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ハーレム王、パーティをプロデュースする 1

「わぁ、凄い~!」


クリフの屋敷に招かれた俺とアンジェとクリムとリズ、そしてフリーシャをはじめとするメイド隊のうちの4人は、目の前に並んだパーティ料理の数々に目を奪われる。


「どうだ?一応一般的な格式の高いパーティ用の料理を用意させたのだが?」


クリフが、こともなげに言うと、そばに控えていた料理長らしき男が、少し自慢げな笑顔で頷いている。


「そうですね、さすがは上級貴族様のパーティに出されるだけあって、見た目は素晴らしいですね。」


ちょっとした小鉢から、大皿に盛りつけてあるものまで、様々な造形がなされている。一つ一つを取っても、芸術品と言っていいほどの出来具合なのだが、こうして並べられると、それが一つの芸術として成り立つような工夫がなされている。


パーティは立食形式だそうなので、予め、いくつかの料理はこうして並べられるため、その見た目のインパクトというのもとても重要なのだそうだ。


「ソーマ様、それよりもお味を見てはいかがかしら?平民では味わえない、至福の世界へと誘われますわよ。」


近くにいたクリフの娘、ラーニャ嬢が自慢気にそう話しかけてくる。


いい方は少しなんだが、ラーニャ嬢に含むところはなく、本当に美味しいからぜひ、と勧めているだけ。基本、素直なお嬢様なのだ。


「そうですね、では、いただきましょうか。」


そういって俺たちは思い思いの料理を手にして口にする。


「うーん……。」


クリムが顔をしかめる。


「クリム姉様、一級品の味だと思いますわよ。」


クリムの言いたいことを理解して、リズがフォローを入れるが、クリムの顔はゆがんだままだ。


それも仕方がないだろう。クリムは、お貴族様の高級料理が食べられる、というので、ずっと期待していたのに、味がこれじゃぁなぁ。


一応、料理長の顔も立ててフォローをしておくと、決して不味い訳ではなく、それどころか、リズの言う通り、一級品として恥ずかしくない味なのだろう……この世界基準では。


ただ、俺もクリムもこの世界にはない味を知っているせいで、この世界の料理に物足りなさを感じていた。


だから、フリーシャたちに頑張ってもらって、俺たちの満足する味を再現してもらった。


再現してしまったからこそ、この世界の従来の味に、尚更馴染めなくなってしまったのだ。


ちなみに、現在の料理担当はリズ。ある意味、俺たちが起こした料理ハザードの被害者である。


俺やクリムがろくに料理が出来ないことを知り、あの料理が食べたければ自分で何とかするしかないと悟ったリズは、ハムの村で、フリーシャたちとともに料理の研鑽に明け暮れていたので、大概の料理は出来るようになった。


それだけでなく、リズは、貴族の料理がどういうモノかというのを知っていたため、俺やクリムが求める味と、この世界の料理を融合させて新しい料理を開発するまでに至っている。


だから、今回、料理長とフリーシャたちの間に立って、双方の橋渡しをお願いしてある。


「とりあえずわかっている問題から解決いたしましょうか?」


「そうだな。俺たちはその間に、新しく出すパーティ料理を考えておくよ。」


俺はそういって、リズとメイド隊のうち二人を、料理長とともに送り出す。フリーシャともう一人に残ってもらったのは、ここにない新しい一品を作ってもらうためだ。そのためには、まず何を作るかを決めなければいけない。


「とりあえず、定番の()()は外せないでしょ?」


「そうだな。カナッペと一緒に出してもらえばいいと思う。オードブルはそれでいいとしても……。」


やっぱり、メイン料理にインパクトのあるものを持ってこないといけないよなぁ。


俺はこの料理の提供にあたっては、ありふれた食材でインパクトのあるものを、というテーマを持っている。


他の貴族ですら食べたことのない食材を使うのも、インパクトとしてはいいだろう。それこそドラゴンの肉とか。


しかし、それでは金と権力にあかせただけというイメージが根強く残ってしまうだろう。つまり、他の貴族も「金とコネがあれば自分にだって」と思われてしまう可能性もある。……まぁ、その金とコネが貴族の力の差ではあるんだけどな。


だけど、今回の就任パーティは、クリフの力を見せるだけでなく、クリフが代官なら期待が出来る、と思わせた方がいいのだ。


誰もが簡単に手に入れることが出来るもので、だれも思いつかないようなことをやってのける、クリフについていけば、豊かな生活が約束される、そのように思わせた方がいいのではないだろうか?


