ターミナルを目指して 2
あれから、俺の瓦礫撤去作業は続けられている。
地道で単調な作業の繰り返しなので、当然飽きも来る。
そんな時は、瓦礫の山を下りて通路をうろつく。すると偶に魔物と遭遇するので、地道な作業で溜まったストレスを奴らにぶつける。
お陰でそれなりの数の魔石と、武器やアイテムがそれなりに集まった。
とは言っても、現れる魔物の8割はコボルトで、他は大ムカデやジャイアントアントなどの虫系モンスター、稀にゴブリンが混じることもあった。
ゴブリンと遭遇したのは2回だけだったが、その時に、ナイフが計4本とロングソードが2本手に入ったのは大いに助かった。
瓦礫をどけるのに、ナイフや県で周りを削るのにも役立たし、何より、虫系モンスターと戦うのに県は必要だった。
まず、虫系モンスターの殆どは、その身体を固い甲殻でおおわれている。
その様な相手に対し、棍棒のような打撃武器は相性が悪いと言わざるを得ない。
実際、剣が手に入るまでは、何度も何度も同じ個所を叩いて、ようやく潰すと言った非効率極まりない戦い方をしていたので、大ムカデを倒すのに一昼夜かかることもあったぐらいだ。
それが、剣があれば、関節の弱いところを狙って切り刻み、その移動力を削ぎ、動けなくなったところをドレインでトドメ、というように、効率よく倒せるようになったのだ。
ただ、ゴブリンが出てくるようになったという事は、ゴブリンアーチャーやゴブリンシャーマンなどの遠距離攻撃が出来る奴らが出てくる可能性もあるという事なので、注意が必要になった。
「ま、それはいいとして、今はこいつをどうしようかって話なんだよな。」
俺の目の前で、必死に身振り手振りで何かを伝えようとしているコボルト。
しかし、俺には何が何だか分からず、かといって、いきなり殴りかかってこられても困るお出警戒を緩めることは出来ない。とは言っても、必死な様子のコボルトを問答無用で殴り倒すのもためらわれる。結局、様子見の膠着状態が続いている、という訳だ。
「まぁ、セオリーから言えば、命乞いをしているって事なんだろうけど……。」
しかし、相手も警戒はしているようで、武器を手放さない。それが膠着状態が続く理由の一つでもある。
「……いつまでもこうしていても仕方がないか。」
俺はひとつの決断をして、一歩前に進み出る。
すると相手は、ビクッとしたものの、武器を構える。……ただ、その顔には諦めの色が濃く出ている気がした。
だから俺は、武器を下げ、空いてる方の手で、シッシッと、追い払うゼスチャーをしてみる。
すると、コボルトは戸惑った表情を見せるものの、踵を返して走り去っていった。
……どうやら命乞いで正解だったか?
俺はコボルトがいた場所まで歩いていく。逃げ出す際、何かを落としていったように見えたからだ。
「ん?なんだこれは?」
コボルトが落としていったのは拳大の石だった。
ただの石ころじゃないのは、その外観が物語っている。
金属の様でもあり水晶の様でもある不思議な外観。色は紫がかった鈍色で、見ようによっては紫水晶の原石に見えなくもない。
とりあえず、俺はそれを革袋に入れる。
この革袋も、以前、コボルトが持っていたアイテムの一つだった。
中にはがらくたが詰まっていたので、それは全部捨てて、今は、倒した魔物たちが残した魔石や小さめのアイテムなどが詰まっている。
そんなに大きな革袋じゃないので、この不思議な石を入れると、それだけで、許容量が一杯になる。
「そろそろ限界かな。」
俺は、ベースにしている場所に戻ったら、革袋の中身を整理しなければ、と思うのだった。
◇
……俺がこの場所で目覚めてからどれくらいたったのだろう?
