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ハーレム王、パーティをプロデュースする 2

「おぉー。美味い、美味いぞっ。」


クリフが感嘆の声をあげながら、目の前の料理を次々と平らげていく。


「これ、本当に同じものなのかしら?素材を偽ってるのではなくて?」


「いえ、先程のものと全く同じものでございます。私も驚きました。下ごしらえの手順でこうも味が変わるとは……料理道を極めたと自負していたのが恥ずかしい限りです。」


疑う眼差しを向ける奥様に対し、料理長は冷や汗をかきつつ応える。


「ねぇ、お代りはないの?パパがどんどん食べていくから、すぐなくなっちゃうのよ。」


ラーニャお嬢様が、少しむくれてそういう。


「ソーマ殿から教えていただいた新作料理が、もうすぐ出来上がりますので、ここであまり食べない方がよろしいですよ?」


料理長がラーニャにそう告げると、次の皿を取ろうとしていたクリフの手が止まる。


「それ、これより美味しい?」


ラーニャが、空になったローストビーフのお皿を掲げながら料理長に訊ねる。


「えぇ、まぁ……。料理人として認めるのはとても悔しいのですが……アレは料理界に革命を起こします。パーティに来た貴族たちが目を回すことは間違いないでしょうな。」


料理長の言葉を聞いて、ラーニャは期待の目を輝かせる。そして、クリフも、伸ばしていた手を引っ込めて、早く来ないかとソワソワし出す。


しばらくすると、厨房から、リズが戻ってくる。


その後に続くように、料理を載せたワゴンを押してフリーシャたちがやってくる。


それを取り囲むクリフ一家。料理を並べるのも待てないというように、手を伸ばしてワゴンから直接料理を奪っていく。


正直、貴族としてそれはどうなんだ?と思わなくもないが、まぁ評価されていると思う事にする。


「リズ、ご苦労様。……フリーシャたちもな。」


料理を並び終えたフリーシャたちが戻ってきたので、みんなを労う。


「それで、どんな感じだ?」


「えぇ、従来の料理は、素材は最高級のものですが、従来の料理法そのものでしたから、下ごしらえの方法を変えただけで、劇的に変わりました。予想通り、そこが一番大変だったんですよ。」


リズが、もっと褒めろ、甘やかせと珍しく主張してくるので、俺は膝の上に乗せて、目の前に用視されたフライドポテトをリズの口に運んでやる。



料理において一番重要な事は衛生管理だ。これはどの世界でも変わらないと思うのだが、料理文化の低い時代では、往々にして疎かになっていることが多いと聞いたことがある。


だから、俺とクリムは地球の料理の味を再現するにあたって、まずはそこをしっかりとしようと考えた。


しかし、この世界、俺たちの予想を裏切り、衛生管理は徹底していた……徹底し過ぎていた。


何せ、野菜も肉も魚も、あらゆる素材は、まず徹底的に洗われる。そのあと沸騰したお湯に投げ込まれ数分煮込まれるのだ。


その後、その煮込んだお湯は全て捨てられ、素材は再度水洗いしてから始めて料理に取り掛かるのだ。


これではせっかくの旨味成分が、無駄に捨てられているのと何ら変わりはない。


そして、素材そのものの味が無くなっているため、調味料がふんだんに使われる……つまり、調味料の味しかしないと言っても過言ではないのだ。


まぁ、この世界では、その調味料こそが、料理人の腕前みたいなところがあるので、そういう文化として受け止めるしかないのだが。


だからリズ達は、まず初めに、素材を煮込むのをやめさせた。


水洗いはしっかりとするが、その後はそのまま調理に。スープなどの煮込み料理は灰汁取りをしっかりすることをを教えるが、決してそのお湯を捨てないようにと言明する。


料理長を始めとした料理人たちは、最初「こんな汚いものを出すわけにはいかん」と強固に反対していて、その手順を理解させるのが一番苦労したそうだ。


それでも、出来上がったスープを飲んだ後はその態度が急変する。調味料も使ってないのに、濃厚な味わいのスープ。今まで自分たちが、どれだけ調味料の配合を変えても追いつけなかった味がそこにあるのだから。


その他にも、肉を焼く前に下味をつけることや、焼く時に肉の旨味を逃がさないようにする方法、調味料を無駄に使わず、素材にあったものを厳選して要所要所で使う事など、を指摘するだけで、従来の料理の味が劇的に変わった。


その結果は、先程のクリフの様子を見れば明らかだろう。


そして、いまクリフたちが奪い合っている新作の料理。


この世界では、見たことがない、揚げる、蒸すと言った調理法を使っているので、料理長たちには、これから、この調理法をしっかりと覚えてもらい、貴族向けにアレンジをしてもらわなければならない。


かなり大変だと思うが、そこは料理のプロフェッショナルである彼らは、新しい技術に目を輝かせているので、問題はないだろう。



「ソーマ殿っ!これがジャガというのは本当なのか?」


クリフが、フライドポテトを手にして駆け寄ってくる。


「本当ですよ。この地では不当に扱われているようですが、元々ジャガというのは育てやすく成長も早いうえに収穫量も多い。そして、様々な調理法に対応している万能な野菜なのですよ。ジャガ料理が広まれば、ジャガの生産高の高い土地を有する領地の価値は変わるでしょうね。」


「確かに。我が領地ではジャガを余らせているので生産を抑える政策を取り始めているが、領主に知らせて止めさせねばならんな。」


フライドポテトをぼりぼりと食べながらクリフが言う。というか、食べ過ぎじゃね?


「そうですね。後、クリフ殿、フライドポテトが美味しいのは分かりますが、あまり食べ過ぎると太りやすくなりますので気をつけてくださいね。」


俺がそういうと、新しくポテトに手を伸ばそうとしていた奥様とラーニャお嬢様の手が止まる。


「そうなのか?」


「えぇ、油をふんだんに使ってますので。油の質を変えることによって、多少の差が出ますが、それでも食べ過ぎは良くないですよ。」


俺がそういうと、クリフは、今手にしている分だけで諦めることにしたようだった。


奥様もラーニャお嬢様も、未練があるようだったが、別の料理に手を伸ばしていた。


フライドポテトだけでなく、そのほかの料理も好評で、一様に絶賛される。特にクレープはラーニャお嬢様が独り占めしようとして奥様に怒られる、と言った一幕もあったが、とにかく、試食会は好評のうちに終了し、今回の料理全てがパーティに出すことが満場一致で決定された。


後は、パーティまでに、料理長たちが、揚げる、蒸すなどの調理法を覚え、そして、新しい量をの見映えを工夫するだけだった。


料理長に言わせると、そこが一番大変なんだとか。


まぁ、頑張って欲しい。


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