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ハーレム王の切実な問題 4

ガンッ!ガンッ!


大剣が振り降ろされ地面にめり込む。


しかし、それを気にした風もなく、軽々と大剣を持ち上げ振り下ろすゴブリンキング。


……それって、大剣というより、斧の使い方だろ?


俺はその剣を躱しながらそんな事を考え、さらにはこれからどうしたもんかと考える。


俺の力では、あの大剣をまともに受け止めたり、受け流したりすることはできない。圧倒的な力の差がありすぎる。


かと言って遠距離からの攻撃手段があるわけでもない。


……コレ詰んでるんじゃね?


あとは、クリムが雑魚を片付けるまで、キングの興味を引き付けておいて、クリムの手が空いたら、フレイムジャベリンでチクチク削っていくしかない………ウン、無理だな。


持久戦になれば、体力のない俺たちのほうが圧倒的に不利だ。


……でも、やれるだけやってみるさ。


何と言っても、コイツを倒さないことにはクリムとエッチが出来ないのだ。


俺は剣を避けながら革袋から小瓶を取り出し投げつける。


ガシャッ!


投げられた小瓶は、ゴブリンキングの肩に当たり砕け散る。


中に入っていた液体が、とろ~りと流れ落ちるが、ゴブリンキングは気にした様子も見せず、俺めがけて大剣を振るう。


俺はそれを躱しながら次々と小瓶を投げつけていく。


どれくらい続けただろうか?気付けば、ゴブリンキングの体表は液体まみれになり、ヌメッとテカっている。


そしてヤツの足元には、滴り落ちた液体溜まりが出来ていて少々動きにくそうにしていた。


「チッ、これが最後かよ。」


俺は数多く用意していた小瓶の最後の一つを手に取り、ゴブリンキングの頭めがけて投げ付ける。


ガシャ!


ゴブリンキングの額に当たった小瓶が砕け散り、中の液体をぶち撒ける。


流石に顔が液体まみれになったのは不快だったのだろう。


雄叫びを上げながら、ゴブリンキングが迫ってくる。


「クリム、頼んだっ!」


「はーい……フレアアロー!」


背後からクリムが火の矢を放つ。


俺が火矢を用意して射るつもりだったが、丁度クリムの手が空いたみたいだったので任せたのだ。


クリムが放ったフレアアローは、オークキングから見れば、取るに足らない小さな火の矢だった。


オークキングも同じように考えたのだろう。さして気にも留めずにそのままツッコんでくる。


しかし俺にとってはそれで十分だった。フレアアローは、俺の狙い通りに、ゴブリンキングの身体に触れると、大きな炎を上げて燃え広がる。


「もう一つ行くねぇ。」


クリムが、さらに追加の炎の矢を、今度はゴブリンキングの足元に放つ。


炎の矢は、足元に広が九会期待に火をつけ、赤々と燃え広がった。


「うーん、このままだと延焼しちゃうよね?じゃぁ、これはおまけだよっ!」


クリムが三度魔法を放つと、オークキングの周りに土壁が盛り上がり、火だるまになっているオークキングを取り囲む。


「おーい、空気穴はあけておけよ。じゃないと折角の火が消えちゃうからな?」


「ん、わかった。」


クリムはそう言いながら魔力を操作して、土壁を変形させ、蓋をする。中でオークキングが暴れているのか、時々壁が揺れるが、崩れる様子はない。


「後は蒸し焼きになるのを待つだけか。」


俺はクリムの魔法の結果を見ながらそう呟く。


俺はここまでの事は想定していなかった。ただ、燃えやすいオイルまみれにしたオークキングに火を点けて、火だるまにして弱らせようと考えていただけだったのに、何故かクリムは、俺の考えを飛び越していってしまった。


