ハーレム第一号?との遭遇
「ギャッ、ギャッ!」
ゴブリンどもが喜声を上げている。
陰になってよく見えないが、どうやら一人の女の子を取り囲んでいるらしい。
「いやッ!話しなさいよっ!」
女の子が抵抗しているが、ゴブリンたちは、その自由を奪うべく、手足を抑え込みにかかる。
その様子を見て、あの無残な女性の姿がフラッシュバックで甦る。
思わず飛び出そうとしたところを、必死になって自制する。
……ダメだ、今飛び出したらあの時の二の舞だ。今度こそ、必ず助けるんだ。
俺は冷静になって、この先の行動を素早く計算する。
前回のような、意味のない過信に基づいた計画ではなく、今の俺が確実にゴブリンを屠るための計画だ。
すぐに答えをまとめると、俺は1本のナイフを取り出し、こちらに背を向けているゴブリンに向けて投げつけ、気配を殺したまま移動する。
今のでゴブリンを倒せるとは思っていないが、あのナイフには猛毒が塗ってあるので、身体のどこかに刺さればそれでよかった。
「ぐぎゃっ!」
狙いたがわず、投げたナイフは、ゴブリンの背中、首の下あたりに突き刺さる。
仲間のあげた悲鳴に驚き、他のゴブリンたちがそちらを見る。
しかし、それでも獲物である女の子を離さないのは、状況が分かっていないのか、それとも問題ないと思っているのか。どちらにしても、許せるものではない。
ゴブリンたちが向いた方角の反対側……つまりゴブリンの背後から更にナイフを2本投げつける。
1本は見事に突き刺さり、そのゴブリンはその場に倒れこむが、もう一本は狙いが僅かに逸れ、腕をかすめるだけにとどまった。
ここにきて、さすがに危険を感じたのか、3匹のゴブリンたちが獲物を離し武器を持つ。
ここで、あえて俺は茂みを揺すり音をたてる。
予想通りに、音がしたほうへ駆け出すゴブリンたち。
俺はある程度の距離を保ち、わざと音をたてながら、森の奥へとゴブリンを誘導する。
この間に、あの女の子が逃げてくれればいいのだが。
そう思いながら、ゴブリンたちを、奥へ奥へと誘い込む。
森の奥に入り込むと、足場は急に悪くなり、森の中に巣を張るゴブリンといえども、その足は遅くなる。
いつの間にか3匹の距離は離れているが、根が単純なゴブリンどもは、そんなことを気にも留めない。
気配を殺して潜んでいる目の前をゴブリンが通り過ぎる。
1匹目をそのまま通し、あとからやってきた2匹目を、背後から口を塞ぎ、その首にナイフを突き立て、絶命させる。
そのまま1匹目の後を追い、音がなくなってどっちに行けばいいかわからずキョロキョロしているゴブリンを背中から切りつける。
戻りながら3匹目を探すが、すぐにやってくると思ったのに姿が見えない。
嫌な予感がした俺は、隠密行動をやめて、全力で駆け戻る。
あの子がゴブリンに襲われているかもと思うと気が気でならなかった。
しかし俺のその心配は杞憂で終わる。
少し行ったところで。3匹目が倒れていたのだ。
どうやら、掠ったナイフに塗布してあった毒が回り、この場で動けなくなったようだった。
念のために、俺は剣をその胸に突き立て、とどめを刺しておく。
そのゴブリンの武器を奪い取り、少し戻って、1匹目と2匹目のゴブリンからも荷物を奪う。
ちょっとした量になったが、先日奪った魔法の革袋が役に立つ。出来ればもう一つぐらい手に入れたいところだけど、世の中そう甘くはないようで、あれから、マジックアイテムの類を目にすることはなかった。
「まぁ、もう逃げてるだろうけど……。」
俺はそう呟きながら、女の子が襲われていた場所へ向かう。
もし万が一、まだ残っているなら、どこから来たのか聞けるかもしれない。
そして、その場に戻ると、女の子はまだいた。大きな樹に背を預けて座り込んでいた。
……エロ可愛い。
その子の第一印象は、その一言に尽きた。
なんといえばいいのか、ハイレグのビキニに、レースをあしらったパレオ。襟元には申し訳程度のフリル……夏場の海辺でなら、大胆!という程度で、それなりの注目は集めるものの、それほどおかしな格好ではなかっただろう。
しかし、ここは森の中。過剰なまでの露出……これでは襲ってくださいと言わんばかりではないだろうか?
そして、そんなアダルティな格好なのに、小柄でやや幼さの残る顔立ちが、見事なまでにギャップを作り、それがまた、怪しい魅力を醸し出していた。
「……あ、あの……。」
俺が彼女に見とれて呆然と立ち尽くしていると、彼女の方から声をかけてくる。
「あの……助けてくれて、ありがとう……。」
「あ、いや……大丈夫だった?」
俺は慌ててそう答える。声が上ずってしまうのは仕方がないだろう。
「はい……ただ、その……動けなくて……。」
彼女は恥ずかしそうに頬を染め、俯く。
「あんな奴らにい襲われたんじゃ無理もないよな。」
俺は彼女のそばまで行くと、その手を取って立ち上がらせる。
「本当に、本当にありがとう。ここで出会えたのは運命に違いないですね。」
彼女はそういうと俺の首に両手を回し、顔を近づけてくる。
……こ、これは、あれか?き、キスを求められているのか?
俺は内心動揺しまくりだった。
彼女いない歴=年齢。魔法使い寸前という経歴は伊達じゃないんだぜ。
こんな時、どうすればいいかなんて、わかるはずがない。
あれか?本能に任せればいいのか?
俺が身動きしないのにじれたのか、彼女の方から唇を押し付けてくる。
……!俺、今キスしてるっ??
彼女の舌が、俺の口内に入り込み周りを蹂躙し始める。
……キスって……こんなにいいものなのか……。
俺のファーストキス……。
親の話によれば、俺のファーストキスは1歳の時。しかも相手はオヤジだったそうだ。
母親と激戦を繰り広げた結果、わずかの差で親父に負けて先を譲ったと、悔しそうに話していたけど……そこは頑張ってほしかったよ、ママン。
……初めての相手が男でしかも父親だなんて嫌すぎる……いや、物心つく前、しかも親にされたものだからノーカンだノーカン。
俺のファーストキスは、今この娘とだ!そう決めたっ!誰がなんといても、この娘が俺のファーストキスの相手だ!
俺の動揺をよそに、彼女の舌は、俺の口内を弄り俺の舌を絡めとる。
……あぁ、力が抜けてゆく……あまりにもの心地よさに、このまま昇天してしまう。
…………。
……比喩表現でもなんでもなく、俺は昇天してしまった。つまり、生命活動を終えたのだった……彼女のキスによって。
ようやくヒロイン1号の登場ですw
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