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ハーレム王の切実な問題 2

『クリム様が進化すればいいのです。』


俺はビャクレンの声でそういうターミナルを見ながら、何言ってんだコイツ?と考えていた。


クリムが進化?わけわからん。


「あー、何だ。詳しい説明を求む。」


『……分かりました。少し長くなりますがよろしいでしょうか?』


「……クリムに理解できるなら、多少長くてもいいぞ?」


『……無理言わないでください。』


「ちょっとぉ、どういう事よぉ。」


ターミナルの答えに、クリムがおこになる。


「とりあえず説明を頼む。……クリムは何だったら寝てていいぞ?」


「ぶぅっ!ちゃんと起きて聞いてるよっ!私のことでしょ?」


『えーと、説明を始めてよろしいでしょうか?』


俺とクリムの会話が長引きそうだと感じたターミナルが、そう割り込んでくる。


ビャクレンの意識がベースになっているせいか、最近、徐々に、人間らしくなってきているような気がする。


「あぁ、頼む。」


俺は、怒れるクリムを宥めながらターミナルにそう答える。


『では……。現在、クリム様はどのような状況におられるかご存じでしょうか?』


「えーと、ソーマの嫁?」


『……そういう意味ではありませんが……。とりあえず、今のクリム様は『ピクシー』という妖精族に属する魔物で、ソーマ様の使い魔という立ち位置にあります。』


「使い魔?」


『えぇ、召喚獣と申してもいいでしょう。新しく構築されたこの世界では、数多の魔物が跋扈しているわけですが、魔物の中にも意思疎通ができる種族が多数存在します。妖精族もそのうちの一つです。』


『そして、そのような種族とは、従属、脅迫、契約、交友……どのような手段でも構いませんが、縁を結ぶことにより力を借りることが出来ます。力を貸してくれる魔物は『召喚石』に姿を変え、マスターと常に一緒に行動し、必要な時には元の姿となって助けてくれるでしょう。』


「ちょ、ちょっと待ってよ。じゃぁ、何?私もその召喚石?になるってこと?」


『はい、マスターがそう望めば、ですが。クリム様のように常に存在し続けることは稀なことです。普通はマナが足りなくなるのですが、マスター及びクリム様の双方が膨大な魔力を有しているためにできる現象だと思われます。あと、女神の意志が大きく関与していると思われますので、ある程度の融通は利くのではないかと推測いたします。』


「うーん、そのあたりはよくわからないが、とにかく、魔物の中にも意思疎通が出来て仲間になるものがいる、そしてクリムもそのうちの一人だ、ということでいいか?」


『概ねその認識で構いません。』


「うー、なんか複雑な気分だよぉ。」


『話を戻しますが、それらの魔物の中には、大いなる力を秘めたものも存在しておりまして、様々な条件下のもと、その力が解放されることがあります。『進化』もその一つで、その在り様を変えることにより、さらなる力を行使できるようになると言われております。』


「で、その進化、とやらがクリムにも出来ると?」


『はい、クリム様は条件が整えば『ハイピクシー』へと進化することが出来ます。ハイピクシーは人間よりやや小柄な身体を持ち、身体が大きくなった分、ピクシーの時より機動力は落ちますが、代わりに体力、魔力が増大して、ピクシーの身体では耐え切れずに使えなかった中級以上の魔法を使用することが出来るようになります。戦力の強化とともにマスターのご要望にも沿うことが出来ますので、進化させないという手はありません。』


「そうだな。で、その進化というのはすぐできるのか?」


『条件がそろっていれば。しかし、その条件を確認し、進化を促すシステムが、現在封印されております。解除するには、サブシステムをコントロールしているエリアの開放が必要となります。』


「サブシステムエリアか……。どこにあるんだ?」


『このフロアのすぐそばです。隣接した南の部屋を解放すれば必要なシステムの制限を解除できるのですが、そのためには、外郭に通じる上のフロア2か所、下の階層でマナ溜を管理する場所を含めた2か所、計4か所を解放しないと、南側へ続く通路を封じている障害を取り除けません。』


