ハーレム王の切実な問題 5
「……そもそも、この世界の根幹にあるものというのはだな……。」
ふわぁぁ……。
「おい、人間!ちゃんと聞いておるのか?」
「はいはい、きいてますよ。マナが重要って話ですよね。」
「その通りじゃ、最初にマナありき。神々は創世の時代に『マナよ光を照らせ』と命じ……。」
目の前で、小柄な老人が講釈を垂れている。
彼はノッカーという種族だそうだ。
彼の話では、ノッカーという種族は知的好奇心が強く、手先が器用なため、様々なものを作り出すことに喜びを見出している者が多いのだそうだ。中でも、道の創作物には目がないらしく、その未知なるものを解析すること、未知なるものを作り出すことに生涯をかけている者は少なくないらしい。
俺達が上の階層の制御室をすべて解放したことで、ターミナルは、下の階層に続く道を塞いでいる障害を取り除くことに成功した。
そして、やってきた魔力溜まりに繋がるマナ制御室。
俺達はそこでも戦闘が発生すると身構えていたのだが、扉を開けると、そのにいたのは、目の前にいる老人に指揮されて、制御室を調べていたノッカーたちだった。
そして、俺達の姿を見つけたノッカーの指導者が、いきなり講釈を垂れ始めて、今に至る……という訳だった。
「くぅー……。」
可愛らしい寝息を立てて横になっているクリム。彼女は、老人の講釈が始まって、3分と絶たないうちに、睡眠を司る精霊ヒュプノに、楽園へと誘われ……いや、詩的な表現はやめよう。要は居眠りをしている。
そして俺も、瞼の上と下が熱烈なラブコールを送り一つになりたがっている……。
いや、この話が始まって2時間半、そろそろ疲れが出て来ても仕方がないと思うんだよ。
「あのぉ、お話はよく分かりました。しかしですねぇ、ここのシステムは私の管理下の元にありまして……。」
「なんじゃとっ!これほどのものをすでに支配下に置いておるというのか?ウムぅ……。」
「ですからね、とりあえずは、管理をこちらに任せてもらって……。」
「しばし待て。」
俺の言葉をさえぎって、老人は他のノッカーたちを集めて、何やら相談を始めた。
俺はそれを眺めながら、何とか平和的に話し合いを済ませたいと考えていた。
老人は人の話を聞こうともしないが、別にこちらに対しての敵意はなく、単にここを調べたいだけというのが、先程までの感じからしてよくわかった。
他のノッカーたちからも、技術者特有のオーラを発しているのがよくわかる為、力づくで排除したいとは思えなかった。
それに何より数が多すぎる。ここに居るだけでも50人は超えているだろう。下手すれば近くにもっと潜んでいるかもしれない。
一人一人はとるに足らない相手だとしても流石に50人100人と集まれば、無視できない戦力となる。
さらに言えば、彼らはモノづくりに長けているというので、どのような道具が飛び出すか分からない怖さがある。
だからこそ、俺としては友好的なうちに立ち去ってもらいたいと考えていたのだが……。
「人間よ、御主名は何という?」
話がまとまったのか、ノッカーの老人がそう聞いてきた。
「俺の名か?ソーマだけど。」
「ウム、ではソーマよ。我らはお主と契約を結ぼう。我らが汝の力となる代わりに、汝も我らに野望に力を貸せ。」
「お前らの野望ってなんだよ。」
「未知なるものを見つけ解析し創り出す事じゃ!手始めに、ここのシステムを解析したい。」
「まぁそれくらいならいいけど、ここのシステムに関しては、後で制御を司るビャクレンと相談してくれ。」
「よし、契約成立じゃ!」
老人がそう言うと、俺とノッカーたちを光の粒子が包み込む。
「無事契約が終了した様じゃな。」
光が消えると老人がそう告げる。
「カシムよ、これからはマスターの力になり、マスターの力を借りて一族を繁栄させよ。」
「はッ!長の最後のご命令、しかと承りました。」
カシムと呼ばれた、他の⒨の立ち寄り一際大きいノッカーが進み出て、老人に頭を下げたかと思うと、その姿が急に掻き消える。
「今のは?」
「なんじゃ、御主、召喚の契約を知らんのか?」
「いや、知らないというか……。」
……そう言えばビャクレンが以前何か言ってたような……。
俺はその時の事を思い出すと、いつの間にか手にしていた石を見て、すべてを理解する。……と言うか頭の中に情報が流れ込んで来た。
「その名はカシム……召喚!」
