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ターミナルにて 1

祝!書籍化決定!

どぉーんッ!


大きな音を立てて、天井を塞いでいた瓦礫が崩れ落ちる。


すると、崩れた先から光が漏れているのが分かった。


俺は、崩れた瓦礫に足を取られないように注意しながら山を登っていく。


天井付近に着くと、俺がギリギリ通れそうな穴が開いていた。


「さて、この先には何があるか……。」


俺は気をつけながら穴をよじ登ると、丁度爆発のショックで身体を硬直させていた巨大ネズミと視線が合う。


巨大と言っても、子犬ぐらいの大きさなのだが、それでも、その大きさのネズミというのは、なんとなく不気味なものがある。


巨大ネズミは、俺を見た後、横にある瓦礫に目をやり、暫く逡巡した後去って行った。


「何か、あそこの瓦礫を気にしてたみたいだが……何かあるのか?」


俺はネズミが気にしていた瓦礫の方へ移動する。



「はぁー、やっと行ってくれたわ。だけど、あの音は何だったのかしらねぇ。」


そんな暢気な事を呟きながら瓦礫から這い出して来る小さな生き物。


「……妖精?ピクシーってやつか?」


その姿を見て思わずつぶやく。


「誰がピクシーよっ!この可愛いクリ……ソーマぁ??」


「何で俺の名を……って、その声、その顔……クリムなのか?」


「「何でそんなに小さく(大きく)なってるんだよ(のよっ)!!」」


俺達の声が重なる。それだけ、お互いの姿に驚愕していたのだ。



「はぁ、アンジェがね。……よしよし、泣かないの。このクリムちゃんがずっとそばにいるからね。」


そう言いながら俺の頭を撫でようとするクリムだったが、その身体の小ささのせいで、思うように撫でれず、四苦八苦している。


その姿を見ているだけで、俺の心がスゥっと軽くなっていく。


「しかし、何でピクシーなんだよ。」


「そんなの私に言われてもわかんないわよ。」


結局、クリムは俺の肩の上で落ち着いている。会話するにはその位置が丁度良かったのだ。


今のクリムの姿形は、以前のクリムと何ら変わりがない……身長が20㎝そこそこという事と、その背中に2対の羽がある事を除けばだが。


「俺はなぁ、上に行けばクリムが待っている、クリムと今度こそエッチをするんだって頑張ってきたんだぞ?」


少し前のしんみりした雰囲気を誤魔化すように、俺はあえてバカなことを言う。


「うーん、ご期待に応えたいのはやまやまなんだけどねぇ。いくら私がないすばでーとは言っても、ソーマのアレと身長が変わんないから。」


クリムもその思惑に乗ってくれたのか、そんな風に返してくる。


真面目な話、クリムの大きさでは、俺の息子を愛撫しようとしても、電柱にしがみ付いているような感じになって、何もできないだろうし、俺としても、そのクリムの言うナイスばでーを堪能しようにも、小指の先で突っつくのが関の山だ。こんな状態でエッチなどできる筈もない。


「まぁ、その事は後で考えるとして、ターミナル、だっけ?それ探そうよ。そこに行けば何とかなるんでしょ?」


「何とかなるかどうかは分からんが、他に目的もないしな。」


「あ、そうだ、ターミナルって言葉で思い出したんだけど、その辺りに赤い石落ちてない?」


「ん?どうしてだ?」


俺をそう言いながら、周りを探してみる。


「ん、私が覚醒する前にね、あのイケメンの声が聞こえたの。『赤い石は起動に必要』って。何の事か分からなかったから忘れてたんだけど、ひょっとして、起動に必要って、ターミナルの起動に必要って事じゃないかなぁって。」


「あー、あり得るよなぁ。」


俺はそう応えながら周りの探索を続ける。


暫く探していると、がれきに埋もれた赤い石を発見する。


「クリム、これじゃないか?」


「あ、うん、たぶんそう……。」


「……どうした?」


赤い石を目にした途端、クリムの元気がなくなったことに気付き、声をかける。


「ん、何でか分かんないんだけどね、その意思を見てると、胸が締め付けられるの……。」


「そうか……。とりあえず気にするなよ。」


俺は石をクリムの眼に着かないように革袋の中にしまい込み、方に乗ったくR無を軽くなでる。


「ん、ありがと。」


クリムは、俺の頬に体を預けてくる。


俺はクリムの体温を頬に感じつつ、ターミナルを探すため、辺りを調べ始めるのだった。



「やっぱり、この先が怪しいよな。」


俺は瓦礫でふさがれた通路の前に立ち、肩の上のクリムにそう声をかける。


「怪しいって言うか、この先一択でしょ?、他は、ただ崩れただけって感じで、道があるわけじゃなかったもんね。」


クリムもそう答えてくる。


あれから、俺達はこのフロアを調べ回った……と言うか、このフロアは元々行き止まりの小広間だったらしく、調べ回る、というほど広くもなかったので、あっという間に結論が出たのだ。


