ハーレム王と新しい世界 4
「アンジェを再構築って、どういう事なんだ?」
俺はビャクレンに詳細を求める。
『まず、マスターには、この世界の魔物事情、そして、ターミナルで行われる儀式というものをご理解いただく必要があります。』
そう言ってビャクレンが説明したことを簡単にまとめると、次のようなことになる。
まず、この世界は、完全なる弱肉強食であるという事。つまり、弱きものは強きものの餌になるのは当たり前として受け入れている。
餌になりたくなければ、自らが強くなるしかない。その為には力を得る必要がある。
力を得る方法は二つ。
一つは自分と同格以上の敵と戦い勝利を収めて経験を得ること。
もう一つは、相手を喰らって、その力を取り込むこと。
一つ目については容易に理解できる。つまりはゲームで言う経験値とレベルアップという事だろう。
敵が強ければ強いほど、戦いの経験値は蓄積され、格……レベルが上がっていく。
この場合、弱い敵と戦っても経験値にはならない為、格差があるほど、弱きものは見逃されることが多い。
しかし、二つ目の場合は違う。
この世界には魔素が満ちていて、それが魔物たちの在り様に変化を与える。
たとえ弱きものであっても、身を護る術、相手を打ち砕く術を一つや二つは持っている。例えば、ミツバチの最後の一刺しのように。
魔素はそれらの術を強化し変異させる。
だから弱きものであっても、強力な術……スキルを持っている事が有り、そのスキルを宿した魔石を喰らい体内に取り込むことによって、そのスキルが使えるようになることもある。
スキルそのものが使えなくても、そのスキルに由来した力が底上げされたり、元々持っているスキルが、そのスキルの影響を受けて、新たなスキルに変わることもある。
この事に格は関係無く、あくまでも、内包する魔素量とスキルのみによって影響を与える。
つまり、相手が弱くても、強力な力を持っていれば自分のものにできる可能性があるという事であり、この場合、相手が弱いほど力を得やすい。
もっとも、格は関係ないとは言っても、スキルや魔素量は格が高いほど強力で潤沢になっていくため、弱い者ばかりを相手にしていても、ある程度までしか強くなれないのだが。
それでも、ろくに戦えない弱きものが生き延びるためには、同じ弱き者同士で喰らいあい、少しでも強くなっていくしかないのだ。
この世界では、そんな生き残るための戦いが、万事繰り広げられているという。
『そして、その魔石の取り込みを効率的に行うのがターミナルの施設の「儀式の間」なのです。』
儀式の間において、ベースになる魔物に、取り込む魔石をセットすれば、システムの解析により、どのような力を得ることが出来るかが分かるという。
取り込む前に結果が分かるので、、むやみやたらと食らう必要性はなく、自分が望む成長に向けて効率的に取り込むことが出来るのだそうだ。
ただ、このシステムも完全ではなく、約1%未満の確率で事故……つまり予測外の事が起きることもあるので、その辺りを飲み込んだうえでの使用となる。
逆に言えば、99%以上の確率で信用できるので、大きな危険を回避することは容易という事だった。
『クリム様の進化も、この理を利用したものです。ピクシーからハイピクシーへの進化に必要な条件は、ハイピクシーであることを満たした格、進化に必要十分以上の魔素、そして条件を満たした格以上の魔石が必要となります。』
そして、ビャクレンのチェックによれば、クリムはその条件を満たしており、後は、どの魔石を使用するかの選定だけとのことだ。
使用魔石によっては思わぬ事故を誘発することもあるので、検討が必要とのことだった。
『そして、アンジェ様の再構築についてですが、アンジェ様の源になる魔石が存在しますので、後は、その魔石を受け入れるだけの器と、十分な魔素量、そして、同格以上の魔石が必要となります。』
「……それらが揃えば、アンジェが復活できるというんだな?」
『……正確に言えば、元のアンジェ様そのものではありません。』
「どういうことだ?」
『再構築に使用したものによって最終系は変化します。簡単に言えば、『アンジェ様の記憶と魂を持った別のなにか』が誕生することになります。』
「別の……何か……。」
『そうです。クリム様が、人間ではなくなりピクシーとなったように、アンジェ様もエルダーサキュバスではない、別の種族になる、と言えばお判りでしょうか?』
