日常の終わり!?
「それに触れないでっ!」
ロリ女神が、先に言くアンジェ達を追いかけようとするのを、俺は足を引っかけて邪魔をする。
べちゃ!
見事に顔から床に突っ込むロリ女神。お約束と言えばそれまでなのだが、さすがにベタ過ぎるだろう。
「あにすんのよっ!」
鼻を押さえながら起き上がったロリ女神は、俺に向き直り文句を言う。
「それはこっちのセリフだっ!いきなり出てきて、何邪魔しようとしてるんだよっ!」
俺は、立ち上がったロリ女神を羽交い絞めにして、邪魔に行かせないようにする。
「邪魔するのは当たり前じゃないっ!世界の存亡の危機なのよっ!だから離しなさいよっ!」
「何わけわからんことをっ。ここでお前に邪魔されたら、俺の童貞卒業が遠のくだろうがっ!」
それだけは許すわけにはいかない。なんといっても、ここの装置次第だが、起動させることが出来れば、ビャクレンの話では2年後には必要な魔力がたまるという。逆に、起動させることが出来なければ、新たな祭壇が見つからない限り、期限までに必要魔力がたまるかどうかは50%とのことだった。
「そんなくだらないことはどうでもいいわよっ!それより、あれを動かしてはダメなのっ。」
「くだらないとは何だっ!俺にとっては世界の滅亡と等しく重大なことだ。」
「あー、もぅっ!こんなくだらない言い合いしてる暇はないのよっ。事が無事済めば、いくらでもエッチしてあげるからっ。だから早くアレの起動をやめさせて。」
「なん……だ……と……。」
ロリ女神とエッチし放題?……つまり、アレか?童貞卒業できるのか?
ロリ女神を捕まえている腕の力が、ふと抜けていく。
その隙をついて抜け出したロリ女神は、祭壇の起動を止めるべく走り出す。
「……っと、だまされないぞっ!」
俺は慌てて追いかけ、ロリ女神の腕を掴む。
「離しなさいよっ!嘘じゃないわよ。アレを起動させるぐらいなら、この写し身がアンタに穢されることぐらいどうってことないんだからっ。」
ロリ女神の必至な様子に、俺は少し冷静になり、そして違和感を覚える。
……こいつは、いつも俺をからかってばかりで、いつもヘラヘラ笑って、人を馬鹿にしていたはずなのに……、こんな必死な表情で、余裕がない姿は始めてだ。
ロリ女神の普段とかけ離れた様子に、俺は真面目に話を聞くべきじゃないか?と思い始める。
「とにかく、詳しく説明しろ。今のままじゃ判断できん。」
「だからっ、そんな暇はないっていうのっ!説明なら後からいくらでもしてあげるから、今はアレを止めて。」
「……分かった。だけど、あとでしっかり説明してもらうからなっ!」
「女神は噓をつかないわよっ!」
俺とロリ女神は、そろって祭壇に向けて駆け出す。
しかし、ビャクレンとアンジェは優秀過ぎた。
俺たちが辿り着く前に、祭壇の起動に成功したのだ。
ゴ・ゴ・ゴ・ゴ……。
地中にあるはずの祭壇が大きく揺れる。
壁や天井から岩が崩れだし、祭壇の中央からは光があふれだす。
「何?何が起きてるの?」
ビャクレンが揺れる祭壇にしがみつきながら言う。
「危な……きゃぁっ!」
「クリムっ!」
倒れかけたビャクレンを助けようと近寄るクリムの足元が突然崩れるのを見て、俺は必死に手を伸ばす。
「ソーマっ!」
俺の頭上に大きな岩の塊が降り注ぐが、俺はクリムの手を掴むだけで精一杯だった。
アンジェが駆け寄ってきて、俺を庇うように覆いかぶさる。
その時の衝撃で、俺の手は掴みかけていたクリムの手を放してしまう。
「クリムっ、手を伸ばせっ!」
俺の方からも必死に手を伸ばし、クリムの手を掴もうとする。
そして、その指先が触れるか触れないかというところで……世界が真っ白に染まった。
俺が覚えているのはそこまでだった……。
◇
……ここは、……どこだ?