……まぁ、結果として楽できるからいいんだけどね。


俺はそう思いながら、クリムだけは怒らせないようにしよう、と改めて誓うのだった。



「そろそろいいか?」


俺は、土壁が動かなくなり、中から出ていた生命反応の気配も感じなくなったところで、クリムに言って土壁を壊させる。


土壁が鳴るなると、中にあったオークキングの巨体が、目の前に倒れ込んでくる。


そして、その巨体を光の粒子が包み込み、やがて消え失せる。


後には、みどりがかった黒い大きな魔石と、オークキングが持っていた大剣だけが残されていた。


「後は、この制御室のスイッチを入れるだけだな。」


俺はそれらを拾い上げながら呟く。


「ねぇねぇ、ソーマ。」


「ん、なんだ?」


制御室のスイッチを入れる作業をしていると、クリムが話しかけてくる。


「いくつかね、変わった色の魔石が残ってたんだけど……食べる?」


「食べ……っと、とりあえず、見せて見ろ。」


食べるか、と言いかけて、途中で思い直してその魔石を調べることにする。


クリムが食べるか?と聞いてきたのも、俺が思い直したのも意味がある。


ターミナルで調べたところによれば、力ある魔物が残した魔石の中には、生前の力を宿した物もあって、それを取り込むことでその力を得ることが出来るらしい。


もっとも、それは魔物間での話であって、脆弱な人間では、その力を得る前に、魔石に含まれた力によってその肉体が弾け飛ぶので、普通の人間が魔物の力を得ることは殆ど不可、とのことだ。


しかし、以前アンジェの魔石を取り込んだ俺には、魔石を取り込む下地が出来ているらしく、余程格が離れていない限り、大丈夫とのことだった。


実際、その情報を得た後、以前集めた魔石の中からいくつか選んで取り込んだことがあった。


取り込む際は身体が壊れそうなくらいの痛みが伴ったが、その痛みが通り過ぎた後、全体的な力が底上げされた感覚があり、ついでに『ゴブリンパンチ』と『コボルトキック』といったスキルが使えるようになっていた。


もっとも、二つとも碌に役に立たないスキルなので使っていないけどな。


「どれどれ……。」


俺はクリムから手渡された魔石を鑑定してみる。


正確に言えば、俺が鑑定するのではなく、俺の腕輪についている魔石を通してターミナルが鑑定するんだけどな。


「ふーん、これがゴブリンシャーマンの魔石で、この薄いピンクがかった物がゴブリンプリンセスの魔石、そしてこの一回り大きいのがホブゴブリンの魔石かぁ。」


クリムが集めた魔石の中で、問題の魔石は5つあった、薄く赤みがかったゴブリンシャーマンの魔石が3つと、鈍色のホブゴブリンの魔石、そして薄ピンクのゴブリンプリンセスの魔石だ。それぞれ魔力の増大、体力の増大、そして生命力の増大の効果があるらしい。さらには、シャーマンの魔石の中の一つは火属性魔法の、ゴブリンプリンセスの魔石には催眠のスキルが眠っているとのことだった。


「うーん、今わかるのはこれだけだな。」


俺は鑑定結果をクリムに教える。


「そうなんだ。……ねぇ、催眠のスキルって面白そうだよね?」


使いたいなぁ、とねだる様に上目使いに見てくるクリム。


「今はやめておけ。身体が持たない可能性もあるし、ターミナルに戻って詳しく調べてからにしたほうがいい。」


俺はそう言って、魔石をすべて革袋の中へしまう。


この革袋はターミナルで製作したマジックアイテムで、革袋の中とターミナルの保管庫がつながっている。……つまり中に入れたものが、そのままターミナルの保管庫に入り、また、ターミナルの保管庫に入れておいたものが取り出せる、といった優れものだ。


現在それ程の容量はないが、ターミナルの制限が解除されていけば、それに伴って大幅な改良が出来るという。


「……これで良し。と。後はもう一つの制御室だな。」


「うん、こっちにこれだけの魔物がいたんだから、向こうも同じぐらいいると考えたほうがいいよね?」


「あぁ、そうだな……。アイテムもかなり使ったし、一度戻ったほうがいいか?」


俺達は通路を歩きながらこの先についての話をすすめていく。


結局、一度制御室の様子を見てから、戻るかどうかを決めることになった。

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