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ハーレム王の切実な問題 7

「クリエイト・ゴーレム!」


クリムの声が響き渡ると、傍にあった瓦礫がもぞもぞと動き出して人型を形成していく。


「じゃぁ行くぞ。」


ゴーレムの完成を待って、最後の障害を取り除き、サブルームの扉を開ける。


同時に、クリムの創造したゴーレムが室内に飛び込み、そこに待ち構えていたトロールと、ガップリ四つに組み合う。


「他の魔物はいないようです。」


ゴーレムの脇を擦り抜け、先に室内に入ったカシムがそう報告してくる。


「よし、、なら予定通りに、……行けっ、プチゴーレムたちっ!」


俺は革袋からゴーレムたちを掴み取り、トロールに向かって投げつける。


クリムは、ゴーレムに組み付いているトロールに魔法を打ち込み、援護をしている。


カシムは、そのままコントロールパネルに取り付き、あらかじめ指示しておいた操作をしている。


俺は全部のプチゴーレムが、トロールに取り付くのを確認した後、プチゴーレムに施したスキルを発動させる。


『発動:ドレインタッチ』


俺がキーワードを口にすると、プチゴーレムたちが光り出し、スキルが発動したことがわかる。


「えーと後は待つだけ?」


俺の傍に戻ってきたクリムがそう訊ねてくる。


「あぁ、一応クリムのゴーレムが、トロールを逃がさないようにだけ気を付けておいてくれればいい。」


ノッカーの老人の力を取り込んだことで得た力、クリエイトとエンチャント。


クリエイトの力は様々なものを作り出す能力……と言っても知らないものは作れないし、試行錯誤も必要で、思い描けば完成品が出来るとか言ったものではなく、簡単に言えばその制作過程の技術力を得たようなものだ。


言葉にすれば大したことのないようにも思えるが、本来であれば何十年も修行して得られる技術力と経験が一瞬にして手に入ったのだから、これはこれで凄い事なのだろう。


そして、今回の肝となったエンチャント。


これは、使用者の持つスキルを細工物に付与できるというものだ。これを使えば、ファイアーボールを撃ち出す杖とか、光魔法のバニッシングを纏わせた剣とか簡単に作り出すことが出来る。物を作ることが出来るクリエイトと非常に相性がいい力だった。


ただ、一つ問題なのは、『使用者のスキルを付与することが出来る』という事だ。


つまり、俺がエンチャントできるのは俺が持つスキル……今現在で言えばドレインと着火ティンダーだけだった。


だから今の俺がファイアーボールを打ち出す杖を作ろうとしても、出来上がるのは杖の形をしたライターなのだ。……まぁ、コレはこれで需要がありそうな気もするが。


そして俺の持つもう一つ……というか、唯一と言っていい能力『ドレイン』。これは相手のマナや生命力を吸収する力で、これを剣にエンチャントすれば、かなり有利に戦えるのでは?と考えたのが、この計画の始まりだった。


そして試作的に作った『ドレインソード』が、今俺が手にしている剣なのだが、いくつか問題があった。


まず、剣なので、相手に切りつけなければ効果がない事。相手の生命力をすべて吸い取るまでにどれくらい切りつけなければならないかわからないが、トロールといえば、かなりの体力がありそうなので、その間相手も無防備にきられているわけもなく、かなりの危険が伴うという事に気づいた。


さらに言えば、元素材となった剣がゴブリンから奪ったもので、いわゆる粗悪品に分類されるような質の悪いものだから、無事にエンチャントできたとしても、耐久力が心許なく、どれだけ吸収できるかがわからない、下手すれば少しドレインを使っただけで壊れてしまう、という危険もあった。


これらの問題を解決したのが、ゴーレムを使う方法。


クリムの土魔法で創りだすゴーレムが、トロールを抑え込めば、相手に躱されることなく、ドレインが使える。


そしてドレインを使うのは剣じゃなくても問題ない、「細工物」に付与できるのだから。


そこで考えたのが自立行動できる人形……つまりゴーレムを作り出し、相手に取り付かせてドレインを発動させればいいのではないか?と。


ゴーレムにドレインを使用させると決まったところで浮かび上がった問題が吸収したエネルギーをどうするか?という件だった。


武器に付与した場合、そのエネルギーは使用者に還元されるので問題はないが、自立しているゴーレムの場合はどうなるのかわからず、様々な実験をして確認した結果、コアになる核石に蓄積され、各医師の容量が満タンになった場合は、そのまま外部に放出されることが分かった。