「つまりは全部解放しないといけないってことか。」


『そういうことです。南のシステムが解放されれば、進化に関することだけでなく、様々な機能が解放されるので、マスターの頑張りに期待します。』


「おぅ、任せておけ。」


『あと、魔物を倒した時に出てくる魔石の中で、色が濃かったり鮮やかだったりするものは処分せずに持ち帰りください。また、交渉などで、召喚石にできる魔物は、現在のマスターでは、クリム様を除いて4体までですので、お気を付けください。』


「と言われてもなぁ。」


俺は今までに出会った魔物を振り返る。


虫やゴブリン、コボルトにネズミ、あとは蝙蝠か……。うん、別に仲間にしたいとは思わないな。


それより、せっかく仲間にするなら、クリムみたいな女性型の魔物(ただし、人と同等のサイズ)限定にしよう、うんそうしよう。


俺がそう決意を固めていると、クリムが冷ややかな視線を送ってくる。


「……なんかねぇ、ソーマが今考えていることがわかっちゃったよ。……ないわ~。」


クリムはそういい捨てて、プライベートルームに使用している小部屋へと姿を消す。


……いいじゃないか。ハーレムを作るのは俺の夢なんだからさ。


「ところで……。」


俺はクリムがいなくなったのをいいことに、ターミナルに、女性型の魔物についてのデータを出させるのだった。



「さて、まずは右から行くか。」


俺たちは、ターミナルのある階層から一つ上、外界へと繋ぐ扉のある階層へとやってきた。


目指すのは東西の2か所のフロア。共に、外へ通じる扉を制御するシステムがあるらしい。


つまり、ここのシステムを制御下に置けば、外界とのつながりをシャットアウトし、防御を固めることが出来るらしい。


いつ、なんどき、強力な魔物が入り込んでくるかわからないため、ここの制御を取り戻すのは最優先事項とのことだった。


俺たちが上がってきた場所から、左右のフロアまでは、ほぼ同距離のため、どちらからいってもいいのだが、なんとなくで右を選ぶ。


途中にある瓦礫の山をよじ登りながら進んでいけば、ほどなくして制御室の入り口の扉が目に入ってくる。


「ねぇ、ソーマ。なんかおかしくない?」


「あぁ、魔物の姿がない。」


ここに来るまでに、俺たちは一度も魔物と遭遇しなかった。


それだけでなく、下のフロアでは、必ずと言っていいほど、制御室の前の扉には、ボスともいえる強い魔物と、その取り巻きたちがひしめいていた。


それなのに、目の前の扉付近には魔物の気配がない。外界に通じる扉が近くにあるのに、おかしなことだと思う。


「考えられることは三つ……だな。」


「うんうん、それで一つ目は?」


「魔物たちが何らかの理由で、外に出て行った。その場合、俺たちは難なく制御を取り戻すことが出来るので、コレが一番理想だな。」


「だねぇ。それで二つ目は?」


「これもまた、何らかの理由で、魔物たちが逆の制御ルームの方へ集まっているという場合。この場合は、ここの制御は楽に取り戻せるものの、反対側で激しい戦闘が予想されるからなぁ。」


「うーん、それは困ったねぇ。で、三つめは?」


「……お前、自分で考える気ないだろ?」


「いいからいいから。それで三つめは?」


「……ったく。これも何らかの理由で、部屋の中に集まっている場合だな。この場合は、当然待ち構えているわけだから、扉を開けると同時に先頭に突入することになる。しかも、先手は向こうだから、かなり不利な戦いを強いられることになるな。」


「わぁ、かなりヤバいねぇ。ソーマの力で扉の向こうの気配探れないの?」


「……無理だな。さっきからやっているが、あの扉の防御のせいなのか、中にいる魔物の力なのかわからないが、扉の向こうの気配を感じることが出来ないんだよ。」


「わぁぉ……ピンチだねぇ。」


「……いや、この一戦一戦が童貞卒業の道だと思えば、これくらいどうってことはない。」


「いってることが恰好いいんだか情けないんだか……。」


クリムが頭を抱えて呻くのを横目に見ながら、俺はこの制御室攻略についての戦術を考えるのだった。



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