俺は頭の中に流れ込んできた情報をもとに召喚の呪文を唱え、召喚石を投げる。
すると、その先で、先程消えたカシムの姿が現れる。
「マスターの命により参上いたしました。今後、我らノッカーの一族は、マスターソーマの力となりましょう。」
「あ、あぁ。よろしく頼む。とりあえずは今の作業を中止して他の者達と一緒に待機していてくれ。」
「はッ、承りました。」
カシムはそう言って、ノッカーたちへ次々と指令を出していく。
「ウム、どうやら大丈夫そうじゃの。」
その様子を眺めていたノッカーの老人は満足げに笑みを浮かべながら頷いている。
「で、ご老体はこれからどうするのだ?」
「儂か?儂は十分長く生きた。寿命も迫っておるでのぅ。残された命を前途ある若者の為に使うことにしたのじゃ。」
「それはどういう……?」
「つまりじゃな、ソーマよ、御主が儂を取り込むのじゃ。儂の知恵と経験、力を全てくれてやる。お主はその力で、新しきものに挑戦していくのじゃ。」
「は? ちょ、ちょっと、まてよ。」
「えぇぃ。つべこべ言わんと儂を取り込むがよいっ!」
「だから、何が何だか……むぐっ!」
老人はいきなり飛びかかってきたかと思うと、その姿が小さな魔石となり、反論をしようとした俺の口の奥へと飛ぶ込んでくる。
俺はあまりにもいきなりの事に、反射的にその魔石を飲み込んでしまった。
「グっ……うグゥッ……ぐガァッ……。」
襲い来る痛みと苦しみ。喉が張り裂けそうな痛みを堪えると、激しい頭痛に襲われる。
そのまま頭を壁に叩きつけたい衝動にかられ、それを必死に抑え込んでいると、今度は激しい腹痛と、絶え間ない嘔吐感に襲われる。
その後も、体中の様々な部位からの痛みを堪え、耐え忍んでいるうちに、徐々に痛みと苦しみが引いていく。
「クゥ……酷い目にあった。」
ようやく身体が落ち着いたところで、以上がないか確認していると、頭の中に新たな情報が流れ込んでくる。
ノッカーの力を取り込んだことにより、ノッカー特養のスキル、クリエイトとエンチャントが使えるようになった……らしい。
「んー……。……おはよ、ソーマ。」
俺がしばらく座り込んでいたら、クリムが目覚める。
クリムは、目覚めるとともに、俺の肩に乗り、その頬にチュッと口づけをする。
クリム曰く、おはようのキスらしい。
「で、どうなったの?」
訊ねてくるクリムに、俺は今まで起きた事を話してやる。
「ふーん、つまり、ソーマは若い男を支配したけど、おじいちゃんに無理やりヤられたって事ね。」
「違うっ!」
「違うの?」
「……違わないけど言いかたっ!」
俺のそんな反応を見て、ニマニマするクリム。
クッソぉ。お前が大きくなったら覚えていろよ。
俺は、そんなクリムに、色々することを心に誓い、とりあえずはその場の収拾に努めることにした。
カシムの話によれば、カシムたちの一族は150人ぐらいいるらしく、ここに居るのは、その一部とのことだった。
世界の崩壊によって集落が壊滅したノッカーたちは、一族で落ち着ける場所を探して旅をするうちにこの場所に辿り着いたそうで、その中でも精鋭50人が偵察という事でこの遺跡の中を探索していたらしい。
俺はカシム以外の他のノッカーたちに置いてきた一族を集めてくるように指示をし、カシムは俺達についてくるように命じる。
とりあえずターミナルに戻って、ビャクレンと相談しよう。
150人からなるノッカーたちを養うのはかなり大変かもしれないが、彼らの知識や技術力、何より、それだけの頭数は、十分な力となることは間違いない。
後は南側のサブシステムを掌握すれば、この遺跡とその周辺は管理下に置くことが出来るので、ノッカーたちの住む場所を用意したり、必要な素材を集めたりすることも出来るようになるはず。
それに何より、拠点整備のために人ではいくらあっても足りないので、そういう意味でも、ノッカーたちの協力が得られるのは良い事だと思う。
いきなりの出来事ではあったが、結果として得るものが多かったと、ここは喜ぶべきだろう。
俺がそう考えると、あの老人が『計画通り』と、ニヤリと笑った気がした。
いつの間にか8千PVを超えていました。
これも皆さんのおかげであります。
100話に辿り着くのと1万PVを超えるのと、どっちが早いか、今から楽しみです。
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