ハーレム王の遺跡探索 3
「クリム、大丈夫か?」
俺は背中にいるクリムに声をかける。
「ん-、大丈夫くない。……アイスニードル!」
クリムはそういいながら、前方からやってきたダンジョンバットを、氷の矢で貫く。
アンジェが発見した通路。その中に入ってからどれくらいたったのだろうか?
道は、幸いと言っていいかどうかはわからないが、ここまでずっと一本道で途中での分岐はなかった。
だけど、その通路の両脇に、ずらーっと並んだ石像があり、俺たちが近づくと襲い掛かってくるという、基本的なトラップ?が仕掛けられていた。
一体一体はそれほど大した強さじゃないので、まだマシなのだが、とにかく数が多い。
ここまで来るまでに何匹の石像モンスターを倒したことやら。
しかも、その石像モンスターに紛れて、この通路に住み着いているらしい、ネズミ型や蝙蝠型のモンスターも襲ってくるため気が抜けない。
さらに言えば、倒した石像モンスターは俺たちがある程度離れると、元の場所に、何事もなかったかのように復活するので、後戻りも出来ない。後戻りするならば、倒してきたの同じだけ、また倒さなければならないからだ。
だから同じ倒さなければいけないのであれば、前へ進むことを選択するのは当たり前だろう。
そして、俺たちには休むことも許されていない。
正確に言えば、石像モンスターを倒したその場で動かなければ、休めなくもないのだが、3mも移動すれば、敵の行動範囲に入ってしまうため、4人で狭い場所に固まっていなければならない。これではしっかりとした休息が取れるわけがなかった。
つまり、ここのトラップを仕掛けたやつは相当性格が悪いというわけだ。
そんな状況なので、体力に不安があるクリムが、真っ先にダウンしたので、こうして、俺が背負って移動しているというわけだ。
魔力が枯渇しているわけではないので、今みたいに魔法の援護が出来る分、まだ状況はマシなのだろう。
「うー、まだ抜けられないの?」
「まだみたいだなぁ。」
クリムが文句を言うのに対して、俺は冷静に事実を告げる。
前方、俺の視覚に入っている藩にでは、石像がずらりと並んでいるのが見える。
「また、さっきみたいに薙ぎ払う?」
焦れたクリムがそういうが、アンジェからストップがかかる。
「走って疲れて、余計体力を消耗するだけだから、やめた方がいいわ。」
少し前に、クリムが焦れて広域魔法で石像を吹き飛ばしたのだが、俺たちが少し進む間に、遠い位置から順に石像が復活していったのを見て、クリムが再度魔法を放ち、俺たちはその後に続いて全力で駆けだした。
結果、魔法が届いた範囲までは走り切ることが出来たが、その先もまだまだ石像が並んでいたため、あまり意味をなさなかったのだ。
「いい加減どこまで続くのかしらね。そろそろ先が見えればいいんだけど。」
人間、先が見えていれば、それが遠くても意外と頑張れるものだが、ゴールがいくら近くても、先が見えていなければ、予想以上に疲れるものだ。
「そうだな……。俺が気配を消していけば、あの石像に気づかれずに進めると思うか?」
俺は、ふと思いついたことをアンジェに問いかけてみる。
「うーん、何で私たちの接近を感知しているかわからないから、何とも言えないわ。ただ、気配で感知しているという可能性もなくはないから、ひょっとしたら……ってところね。」
「つまりやってみなきゃわからんってことだな。」
俺は背負っていたクリムを床に降ろす。
「とりあえず、試してみるから、みんなはここで待っててくれ。」
石像が反応する手前で、アンジェ達は腰を下ろす。背後では、倒したばかりの石像がもう復活を始めているので、ここからほとんど動けないが、ちょっとした休憩ぐらいであれば大丈夫だろう。
俺は、認識疎外の能力を高めるアミュレットを身に着けると、気配を殺して、ゆっくりと石像に近づく。
クリムは、しゃがんだままだったが、いつでも魔法が放てるように、こちらを注視している。
……大丈夫、大丈夫だ……。
俺は、そろりそろりと近づき、ここを超えれば、石像の感知範囲という境界を踏み越える。
……大丈夫みたいだな。
俺はさらに慎重に先へと歩を進める。
……大丈夫そうだ。だけど、1体を越えるのにこんなに時間がかかるようなら、力任せに倒していった方が速いんじゃ?
