ハーレム王と新しい世界 1
『おはようございます、マスター。ご気分は如何ですか?』
ビャクレンの声に目を覚ます。どうやらターミナルの前で眠ってしまったらしい。
周りを見ると、クリムが気持ち良さそうに寝息を立てている。
「あぁ、いつもと変わらない。声をかけてきたってことは再構築が終わったということでいいのか?」
『現在最終シークエンスに入っておりますので今しばらく掛かりますが、現状でも一部の機能は使用可能です。』
「そうか……。じゃぁ、とりあえず色々と教えてくれ。このターミナルで出来る事出来ない事、外の様子や新しい世界についてなど、な。」
クリムもまだ起きる様子もないし、ターミナルも再構築中というのなら、急いで何かをするようなことはない。だったら、これくらいが暇潰しには丁度良いだろう。そう思ってビャクレンにそう告げてみた。
『承知致しました。ではまずこの施設についてですが……。』
眼の前にスクリーンが浮かび、ターミナルの構造図が映し出される。
『現在、この施設は3階層に分かれておりまして……。』
ビャクレンの説明によれば、このターミナルは、外部との連絡通路と居住区がある上層、ターミナルのメインシステムのある中層、マナの管理や貯蔵の他、各種保管庫が集まっている下層の3つから成り立っているらしい。
形状としてはターミナルのシステム部分を中心にした円形で、上層はその中央部分が多数の部屋で区切られており、そこで生活ができるようになっている。
なので、当面はノッカー達はそこで暮らしてもらうことでいいだろう。
部屋の大きさや区切りなどは自由に変更できるそうなので、状況に合わせて改築していけばいい。
居住区をぐるりと取り囲むように長い通路があって、その東西の両端に外部へ繫がる通路へと続く道がある。
その通路との間に小部屋があり、ここで外部への扉を監視·制御している。まぁ危険なものが簡単に出入りしても困るからな。
そして施設の根幹である中層。その中央にはターミナルを擁するこのメインシステムルームがあり、それを取り囲むように4つの部屋がある。
東の部屋は中央管理室とでも言うのだろうか?メインルームとよく似たようなコンソールや、スクリーン、台座などが備え付けられていて、ここから様々な制御が行えるという。まぁ執務室とか司令室といえばいいのかな。
西側の部屋は儀式の間と呼ばれ、魔物に関する様々な事柄を司っている……らしい。
魔物の魔石を結合させ、元になる魔物の強化をしたり、新たな魔物へと生まれ変わらせたり出来るとの事。
クリムの進化等もここで行うことになっていて、部屋の中には様々なセンサーや機械などが犇めいている。
ただ、どう見ても機械なのは間違いないのに、機械っぽくない形状が、自分の知っている科学とは別物だということを、嫌でも理解させられる。
南の部屋はサブシステムが詰まった部屋であり、メインルームの補佐を担っている。サブルームというより、中央と、この南の部屋をまとめてメインシステムといったほうがしっくり来るかもしれない。
そして北側の部屋。ここは転送ルームと言って、将来他のターミナルを支配下に置けば、ターミナル間の転移が可能となるらしく、その行き来するための部屋らしいのだが、現在使用できないので、暫くは俺のプライベートルームとして使うことにした。
というのは中層の中央部分は、マスターである俺か、俺が許可したもの以外は出入り出来ないようになっているから、ここで何をしようが他にバレることはない……つまり他に気兼ねなくエッチし放題ということなのだ。
だから早速キングサイズのベットを運び込んでもらう指示を出したら『一緒に寝る相手も居ないのだからシングルサイズでいいのでは?』と呆れられてしまった。………うるさいよ。
中層の外側は、中央部分をぐるっと取り囲むように通路があり、上下を繋ぐポイントや、大小様々な部屋と繫がっている。
この部屋は、様々な生産ができる工作室と、レシピに従って大量生産をする生産ラインが殆どだ。
工作室で作製したものは、すべてレシピとして登録され、生産ラインで大量生産することができるようになっている。
現在はラインの半分は携帯食で、もう半分は各種ポーションとなっているので、様子を見ながら調整するように言われているが、この辺りはノッカー達に任せておいてもいいだろう。