「あぁ、よく理解できた。アンジェはアンジェで変わりないって事だな。」
『その認識でよろしいかと。』
……アンジェが生き返るのであれば、別に種族など気にはしない……と言いたいが、肉体の無いレイスだとか、不定形のスライムとかだったらやだなぁ。
『……マスターが何を考えているか分かりませんが、再構築前に結果が分かるので、酷い事にはならないと思います。』
「……そ、そうか?なら安心だな。ところで、今の手持ちで、クリムの進化とアンジェの復活は可能なのか?」
『………可能です。しかし、出来れば、もう少し素材を集めたほうがよろしいかと。』
暫くの沈黙の後、ビャクレンがそう答える。今ある素材で色々と計算したらしく、その結果をスクリーンに映し出してくれる。
『まず、第一案です。これが成功率が最も高く、また、一番強力な力を得ることが出来る結果になるます。』
「却下だっ!」
俺はその案を即座に否決する。
ビャクレンが示した第一案は、クリムの進化にアンジェの魔石を使うというもの。
確かに安定し、進化後は俺の想像を遥かに凌駕した力を持つようになることが予測されるのだが、問題はアンジェの魔石を使う、という部分だ。
これによって、進化後の主格がクリムになるのかアンジェになるのか、そして、もう一方の魂がどうなるのかまでは予測がつかないという。
一番最良の結果としては、アンジェとクリムの人格が同居する「二重人格」になるのが良いそうだが、それが一番いいっていう時点で終わっていると思う。
また進化後の姿がハイピクシーになる確率は55%で、残りは計測不能とのこと。80%の確率でサキュバスに由来したものになるだろうとの事だがはっきりとはしない。
つまり、結果だけを見れば、戦力の増強はされるが、アンジェかクリムのどちらかを失う可能性が高いという事であって、そんな事を許容できるわけがない。
『第二案は、クリム様の進化に、新たに手に入れたサキュバスの魔石を使用するというものになります。』
これについては特に問題はなく、クリムの件だけに限って言えば、現時点の手持ち素材の中では最良の結果ともいえる。
ただ、すぐに許可を出せないのは次の第三案にも絡む事だったからだ。
『第三案は、アンジェ様の再構築にあたって、サキュバスを器にすることです。』
アンジェの復活の為に必要になるのが、適した器。あのサキュバスは、かなり格が高かったらしく、また、成り立ちは違っても同じサキュバスという事で、アンジェの器としては、これ以上ない親和性を持っているというもの。
同格の魔物が近くにいる保証がなく、また綺麗に倒すことが出来るか?という事を考えると、現在ではアンジェの再構築に適した器はこれ以外の選択肢がないように思われる。
しかし、このサキュバスをアンジェの器に使用するという事は、クリムに与える魔石を別に用意する必要があるという事で、サキュバスの魔石を除けば、現在使えそうなものは、赤ネズミとゴブリンプリンセス、そしてゴブリンキングの三つのみだ。
その内、赤ネズミは格が足りずに却下、ゴブリンプリンセスはギリギリ使用できるものの、先の事を考えれば、もう少し格上のものを用意したい、そしてゴブリンキングは変異性が高いため危険すぎる。
そして、アンジェの再構築の為にも同格の魔石が必要になることから、クリムの進化を選ぶか、素材が集まるまで二人を待たせるかの二択を迫られることになった。
「いいんじゃない?素材が集まるまで待てば。私もアンジェに会いたいし。」
俺が悩んでいると、クリムがそんな事を言ってくる。
「しかし、それでは俺のエッチな計画がぁ!」
「本音漏れてるっ!」
「……じゃなくて、クリムだって、早く大きくなりたいだろうし……。」
俺は慌てて取り繕うが、クリムだけでなく、クロやアルちゃんからも冷たい視線を向けられるのだった。
「まぁ、戦力なら、クロやアルちゃんが来てくれたから、何とかなるでしょ?」
うずくまる俺を無視して、クリムが明るく言うと、それに呼応するように手を挙げるクロとアルちゃんだった。
80話の時点で一万PV超え。
私の代表作の「いつか魔王になろう」の10万PVには、まだまだ遠く及びませんが、皆さんの応援を糧に頑張ります。
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