ハーレム王の切実な問題 6
ターミナルの住人が増えた。
ついこの間までは俺とクリムの二人っきりだったのに、今、この遺跡の中は150人を超える住民がひしめいている。
正直言って狭い。
『……制御を完全に取り戻せば……って、ちょっと、そこっ!勝手に触らないでくださいましっ!』
ビャクレンも大変そうだった。
増えた住民はノッカー。新しい技術に目がない、新技術の為なら、悪魔に魂を売ることさえ厭わない職人肌の種族だ。
お陰で、ターミナルの設備もあちこち弄られていて、ビャクレンがその都度対応しているが困っているのが丸わかりだった。
「とりあえず、ノッカーたちには何か仕事を与えてやったほうがいいと思うんだが?」
『そうですね。幸いにも上層が解放されていますので、そちらに住居を移して頂いて、まずは住む場所を確保してもらう事を指示しているのですが……。』
ビャクレンがため息をつくイメージを見せる。
下層も解放したことで、ターミナルの権限のかなりが解放されたらしく、色々出来るようになったらしい。
今目の前のスクリーンに生前?のビャクレンの顔が映し出されているのもその開放された機能の一環らしく、マスターである俺やクリムとの意思疎通するのには、このほうがいいらしいとのことだった。
俺達にしてみても、ただの機械っぽいものと話をするより、スクリーン越しでも、顔を見て話す方が話しやすいのは確かなのだが、ビャクレンの顔を見ていると、時々胸が痛むのが問題と言えば問題だった。
かといって、別の顔でビャクレンの声でしゃべられても、それはそれで違和感があって困るのだ。
『とにかく、基本ノッカーたちには、上層に住んでいただき、後程、下層に作業場を作りますので、そこで必要なものを製作してもらうつもりです。』
ビャクレンの言葉に、俺は頷いて了承の意を伝える。
『後、マスターには、出来ましたらこの調子で、ドワーフ族やノーム族を拐かしてきていただきたいです。』
「言い方っ!それに同じ拐かすならエルフの女の子とか、妖精族(ただし人間大)の女の子とか、天使族の女の子とか夜魔族の女の子とか、とにかく女の子がいいんだっ!」
『マスターは贅沢ですねぇ。』
「ほっとけっ!」
因みに、ビャクレンがドワーフとかノームと言ったのには意味があり、ドワーフ族がいれば周辺の鉱脈の開発が出来る上、武器や防具、拠点防衛の設備などの開発が進められるからという理由があり、ノーム族がいれば、この祭壇遺跡周辺の拡張が可能になるとのこと。しかも、両族ともノッカー族との相性が素晴らしくいいらしく、相互協力によって、2~3段階上の技術が発展することも可能らしい。
この先の事も考えれば、是非とも仲間にしておきたい種族とのことだった。
俺はビャクレンに「考えておく」と伝えて、その場を後にした。
今は、どこにいるかもわからない種族の事より、重要な事がある。……南側のサブシステム室の開放についてだ。
ターミナル遺跡の殆どの権限を掌握したビャクレンによれば、南側のサブルームには、ボスクラスのトロールが占拠しているという。
ターミナルルームと隔てている障害を取り除けばすぐにでも襲い掛かってくるだろう、とのことで、俺達が攻めに行くまでは、障害はそのままにしてある。
つまり、障害を取り除いたら、素早くサブルームに飛び込み、即戦闘に入るという事なので、あらかじめ準備をしておく必要があった。
こちらの戦力は、俺とクリム、そしてノッカーのカシムだ。
相手は体力自慢のトロールで、生半可な攻撃では、ロクなダメージを与えることは出来ない。
そう言う相手には魔法で攻撃をするのが一番なのだが、クリムの魔法では、そのサイズさゆえに、あまりダメージを与えられなさそうだ。いいところ牽制に使える程度と考えておくのがいいだろう。
だから俺は、少しでも力になれば、と思い、ゴブリンシャーマンの魔石を取り入れることにした。
しかし、地獄の苦しみを乗り越えて得られたのは、チャッ○マンいらず、といった程度に点火が出来る魔法を得たのみだった。
人間族は魔法を殆ど使えないというこの世界では、この程度の魔法でも称賛されるらしいのだが、現実に役に立たないのでは意味がない。