『あ、気づいたようね。』
どこからともなくロリ女神の声が聞こえる。
……ここはどこだ?アンジェは?クリムは?みんなは無事なのか?
『落ち着きなさいよっ……と言っても無理だろうけどね。ここは狭間の世界。あらゆる理から切り離された唯一無二の世界。』
……アレはいったい何だったんだ?みんなは無事なのか?そもそも何がどうなっているんだ?
『だから落ち着け、この童貞!』
……ど、ど、ど、童貞ちゃうわっ!
『そんなことどうでもいいわよ。……あんたとは約束したからね。ちゃんと説明してあげるわ……いろいろ手遅れだけどね。』
……手遅れって、どういうことだよ。
『まず、そうね、あんたたちがいた世界は崩壊したわ。』
……は?
ロリ女神が何を言っているかわからない……いや、言ってることはわかるのだが理解できない。どういうことだよ、崩壊って。
『言葉のとおりよ。あの世界は崩れて壊れたの。今は崩壊直後で安定してないから、この後どうなるかわからないけど、少なくとも、あんたの知っている安定した世界とは程遠くなることは間違いないわね。』
……マジか……って、それなら、アンジェは?クリムは?他のみんなはどうなった?
『……クリムって女の子は、担当官が必要な処置をしてるはずよ。他の者については……まぁ、魔族なら再会できる可能性はあるかもね。』
……魔族なら……って。じゃぁ、人族の奴らはっ!
『陣族は、この崩壊に巻き込まれて50%が滅亡したわ。そして30%がその有り様を変え、残りの20%が各地に散らばっている。この先どうなるかは、世界が安定するまで何とも言えないわね。』
……そもそも、何がどうなっているんだ?
ロリ女神の話を聞いているうちに、昂っていた気持ちが静まり、少しは冷静さを取り戻す。
『全部、女神エルゥスの仕業よ。彼女が望んだこと。そしてあなたがトリガーを引いた。』
……どういうことだ?
『この世界は珍しく安定した世界だったの。あまりにも安定しすぎて、あなたたちのような異世界からのイレギュラーを迎え入れても揺らがないほどに。』
『だから、私たちはイレギュラーを呼び込んでは、少々干渉して世界の在り様を観察していたのよ。あんたたちの行動を観察することで、暇をつぶしていたってわけ。』
『本当なら、アンタはこの後、魔族と人族の大規模な抗争に巻き込まれ、右往左往しながらジタバタあがくはずだったのよ。私たちはそれを楽しみにしていたのよ?』
……最悪な趣味だな。クソッタレめ。
『あんたが不幸になるのは見ていて飽きなかったわよ。』
そういって笑う気配が空間全体に伝わる。
……で?その悪趣味な覗きをやめてまで世界を壊したのはなんでだ?
『すべてはエルゥスの企みよ。彼女が司るのは色欲……つまり、欲望の開放された世界が彼女にとっての楽園なの。だけど、この安定した世界では、彼女の望む世界になりようがなく、彼女の不満はずっとくすぶっていたの。そしてその不満は次第に大きくなり、望む世界にならないなら壊してしまえ、と思うようになったのね。』
『だけど、我々は世界にちょっとした干渉は出来ても、大きな干渉……世界の根幹を揺るがすような干渉は出来ないの。だけど、そこに現れたのが色ボケで欲望丸出しのアンタ。』
『エルゥスはしばらくアンタの様子を観察して、アンタなら望んだとおりに踊ってくれると思ったのね。で、アンタに祝福を送ると同時に、さりげなく各地の祭壇を起動させるように仕向けたのよ。……私も、まさか、そこまで仕組んでいたとは思わなかったわ。エルゥスの贈った祝福はあくまでも、ただの祝福だったからね。』
……あの祭壇っていうのは何だ?