用意できる核石の大きさとその容量から吸いだせるエネルギーの量は分かるので、一気に勝負をつける場合、多数のゴーレムが同時にドレインを使用する必要がある。


だからサイズを小さくして数をそろえたのは、素材の問題もあったが、それ以上にドレイン使用による条件に由来するものだった。


最も、数が多い分、俺がエンチャントを使う回数も多かったわけで、結局、最後のプチゴーレムにエンチャントを施し終えたのは、朝になった頃だった。



「はぁ、よくもまぁこんな手を思いつくものね。」


「ふっ、もっと褒めてもいいんだぞ。」


俺は前髪をフサァッとかきあげ、気障っぽく言ってみると、クリムに素で、「キモイ」と言われた。


……あ、うん、俺もやっててそう思ったよ。


徹夜明けのハイテンションの所為か、俺自身思ってもいないことをやってしまうらしい。


「ま、とにかく、後は生命力を吸いつくされて干からびるのを待つだけでいい。」


「あのぉ、暇ならコッチ手伝ってもらえませんか?」


俺達の会話が聞こえていたのか、向こうでカシムがそう声をかけてくる。


「えー、パス!」


クリムが即座にそう答えると、カシムはがっくりと肩を落とす。


「……って、カシムって何やってるの?」


「知らずに断ったんかいっ!」


「だって面倒そうだしぃ。」


「……まぁ、面倒なのは間違いないな。」


プチゴーレムたちのドレインによって、トロールから吸いだし、溜めきれなくなって漏れ出たエネルギーが、この室内に充満している。カシムが今やっているのは、サブルームの機能を使って、そのエネルギーを変換し、貯蔵庫にためる作業だ。


返還などの制御はサブルームのシステムが担ってくれるので問題ないが、その変換量とか抽出量などを、コンソールのモニターに出される数値を見ながら、適切に調整していくのが、かなり面倒で神経を使う作業であり、カシムは今それをやっているのだ。


この調整値を間違うと、せっかく吸いだしたエネルギーがトロールへ戻されたり、この場にいる俺達やプチゴーレムの持つエネルギーが奪われたりするので、ある意味、この戦いの中で一番重要なポジションであるともいえる。


「そっかぁ。じゃぁ応援してあげるね。頑張れ~。」


俺から話を聞いたクリムは、カシムに笑顔を向けて応援するのだった。


「……長老様、俺達、契約相手間違えたんじゃないでしょうか?」


カシムがそんな事を呟いていたが、俺たちの耳には届かなかった。



『……接続終了。これから、すべてのシステムの掌握、アップデート、再構築のため、30時間のスリープ状態に入ります……。』


トロールを倒して、サブルームのシステムを再起動し、制御を取り戻した後、ターミナルに戻った俺達に、ビャクレンがそう告げる。


そして、再構築中は一切システムに触れないように言い残して、光の明滅が消え、室内を静寂が支配した。


「……まぁ、ビャクレンが目覚めるまで、やることないからな、宴会でもするか。」


ノッカーたちの殆どは不眠不休でプチゴーレムたちの製作に取り掛かっていたから、それを労う意味もあった。


幸いにも1週間は飲み食いできる食料と飲料水、そしてアルコールもあったので、宴会する分には問題がないだろう。



「……みんなのお陰で、このエリアの掌握が完了した。システムの再構築が終われば、新しい日々が待っている筈だ。これからも色々苦労掛けると思うが、今はそのことを忘れて、大いに楽しんでくれ。乾杯!」


ターミナルから離れた場所にある広間にみんなを集め、飲み物がいきわたったところで、俺がそう挨拶をする。


後は無礼講だ。みんな大いに楽しんでほしい。


「ねぇ、ソーマ。ビャクレンが起きたら……その……。」


「あぁ、まずはクリムの進化が第一優先だな。楽しみにしてるぜ。」


「……うん……でも少し、怖い……かな?」


「大丈夫だ。俺がついている。俺がいて悪い結果になんかさせないから。危険があるようなら、危険がなくなるまで進化させないしな。」


「うん、信じてるよ。」


俺とクリムは、目の前で騒ぐノッカーたちを眺めながら、これからの事を話すのだった。


ご意見、ご感想等お待ちしております。

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