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ハーレム王の切実な問題 3

「いいか、開けるぞ?」


「うん、こっちはいつでもOKだよ。」


「じゃぁ、……せぇのっ!」


俺は制御室の扉を思いっきり開く。


どぉぉぉぉんんっ!


扉を開くと、中から爆風が俺たちに襲い掛かる。避ける間もなく、あっという間に俺たちの身体を爆風と爆炎が包み込む。


「ぐぎゃ?」


「ぎゃぎゃっ!?」


勝利を過信したのか、ただの様子見なのかわからないが、中からゴブリン2匹が出てくる。


そこに俺たちの姿がないのを見て、にまぁと気持ち悪い笑みを浮かべる。きっと俺たちがさっきの爆風で跡形もなく吹き飛んだと思ったのだろう。


俺は、気配を消したままその背後に忍び寄り、口を押えてその喉を掻き切る。


その間に、もう一匹を、クリムが電撃を浴びせて動けなくしていた。


俺はこと切れたゴブリンを音が立たないように静かに床に寝かせると、もう一匹の動けないゴブリンにとどめを刺しておく。


そして、俺たちは気配を消したまましばらくその場で待機する。


(さすが、ソーマ、よく考えたよねぇ)


(これも、お前の魔法があってこそだよ……っとまた来るぞ)


俺が取った戦術は、何も難しいことではない。あらかじめ、扉の前に、クリムが土魔法で作ったゴーレムを出しておいて、そこに幻術で俺たちの姿を被せる。


そして俺たちは気配を消して扉を開ける。


この開ける瞬間が一番危険ではあったが、横から開けたために、飛び退くだけの余裕があったのが幸いした。


中の奴らから見れば、扉を開けた途端。目の前の俺たちがはじけ飛んだように見えたはずだ。


だから、さっきの2匹は、俺たちが肉片になっているのを確認するだけのつもりだったと思う。


しかし、その外に出たゴブリンたちが戻らないのを気にしたのか、今度は3匹のゴブリンが様子を見に部屋の外へ出てくる。


まだ、先ほどの爆風のおかげで、視界が晴れず、俺達の姿を隠してくれているのが幸いしている。


部屋から少し離れたところをクリムの電撃が襲い、ゴブリンたちをバタバタと倒していく。


俺はその動けなくなった奴のとどめを刺していくだけの簡単なお仕事だ。


視界が通らなくても、扉が開いているおかげで、中の気配はわかる。


中にはあと20匹ほどのゴブリンがいるのだが、その中でも少し気配の違う奴が何匹か混じっている。


そのうち、魔力量が大きいものが3匹……多分、ゴブリンシャーマンで、先ほどの爆風はこいつらが放ったに違いない。


他に、少し気配が強いものが数匹。ホブゴブリンだと思われる。


そして、他のゴブリンたちより圧倒的な存在感を放つ個体が1匹いる。


おそらくだが、ゴブリンジェネラル……ひょっとしたらキングかもしれない。


とにかく、この個体がこの群れのボスであることは間違いなく、このボスの指揮下のもと、ある程度統制の取れた動きをしてくるのは間違いないだろう。


出来れば、ホブゴブリンを含めて、あと4~5匹は、出てくるところを奇襲したいのだが。


「……そううまくはいかないようだな。」


中の気配が変わるのが分かる。


今まで、雑多な気配だったのが、張り詰めて整然とし始める。


そして、室内の魔力が僅かではあるが増大した感じが流れ出してくる。


「クリム、敵は中で迎撃態勢を取っている。シャーマンがいるらしく、魔法攻撃もあるからな。」


「うーん、ちょっと厳しい?」


「だからな……。」


俺はクリムに、手早く作戦を伝える。


「うん、わかった。やってみるよ。」


「クリムのタイミングで始めてくれ。俺が合わせる。」


「了解。・……いっくよぉ、クリエイトゴーレムっ!」


俺がたてた作戦は、作戦と言えるほどのものではない。ただ、クリムにゴーレムを作らせて部屋の中に突入させる。


俺はそれに紛れて、気配を消したまま部屋に入り、気づかれるまでの間にできるだけ多くのゴブリンを背後から攻撃する。ただそれだけだ。


それだけなのだが、意外とその作戦は功を奏した。


クリムがゴーレムを作る合間に、火炎弾の魔法を見境なくぶっ放してくれたおかげで、舞い上がる爆炎と。ゴーレムたちが動くことによって起きる土煙が視界を狭めてくれているので、俺の奇襲に一役買っていた。


ここがターミナルのある部屋のように、謎金属で覆われていなかったことも幸いした。


入り口近くのためか、自然の洞窟を利用しているため、床や壁が土になっているからこそ、今の状況が作り出せているのだ。


俺は、一番危険なシャーマンに狙いを定め、その首を掻き切っていく。


クリムの魔法の援護がなければ、ここまでうまくはいかなかっただろう。


そして、次の獲物に狙いを定めたところで、俺は殺気を感じてその場を飛び退く。


俺がさっきまでいた場所に大きな剣が振り下ろされた。


ひゅー、あぶねえ。一歩でも遅かったら、今頃人生終わってたかもな。


ロリ女神からもらった、俺の不老不死の能力は、世界が変わってしまったことにより変質してしまった。


もともと、俺の不老不死は、ラーニングとリバースというスキルの応用だったわけで、完全な不老不死ってわけだはなかったのだが。


で、その変質したスキルを何とか使えるようにと、ターミナルに色々仕掛けてくれたのがあのロリ女神。


……ふんっ、だからと言って感謝なんかしてやらないんだからね。


……などとツンデレっぽく言ってみたら、クリムだけでなくターミナルのビャクレンまでもがドン引きしていたのは、また別のお話。


とにかく、ターミナルの間にいる間は、ラーニングが常時発動していて俺の現状を監視していて、俺の生命活動が止まると同時にリバースが発動する。


ここまで見れば依然と変わってないように見えるが、問題なのは、リバースもラーニングも、ターミナルを介しているということ。


つまり、俺は死んだら、ターミナルに戻されて復活。しかもその状態は最後にターミナルを出る直前の状態になる。


簡単に言えば、ターミナルで自動セーブされて、死んだら、そのセーブしたところからのやり直し、というわけだ。


だから、俺は死んでしまうと、ターミナルを出てからの記憶が一切ないということになる。


それって、本当に俺なのだろうか?という疑問がない訳でもなく、ただ言えるのは、うかつに死ねなくなった、ということだ。


もっとも、普通の人間は死んだらそこでおしまいなので、それよりはマシなのかもしれない。


……っと、今はそんなことを回想している場合でもなかった。


俺は、再度迫りくる大剣の刃を躱す。


剣を振るっているのは体長3mはあろうかと思われる巨大ゴブリン。


「クリムっ!キングがいるっ!」


「わかったっ。こっちは任せてっ!」


キングがいる、という一言で俺の言いたいことが伝わったらしく、心強い返事を返してくれる。


視界が晴れてきた制御室の中を見回すと、3匹のホブゴブリンはそれぞれ、クリムの作り出したゴーレムと互角の戦いを繰り広げている。


残ったゴブリンの数は10匹にも満たたないが、それらは、クリムに翻弄されながら確実に1匹づつ倒されている。


この様子であれば、任せても大丈夫だろうと思い、俺はゴブリンキングに向かい合う。


どちらかと言えば、ピンチなのは俺の方だった。


……クリムぅ、早くゴブリン片づけて加勢に来てくれぇ。


俺はそんなことを心の中で叫びながら、ゴブリンキングの繰り出す大剣を躱し続けるのだった。



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