『アレは、太古の超文明が残した遺物よ。その文明は発展しすぎて、神と呼ばれる存在までをも使役するだけの力を持ったわ。』
『だけどね、我々観察者の力の一部ならともかく、その本質にまで手を伸ばそうとしたから、その大きすぎる力が暴走して、その文明は滅びたの。そして、その文明が末期に研究していたのが、世界を改変すること。世界の在り様に干渉し、自らの思い通りに変える……。そんな途方もない研究だったけど、一部分においては完成のめどが立っていた。』
『だけど、所詮は未完成で、その膨大なエネルギーを制御する方法は確立されていなかったの。だから、文明が滅んだあと処分しようとしたんだけどね、どうしても、一部の装置は下手に触ると暴走の危険があって、結局、封印して放置するしかなかったのよ。』
……で、あそこの祭壇が、その封印されたとんでもない装置だったと?
『そういうこと。おバカなアンタは、エルゥスにいいように踊らされて、爆弾に火をつけたってわけよ。その結果、この辺りの時空に歪みが生じ、安定していたあの世界は、それまでの安定さの反発作用によってとんでもなく不安定な世界になりつつあるの。』
……俺はどうしたらいい?
『知らないわよ。こうなってしまっては私にできることは限られてくるの。……だけどまぁ、アンタの担当官としていくつかアドバイスしてあげる。』
……また、いい加減なことするつもりじゃないだろうな?
『そんな余裕はないわよ。それより、この後、時空の歪みが小さくなったら、アンタはあの不安定な世界で目覚めることになるわ。その世界では、今までの理がすべて無になってるの。アンタにあげた不死のスキルも歪んでしまってるわ。』
……どういうことだ?
『簡単に言えば、アンタは無能の役立たずってことよ。わかりやすく言えばLV1に戻ったってことね。』
……確かにわかりやすいが……マジか?
『マジよ。ただ、身に着けた技術にまで影響を及ぼさないから、アンタの得意な気配遮断とかは、以前ほどではないけど、それなりの効力を発揮するわ。だから、どんな手を使ってもいいから、生きてターミナルまで辿り着きなさい。』
……ターミナル?
『アンタ達が起動した祭壇よ。時空が歪んだせいで離れてしまったけど、そう遠くに離れているわけではないわ。』
……ターミナルに辿り着いたらどうなる?
『……今はまだ、何とも言えないわ。ただ、アンタが辿り着くころには、ある程度世界の在り様が定まっているはずだから、道を指し示すことが出来ると思うわ。……そして、たぶん、そこで出来ることが、私にできる最大で最後の支援だと思うわ。』
……どういうことだよ?最後って。
『言ったでしょ?新しい世界は不安定だって。不安定な世界では私たちはどこまで干渉できるかわからないのよ。あそこのターミナルなら、まだ以前の世界との絆があるから、何とかなるはずだけど、その後のことは……ね。』
……そうか、じゃぁ、エッチし放題っていうのは?
『出来るわけないでしょ、このばかっ!もう祝福によるギアスはないんだから、そこらの雌ゴブリンとでも好きなだけヤりなさいよ。』
『……っと、ばかなことで時間をつぶすところだったわ。そろそろ時間よ。……いい?意識を取り戻したら、とにかくターミナルを目指すこと。すべてはそれからよ?』
ロリ女神のその言葉が途切れると、意識がだんだんと拡散していく。
自分が今どこにいるのか、何をしているのか?そもそも自分とは……?
……そして、気づけば、意識が浮上していき、俺は目を覚ます。
覚醒した俺が目にしたものは……。
1日飛んで申し訳なかったです。
すべては花粉が悪いのです。
一応、この文章23日には書き上げたので、即投稿すれば、ギリギリ毎日更新に間に合ったのですが、それをすると、しばらくの間、正午ではなく深夜の更新になりそうだったので、潔く1日飛ばすことにしました。
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