つまり、通路だった場所を塞ぐ瓦礫をどうにかしないと、どこにも行けない、という事に。


実際、その瓦礫の隙間から、ネズミが出入りしているのを発見し、クリムが後をつけて潜り抜けたことで、その瓦礫の向こうに通路が続いていることは確認できた。


「クリムの魔法で何とかならないか?」


「うーん、一度に吹き飛ばすのは無理ね。」


「となると……。このネズミが出入りしている穴を広げるしかないのか。」


瓦礫の隙間はいくつかあるが、その中でも、ネズミが行き来している場所が一番大きな隙間だった。


俺は、一気に穴をあけるのを諦めて、地道に通路を広げることにした。


複雑に絡み合い絶妙なバランスを保っている瓦礫……そこにクリムが魔法を放ち、ぞの絶妙なバランスを崩す。


そうして出来た隙間をF広げる縛、動かせる瓦礫を引き抜いてどけていく。


動かせる瓦礫が無くなったら、ふたタブクリムの魔法の出番だ。


そんな事を繰り返しているうちに、瓦礫の隙間は次第に大きくなっていく。


「クリム一人なら、潜り抜けれるのに、すまんな。」


俺は魔法を使うクリムにそう声をかける。


「私一人で向こうに行っても、何もできないし、ネズミ1匹すら倒せないと思うから、そこはお互い様よ。」


クリムはそう答えると、反対側から瓦礫を崩すべく、隙間の向こう側へと移動する。


「ネズミはいないか?」


「うん、大丈夫。気配はあるけど、近寄れないみたいよ。」


「そうか、でも、姿を見たらすぐに戻って来いよ。


「分かってる。」


俺とクリムは会話をしながらも瓦礫をどける手を緩めない。


「うぅー、おなかすいたよぉ。」


「頑張れっつ、もう少ししたら今日は終わりだ。そうしたら食事だ。」


「うー、食事って言ったってまた虫の脚でしょ?あれ不味いのぉ。」


「仕方がないだろ?他にないんだし。」


クリムも俺も、以前のバックを失っている為、用意していた食材など一切なくしている。だから、今現在の持ち物で食べられるものと言えば、俺が下のフロアで手に入れた虫型モンスターの脚しかなかった。


この脚は、甲殻の堅さから、何か武器に使えるかも?と切り取っておいたものであり、当時は空腹を感じなかったこともあって、まさかその脚肉を食べることになるとは思ってもみなかった。


クリムと合流して……と言うか、魔物と遭遇しなくなったことにより、ドレインを使わなくなってしばらくしたころ、俺も空腹を感じるようになった。


つまり、以前の俺が空腹を感じなかったのはドレインのおかげ、という事が証明された……と思う。


ハッキリと言い切れないのは、クリムと俺が合流したのは、クリムが覚醒してからそれ程経っていないと言ってたからだ。


おれやクリムが経験したあの白い空間での時間経過がどうなっているのか分からないが、同じ場所で、崩壊に巻き込まれた者同士、時間の流れにそれ程の差が出来ているとは考えにくい。


勿論、覚醒迄の時間に個人差があるだろうが、それを踏まえたとしても、俺とクリムの間で1週間以上の差があるとも考えられない。長く見積もったとしても4~5日が精々と言ったところだろうと俺は予測している。


話しはそれたが、とにかく、お互いに空腹を感じ、他に食べるものがない、とくれば、虫の脚肉に手を出すのも仕方がないと言える。


幸いだったのは、クリムの魔法のおかげで、水には困らない事、食材を火にかけることが出来ることなど、魔法の恩恵がかなり大きい事だ。


その事をクリムに伝えると、何故かブンむくれ、機嫌を直すのにしばらくの時間を要した。……ほんと、女の子は何を考えているか分からん。


「うぅ、この際ネズミでもいいよ。お肉食べたいぃぃ。」


「お前のその本音が駄々もれだからネズミも寄ってこないんじゃないか?」


俺はそう言いながらも、気持ちはクリムと同じだった。だから、この瓦礫を乗り越えることが出来たら、ネズミ狩りをしようと決意した。


「あれっ?」


「どうしたクリム、何かあったか?」


「あうん、大したことじゃないんだけど、さっきまで感じていたネズミの気配が、急に無くなったの。」


「邪魔しないように遠くへ行ったんじゃないか?」


俺は暢気にそう答える。


まさか、ネズミ狩りをしようと考えた時に漏れた殺気が、ネズミたちを震え上がらせ逃げ出すことになったとは、思いもよらないソーマだった。







前書きに書いた言葉を、エイプリルフールじゃないときに使いたいと切に願う今日この頃です。


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