俺のその考えをクリフに告げたところ、クリフ自身、自分の目指す道が見えた、と大いに納得し感謝された。


その姿を見て、俺は、クリフなら、きっといい代官になるだろうと思い、このパーティは、何が何でも成功させてやろうと、決めたのだ。


だからこそ、メインの料理が悩ましいのだ。


ちなみに、料理長が用意したメイン料理は、ローストビーフと、チキンの香草詰め丸焼きで、どちらも、パーティ料理の定番だそうだ。


定番というだけに、インパクトは薄いが、調理の仕方を変えて、今までにない、美味しい料理としてリニューアルするだけでもいいが、やはりもう一品ほしいよなぁ。


「立食のメインって難しいよね。」


「まぁな。腹持ちがよくて小分けにできるもの。となるとある程度限られてくるからなぁ。さすがに寿司は難しいだろうしな。」


俺はクリムにそう答える。


「お寿司というか、刺身がダメなんだよね。お稲荷さんとか、海苔巻きなんてどうかな?」


「悪くはないが……この辺りってコメは手に入るのか?」


「あ、そっかぁ。その問題があったねぇ。」


この世界にもお米はある。ただ、原産地はかなり離れた海の向こうの国ということで、一般的ではなく、ハムの街にいたころでも、マイケルさんの伝手で、たまに仕入れることが出来たぐらいだ。


余談ではあるが、ハルナ達鬼人族やオーガ族の間には稲作の農法が伝わっており、陸稲と呼ばれる種ではあるが、稲を育てていたこともあるらしいので、ヴァイセエリアでは、ぜひ稲作に挑戦してもらいたいと希望を出してある。うまくいけば来年以降それなりの頻度でコメを口にすることが出来るようになるかも知れない、と、俺以上にクリムが期待をかけている。


その後フリーシャたちを含め、色々と協議を重ねた結果、新しく出す料理は次のように決まった。


・フライドポテト

・ポテトサラダ

・ビーフシチュー

・ミートボール

・一口サイズのメンチカツ

・鶏のから揚げ

・クレープ


フライドポテトは手で軽くつまめる定番なので外せないとクリムが主張。


ジャガは家畜の餌として通っているので、貴族の口に合うか?という懸念が出されたが、味はリズで実証済なので、逆に、『あの、ジャガがこんなに美味しく食べられる』と、食料事情の改善につながるかもしれないということで決定。


そして、どうせジャガを使うなら、ともう一品ジャガ料理を追加したのがポテトサラダ。


この世界では、揚げるとか蒸すといった料理法が確立されていないことと、ポテトサラダに使用するマヨネーズ(もどき)はほとんど知られてないことから、簡単かつインパクトがあるもの、そして何よりコストが安く済む、ということで決定。


そして悩みに悩んだメイン料理。


最初はハンバーグとも考えたのだが、立食でのハンバーグの提供は難しいかも?とフリーシャが言うので、小さくしようということになり、ミートボールが、そしてミートボールサイズで揚げればメンチカツでもいいよな?ということでともに採用。


そして、ハンバーグ……というよりミートボールを焼くときに出る肉汁を使用すれば簡単にデミグラソースが作れる……だったらビーフシチューに挑戦するのもいいかもしれない、ということで採用。


そして、従来のメインのチキンの丸焼きは、かなり手間がかかるということを聞いて、それを取り下げる代わりに、から揚げを作ることにする。


そしてデザートは……、色々揉めた。とにかく揉めた。フリーシャもクリムも、もう一人のメイドも、デザートに関しては一歩も譲らない姿勢で、あわや乱闘にまでなりかけた。


クリムは、パーティのデザートと言えば、おっきなケーキでしょ、と言い、フリーシャはプリン推し……というか、以前プリンを教えてから、とにかく事あるごとにプリンを食べたがるほど、プリンにハマっている。そして残ったメイドちゃんは、イチゴ大福、豆大福などの大福バリエーションを上げてきた。


誰も自己主張するばかりで一歩も引かず、最終的には俺が決めるという流れになったのだが、ここで三人のうちのどれを選んでも、角が立ちまくることは必須だったので、俺はひたすら頭を回転させ、クレープという案をひねり出したのだ。


薄いクレープ生地に生クリームと様々な果実を入れて巻く。


片手でも食べられるし、皿に盛り付けることも出来る。立食でもそれ以外でも利用できる万能なデザートだ、と無理やり押し切って、クレープに決めたのだ。


まぁ、そんな感じで色々あったが、新しく出すメニューをとりあえずはクリフ達に食べてもらい、それでOKかどうかの判断をしてもらう必要があるので、フリーシャともう一人のメイドちゃんは、さっそく厨房へと向かっていった。


ちなみに、クリフ一家は、俺たちが話し合っている間、ずっと興味深そうにこちらを窺っていたので、待っている間に説明が必要かも? と、俺はクリフ達の方へ向かうのだった。





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