下層部分は殆どが各種貯蔵庫となっており、それらを管理する調整ルームが中央に位置している。
この調整ルームでも、一応ターミナルを制御することは可能なのだが、それはあくまでも万が一に備えての緊急措置に過ぎないので、殆ど使用することはないと思われる。
尚、近くに鉱脈があれば、この下層から掘り進み拡げていくことも可能らしく、その為にも、ノーム族やドワーフ族と誼を結ぶようにと念押しされているのは、また別のお話。
『以上がこのターミナルの現状となります。さらなる拡張により、様々な機能制限が解除されていきますので、マスターには支配エリアを拡げていただくことを望みます。』
「あ、あぁ、そのことは追々に……な。」
俺はとりあえず言葉を濁しておく。
支配エリアを拡げるって……どう考えても面倒なことしか思いつかない。
俺は嫁の確保以外では動きたくないんだよ。
ただ、クリムはそれを許容してくれないので、嫁確保のためにエリアを拡げる、って言っても協力してくれないだろう。
つまりは、支配エリアを拡げるってのは難しいということなのだが、取り敢えずは黙っておく。
「それでだ、外の世界はどうなっている?」
だから俺は話題を変える。実際、外のことが気になるのも事実だしな。
『まだ情報が集まっておりませんが現状で分かることであれば……。』
ビャクレンはそう言ってスクリーンに外の様子を映し出す。
広がる草原、一面の砂漠、光を通さない深い樹海、所々に瓦礫が転がる廃墟、そして、それらを取り巻く荒野。
スクリーンに次々と映し出される外の様子に、俺は絶句する。
「これは……。」
『現在の外界の様子です。』
「うっそぉ。あの廃墟って街があったところだよねぇ?」
「起きたのか?」
いつの間にか起きてきて、横からスクリーンを覗き込んでいるクリムに声をかける。
「あ、うん。ソーマの大声で起きちゃった。」
「そ、そうか。悪いな。」
「ううん。あんなの見たら大声出しても仕方がないよ。」
クリムの視線を追って、改めてスクリーンに目を向ける。
『現在のこの世界は、崩壊によって近隣のいくつかの世界を巻き込み、混ざり合っています。その結果、大気中には濃い魔素が混じり、魔素に適応できない種族は全滅、もしくは適応できるように進化しています。』
「魔素?適応?……人族は……人間はどうなった!?」
『元からこの世界の住人であった人族は、魔素に適応することができず、その5割が世界崩壊時に命を落としています。』
「5割って……半分かよ。………残りの人族はどうなった?」
『王玉の支配するエリアには強力な結界が貼られています。生き延びた人族は、各地に散らばる王玉エリア内に生存しています。』
ビャクレンの言葉とともに、スクリーンが切り替わり地図が表示される。
中心はどうやらここのようで、端の方にいくつか色が変わっているエリアがある。おそらくそこが人類がいるというエリアだろう。
「えっと、その魔素……だっけ?それがあるからみんなお外に出られないってこと?」
『少し違います。魔素があるからと言って直ぐに命を失うわけではありません。ただ、魔素に適応している種族というのは総じて強い力を持ち、強力な固有スキルを持っていますので……。』
ビャクレンの話をまとめると、人間みたいに魔素に適応する身体を持っていない種族は、外界で魔素に晒され続けると、急速に生命力を失っていく。個人差はあるが、なんの対処もしないと、1週間ほどでその命を失うらしい。
王玉の結界は魔素を遮断するため、結界内にいれば問題ないが、外に出るにはそれなりの装備が必要とのこと。
逆に言えば、装備があれば外にもでられるということだ。
しかし現実には人間は結界内に閉じこもっている。それは、外にいる魔物が強すぎて、外に出るイコール自殺行為だからだそうだ。
だから、現在は強力な魔物が蔓延る中、人族は限られた結界内で、ほそぼそと暮らしているとのことだ。
尚、現在の魔物の種類とか、分布などはまだわかっていないそうだが、時間が経てば、そのあたりの解析も済むらしいので、それまで待つ必要があるとのことだった。
俺とクリムは、世界の以前との余りにもの変わりように、ただ絶句するしかなかった。
気づけば9000pv超えてました。
ありがたや~!
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