2~3日しか過ぎていない気もするし、もう1一ヶ月以上もこの場に留まっている気もする。
時間の指針になるモノがない為、どれくらいの時が経ったかが分からないのだ。
俺があまり空腹を感じていないことも、その感覚に輪をかける。
単に時間が思ったほど過ぎていないので空腹感を覚えないのかもしれないし、以前アンジェが、サキュバスたちの食事はライフドレインで賄っている、と言ってたように、俺が戦闘でドレインを頻繁に使っているから空腹を覚えないのかが判断つかないのだ。
その辺りも、ターミナルに着けば⒨解決できるのだろうが、現在、行き詰っている。
どけれる瓦礫がないのだ。
残っているのは、複雑に絡み合った大きな瓦礫で、押したり引いたりしてもびくともしない。
偶に隙間から風が流れ込んでくるので、この塊さえどければ先に進めると思うのだが、それこそ、魔法や爆弾でもなければ、この瓦礫をどけることは出来そうになかった。
なので、俺は今、以前探索してまわった通路を、再び見て回っている。
他に通路はないのか?瓦礫をどければ通れそうな場所はないのか?等々、以前とは注目ポイントを変えて探索しているが、今の所思ったほどの成果を挙げてはいない。
「クッ、またコボルトかっ!」
角を曲がったところで、突然出くわした魔物。
俺達は互いに後ろへと飛び退り距離を取る。
俺は棍棒を構えて、飛び掛かる隙を窺う。
コボルトは周りを警戒しながら、ジリジリと後退っている。
俺がコボルトに飛び掛かろうと一歩踏み込んだ時、コボルトは手にした何かを俺めがけて投げてきた。
俺は咄嗟にそれを躱す。
その直後、背後で大きな爆発が起きる。
俺は何事かと、振り返ると、そこには炎が立ち上っていた。
……っと、今は戦闘中だ。
俺は意識を慌てて前方のコボルトへと切り替えるが、そこにはすでにコボルトの姿はなかった。
ただ、慌てて逃げたのだろう、コボルトがいた足元には、革袋が転がっていた。
俺はそれを拾って中を検める。
中には拳大の石が3つ入っていた。
どれも溶岩が冷えあたような感じのゴツゴツとした石で、当たると痛そうだった。
「……もしかして、さっきアイツが投げたのはこの石か?」
俺は試しに、石の一つを持って、遠くへ投げてみる。投げる際、なんとなく魔力が流せそうだったので、魔力を流し込んでおいた。
流し込んだ魔力の影響か、それとも、元々そういう性質だったのか分からないが、俺が投げた石は、遠くに落下した途端、ドンっと小さな爆発音を上げ、辺り一面を炎で包み込む。
「……まともにあたってたらヤバかったな。」
俺はあの時棍棒で打ち返すことも考えていたのだが、やらなくてよかったと、心から安堵する。
「あんな爆発物、棍棒にあたった途端に……、爆発物?」
俺はあることに思い当たる。
……これを使えば?
俺は慌てて広間に戻ることにした。
「……これで良し、と。」
俺はコボルトの持っていた石がしっかりと設置されているかを再度確認した後、刺激を与えないようにしてそぉっと降りていく。
「後はこっちに魔力を流し込んで投げれば……。」
二つの石の爆発があれば、さすがにあの瓦礫も崩れるだろう。
後は投げた後に、横に作った避難壕に素早く非難して上から崩れ落ちてくる瓦礫をやり過ごすだけ。
問題は崩れ落ちた瓦礫で避難壕も埋もれてしまわないか、という心配だけだけど、何事も100%の絶対はないのだから、今から心配しても仕方がない、と気持ちを切り替える。
……長かった。本当にそう思う。
俺は体感時間で2日~1ヶ月半の今までの出来事を思い出してみるが、アンジェとの別れの後、はひたすら歩きまわってコボルトを倒して、瓦礫をどけていただけなので、思い出すのをやめる。
「そんな事より、あそこを抜ければ、クリムとの初エッチだっ、童貞卒業だっ!」
俺はそう叫びながら石に魔力を込めて投げるのだった。
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