてくる少女。
彼女の名前はミューナと言い、この近くに母と一緒に住んでいるらしい。
ミューナが言うにはこの付近は何故か魔素が少ないので、危ない魔物が少ないのだそうだ。
魔素が少ないのは、地下にあるターミナル施設の所為なのだが、ミューナはそのことを知らない。
人里から遠く離れたこんな辺鄙なところに、母子だけで住んでいるというのもおかしな話だと思ったが、ミューナの話ではよくある話らしい。
なんでも、人族がすむエリアは限られているので、何らかの理由で差別を受けている者や、お金のない者達は、エリアの外へと追いやられているらしい。
結界の外に出たからと言って、いきなり魔素が濃いわけではなく、人族のエリアから離れるにつれてだんだんと濃くなっていくため、エリアの外にいても、それほど離れていなければ、まだ大丈夫とのことだった。
「後、この辺りみたいに、薄い場所は結構あるんですよ。だから私達みたいにはじきだされたものは、そういう場所を探して住み着いているんです。あ、でもでも、悪い事ばかりじゃないですよ。魔素が濃い場所の薬草さんは効果が高いんですよ。知ってました?」
ミューナはそう言って無邪気に笑って見せるが、その笑顔がとても悲しく思えた。
彼女を助けてから、俺はこの辺り一帯を監視対象に置き、彼女が現れたらすぐに連絡するようにと言い含めておいた。
そして、数日後に彼女が現れたという連絡が入り、俺は偶然を装って、彼女に近づくことに成功した。
最初警戒心をあらわにして嫌ミューナだが、あの時助けたのが俺だと分かると、一転して感謝の言葉を述べ、何度も何度も頭を下げてくれた。
その後も数日おきに彼女は現れ、俺はその都度顔を出し、それなりに親交を深めることに成功している。
ただ、俺の援助を、何故かミューナはかたくなに断り続けている。
母親が病気というのであれば、よく効くポーションがあるのでそれを持っていくといい、と言ってポーションを渡そうとしたことが何回かあったが、先程のように即座に断らsれる。
だったらせめて、と、この付近でノッカーたちが集落を作っている事、ノッカーたちは気のいい奴らばかりだという事を話し、そこに住まないか?と持ち掛けた事もあるが、その話が出る度に、彼女は悲しそうに顔を伏せ、なんだかんだと理由をつけて会話を終了せせる。
こんな時こそ、アンジェやクリムの助言が欲しいところなのだが、彼女たちは今眠り続けている。
ミューナを襲っていたエルフとハーピーはそれなりに格が高かったらしく、彼女たちの条件に充分当てはまるものだった。
だから、さっそくと、クリムは進化の儀式を、アンジェは再構築の儀式を執り行った。
儀式は無事に成功したのだが、急速な進化は精神に異常をきたす恐れがあるという事で、クリムとアンジェは、精神を新しい身体に馴染ませるために、現在は眠った状態にあった。
因みに、懸念していたアンジェの種族についてだが、詳しくはアンジェが目覚めてから調べてみないと分からないそうだが『リリス族』という、サキュバス族に近しい種族とのことで、馴染むのも早いだろうとのことだった。
そんな彼女たちが目覚めるのは三日後の予定で、出来ればそれまでに問題ごとを片づけておきたかったのだが……。
ミューナを襲っていたエルフ族は、普通ではなかった。そしてミューナの外見、特に耳だが、その耳は、誰が見ても一目でわかる特徴的な形をしている……つまり、エルフ族の耳に近しい。
この近くでエルフ族に絡む問題が起きているのであれば、それを解決しない事には、安心してノッカーたちを外に出せない。
そして、その理由のカギになるのは今の所ミューナしかない、という事で、俺はこの数日彼女から情報を引き出すべく頑張っているのだった。
「……はい、これも持っていきな。」
俺はミューナに付き合って採集した薬草の半分を渡す。
「えっ、あっ…………。いつもありがとうございます。」
「いいからいいから。」
ミューナの手は小さく、また丁寧に採集をするため、いつも少量の薬草しか採集できないでいる。
具体的には、俺が渡した薬草の半分ぐらいの量だ。あれでは効率よく調合したとしても、半分に満たたない量の回復薬しかできないだろう。
俺が渡した薬草と合わせてようやく二瓶の回復薬が作れるかどうかと言ったところだ。
それでも、回復薬をそれだけ与えづづけても一向に良くならないところを見ると、回復薬が効かない身体、もしくは回復薬では効き目の無い病気かのどちらかなのだろう。
ストックとして持っている万能回復ポーションを使えば、大抵の病気は治すことが出来るが、希少素材を使っているだけに値段が馬鹿高い上にそう簡単に入手できない。
ミューナも、さすがに俺がそのポーションを持っているとは思っていない。
そしてミューナ自身、ポーションでは効き目が薄い事、自分がしていることはタダの気休めだという事を自覚している。
だから、高いだけで効かない可能性があると分かっているから、俺の申し出を断っているのだと思う。
「じゃぁ、ソーマさん。今日もありがとうございました。」
「あぁ、気を付けてな。後何かあったらいつでも何でもいいから頼ってくれよ。」
「ハイ、ありがとうございます。」
ミューナはそう言って再度ぺこりと頭を下げると、走って帰って行った。
その後姿を見送っていると、俺の頭からあるちゃんがはい出してきて、彼女の後を追いかけていく。
俺はアルちゃんに親指を立てて挨拶すると、アルちゃんも肩府側の前脚を挙げて応え、ミューナの後を追っていった。
いつもの風景だ。アルちゃんは、これから、彼女が癒えに帰り着くまで、陰から護衛をしてくれる。
なぜそこまで?と疑問に思うものもいるだろうが、知り合った可愛い少女が、魔物に襲われる、なんて事が有ってはならない。
ましてや、俺の事を「おにぃさん」と呼んで慕ってくれる子を危険に晒せるわけがないじゃないか。
可愛いは正義なのだ。可愛さを守ることを惜しんではならない、惜しむのは正義に反することなのだから。
もう一度言おう、可愛いは正義!そして、俺はロリコンではない。そこのところ誤解しないように。
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