そんな考えが頭をよぎるが、俺は頭を振って、その考えを振り払う。
この先、どれぐらい続いているかわからないんだから、無駄な消耗は避けた方がいいはずだ。
俺のこの探索も、500m~1km程度を目安に考えている。
それくらいで、ここを抜けられるのであれば、クリムの魔法で薙ぎ払い、全力疾走した後、残りを強引に突破できるからだ。
しかし、そこまで進んでも、さらに石像が続くようなら、一度撤退することも視野に入れて、この先のことを考える必要がある。
そんなことを考えながら、俺は、先へ、先へと進んでいく。
そして1㎞地点につくが……。
「あちゃぁ。まだ先は長いってか。」
前方には、いまだ途切れることのない石像の列。
「俺の感では、そろそろ終わりのはずなんだけどなぁ。」
俺は戻るかどうか、少し逡巡したのち、先へ進むことに決めた。
石像に感知されないレベルの気配遮断の感覚になれたこともあり、移動速度が上がっているのも、その判断を後押ししている。
そして、俺は自分の感に従って先へ進む。
「よし、終わりが見えたぞ。」
さらに1㎞ほど進んだところで、唐突に石像の列が途絶え、100mほど前方に古ぼけた扉が見える。
それを確認したところで、俺はそれ以上進まずに引き返すことにした。
本音を言えば、ここまで来たのだから、扉まで行って状況を確認したかったが、どんな罠があるかわからない。
アンジェ達と離れている状況で、下手な罠に引っかかってしまったら笑うに笑えなくなる。
「ソーマ、遅ーい。」
みんなが待つ場所まで戻ると、クリムが文句を言ってくる。
「ごめん、悪かったよ。」
あらかじめ決めていた予定時間を大幅に超えているのだから、文句を言われても仕方がない。現にアンジェとビャクレンは、俺に何かあったんじゃないかと、助けに行く判断を下すところだったらしい。
「それで、何かわかった?」
「あぁ、この先、大体2㎞ぐらいで、この石像の通路は終わりだ。」
「そう。だったら、クリムの魔法で薙ぎ払いながら進めるところまで一気に進んだ方がいいわね。」
「そうだな。後、扉の前は大体100mぐらい何もない通路があったけど、そこに何か出てくる可能性もあるから、数体前のところで休憩をとるようにしよう。」
あと2km進めばこの石像通路が終わると知ったみんなは、急に元気が出てきた。
2kmを石像モンスターを倒しながら進むのはかなり重労働のはずなのだが、終わりが見えたことで、国はならなくなったようだ。
「いっくよぉ……トルネード・ブラストぉっ!」
クリムの魔法が放たれ、前方の石像が風の渦に巻き込まれ吹き飛ばされる。
飛び出したビャクレンが石像が動き出すと同時に、その剣で薙ぎ払っていく。
俺とアンジェは二人の後をついていくだけ。……時々二人の攻撃をすり抜けた個体が襲い掛かってくるが、それはアンジェの投げナイフで簡単に息の根を止める。
「……俺の出番がない。」
「さっき頑張ったからいいじゃない。」
アンジェがそういって慰めてくれるが、男として、女の子だけに戦いを任せてしまうのはどうなんだろう?と思ってしまうのだ。
俺はハーレムを夢見ているが、ヒモになりたいわけじゃないのだ。
そして、ほどなく石像の終わりが見えてきたが、あっという間にクリムが魔法で吹き飛ばしてしまった。
「最後の倒す前に休憩しようって言ったよな?」
俺のつぶやきは誰も聞いてなかった。
そして、扉の前……。
心配していた罠も何もなく、石像を倒した後、何事もなくここまでたどり着いた。
「じゃぁ、開けるぞ。」
扉に罠らしきものは見当たらなかったので、俺はゆっくりと扉を開ける。
「わぁ……。」
クリムが感嘆の声を上げる。
「どうやら大当たりみたいね。ヴァイセエリアの祭壇より格上みたい。」
「早速起動してみましょう。」
そういいながら駆け出す3人。
俺も遅れずに駆けだそうとすると、背後から声がかかる。
「待ちなさいっ!それに触れてはダメっ!」
俺は振り返ってその声の主を見る。
そこには、俺の仇敵のロリ女神が必死な表情で立っていた。
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