そしてノッカーのカシムは、短剣を使うことが出来るが、基本的に各種魔道具を使用して戦うタイプで、どちらかと言えば俺のスタイルと被っていることが多い。
……女の子が増えたら、即パーティから外して二軍落ちだな。
俺は密かにそう心の中で誓った。
この状況下ではトロールに勝てそうにもない。どうすればトロールを倒すことが出来るのか?それが現在、俺を悩ます問題だった。
◇
「カシム、どんな状況だ?」
「はッ、言われたものは80%ほど完了していますので、現在作業員の半分を他の作業に回しております。」
「そうか、どれぐらいで仕上がりそうだ?」
「あと1日ですね。現在の素材のストックからしても、それで打ち止めです。」
「そうか。……では、作業人員の半分を素材採集に回せ。残った半分を更振あっつに分けて、メインの作業とその他の作業に。振り分けは任せる。」
「分かりました。その様に指示いたしましょう。」
「そして、明日の昼、戦闘開始だ。お前は今日は早めに休んで体調を整えておけよ。」
「はっ、了解でありますっ!」
俺はそう指示を出した後、システムのメインルームに入る。
そこではクリムがビャクレンに何か相談していたようだったが、俺が入った途端、隠すように話題を止める。
「どうしたんだ?」
「何でもないの。女の子同士の内緒の話だよ。」
「そうですか。」
俺はそれ以上深くは聞かないことにする。こういう場合、深入りしたらドツボに嵌るのだ。
「それより、明日の昼、サブルームに突入する。」
「必殺へーき、だっけ?もうできたの?」
「8割がたな。明日の昼までには出来る筈だ。」
「んー、あの手のひらサイズのゴーレムが必殺へーきって言われてもピンとこないんだけどなぁ。」
「サイズが問題じゃない。数が必要なんだよ。」
「あっ、知ってる。『戦いは数だよ、兄貴っ!』ってやつだよね。」
「……まぁ、そう言う事だ(なぜそのネタを知ってる?元16歳)数を揃える為にも、サイズは小さくせざるを得なかったんだ。素材には限りがあるしな。」
俺がカシムたちに指示したのは、ゴーレムを100体以上、出来れば200体用意することだった。
カシムは最初、3mクラスのゴーレムを作ろうとしていたが、ターミナルに確保してある金属素材では、そのクラスのゴーレムだと10体程度しか作成できないことが分かり、急遽サイズを小さくした。
しかし、その事がカシムたちの混乱を招いた。
戦力として数が必要というのは分かるが、3m級のゴーレムならともかくとして、命じられた手のひらサイズのゴーレムでは役に立たないのではないか?と。
実際、そのクラスのゴーレムであれば、ノッカーたちでも容易に倒せる程度の力しかなく、だったらノッカーたち全員が戦いに赴いたほうが戦力になるのでは?と言い出す者もいた。
それらの疑問や不満を抑え込み、とにかくゴーレムを作らせ続けて3日。ようやく数が150体を超えようとしていた。このペースであれば、明日の昼までに200体は無理でも、180体程度までは揃えることが出来るだろう。
俺はターミナル内の保管ボックスの中に陳列されたゴーレムたちを見て、そう思った。
「で、そのゴーレムちゃんに戦わせるの?すぐ蹴散らされそうなんだけど?」
「まぁ、結果は観てのお楽しみってやつさ。クリムには巨大ゴーレムを作ってもらって、トロールを抑え込んでもらう。そうしたら後は観にゴーレムたちが倒してくれるのさ。」
「そううまくいくのかなぁ?」
クリムは懐疑的だ。まぁ、ノッカーたちでも余裕で倒せる身にゴーレムだ、そう思うのも仕方がないだろう。
しかし、クリムも言ったように、戦いは数なんだよ。それを明日証明して見せる。
「うん、わかった。こういう時はこういうんだよね?『見せてもらおうか、ミニゴーレムの性能とやらを』」
「……ま、まぁそうだな。(だから、何故そのネタを知ってるんだ16歳っ!)」
「で、終わった後、ソーマはこういうんだよね?『ふっ、認めたくないものだな、己の若さゆえの過ちというものを』って。」
「それ、負けフラグだからっ!(だから何でそのネタを……って、もういいです)」
俺はクリムとの会話にどっと疲れを感じ、早々に寝室へ引き籠ることにしたのだった。
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