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ハーレム王の相談屋 5

「いらっしゃいませー。」


来客を告げるドアベルが鳴ると、リズが愛想よく挨拶をして、客を出迎える。


この、ベルリの街で相談屋を開いてから2か月が過ぎようとしていた。


店の評判はそこそこで、1日の売り上げ平均は金貨1枚を超えている。小さな店舗としては十分すぎるぐらいに繁盛していると言える。


売れ筋の商品は、クリム監修の美容品にシャンプーリンスのセット、そして例の強壮剤だ。


美容品は、美容液や、乳液、紫外線カットの保水液やらなんやら、とにかくいろんな液体が一杯。


そんなの一つあればいいだろ?何が違うんだ?と聞いたらクリムに思いっきり怒られた。


ちなみに、購買層は貴族の奥様やお嬢様がお忍びでやってきて購入していくのだが、ある時、一緒についてきたご主人らしき男性が、俺と同じことを奥さんと娘に言って、すごい勢いで怒られていた。


後ほど聞いたところによると、その日から奥さんと娘さんが口をきいてくれなくなったらしい。


あまりにも不憫なので、ご主人には、そっと強壮剤を差し入れておいたら、後日、その貴族さんからの紹介というお客が増え、一時的に強壮剤が品切れを起こす騒ぎが起きた。


……うん、儲かるのはいいことだね。


そんな感じで、儲けのうちの7割がシャンプーなどを含めた美容品、残りの2割半が強壮剤という状況で、他の品物はほとんど売れてないといってよかった。


そして、それ以上に……相談事の依頼が皆無だった。


なので、お店の接客や仕入れなどのほとんどはリズとクリムが取り仕切り、相談事の責任者である俺の仕事はない、という日々が続いていた。



「あのぉ、少し聞いてもいいですか?」


先ほどから、雑貨品の周りをウロウロしていた冒険者風の格好をしている三人組のうちの一人、少し小柄な女性が声をかけてくる。


俺は、周りを見回し、リズが他のお客様の相手をしているのを見て取ると、その女性の相手をすることに決める。


「なんでしょうか?」


「この『冒険者支援セット』っていうのは何ですか?お値段もかなり違うみたいですが。」


「あぁ、これですか。その名前の通り、冒険者の皆さんを支援するための物です。冒険の旅が、ちょっと楽になるっていうものですよ。」


俺がそう説明すると、そのセット内容のものが見たことがないものばかりなので、説明してほしいというので、彼女たちを誘って裏庭に移動する。


さすがに店内じゃ狭くて説明できないものもあるからだ。


「そうですねぇ。じゃぁ、まずはこれから。」


俺が最初に取り出したのは、小さな棒。取っ手にあたる部分に引き金があるのが特徴的だ。


「この棒の先を薪に近づけてですね……。」


俺は用意しておいた薪に棒の先を向け、取っ手の引き金を引く。すると、棒の先から炎が出てきて薪に火をつける。……要はチャッ〇マンだ。


「ほぇぇぇ~。l」


最初に声をかけてきた女の子が驚嘆の声を上げる。


「それからこれですね。」


俺は竹筒を取り出すと、薪の上に駆けた鍋の中に、筒の中身を注ぐ。


「えっと、どう見ても、こんな量のお水入ってないように見えるんだけど?」


もう一人の女性が、鍋の中に注がれた水と俺の手にしている竹筒を見比べながら言う。


「これは水が出てくる魔道具です。ここにある魔石にたまっている魔力分だけ水を出すことが出来るんですよ。満タンまで魔力がたまっている状態で、大体、この鍋一杯分のお水が出ますね。魔石が空になったら、再度魔石に魔力をチャージすることで再利用が可能です。もちろん、うちでも再チャージのサービスはやってますよ。」


魔道具の肝は何と言っても魔石で、その魔石に溜まっている魔力を動力源にするものが多い。


昔は使い捨てだったのだが、それではあまりにも無駄が多いと研究がすすめられ、近年では、再チャージ可能なものが多く出回っている。


とはいっても、だれもが魔力のチャージを出来るというわけでもないので、それ専門で商売をする人もいたりするが、ウチでは、ウチの商品なら、どれでもクレセント金貨1枚で再チャージをするというサービスをしている。


相場はクレセント金貨30枚~ハーフ金貨1枚というので、かなり激安なサービスだ。……もっとも、魔道具そのものがほとんど売れていないので、そのサービスを実際に行ったことはないのだが。


「それから、これですね。」


俺は驚いている女性冒険者3人に、取り出したスティック状の塊を一口サイズに割って渡す。


ちなみに、女性たちは、最初に声をかけてきたのがアリーシャ、竹筒に目をを奪われている、胸の大きい娘がエリーシャ、そして長身で長い髪の娘がミリーシャというそうだ。


「これは?」


「携帯食ですよ。」


俺はそういって、先に目の前で、ひとかけらを口の中に入れる。それを見た冒険者たちは、恐る恐る、自分が手にした塊をかじる。


「美味しい。」


「うーん、確かにいつものより格段に違うけど……。」


「ちょっと味が濃いかなぁ?」


三人が口々にそう感想を述べる。


「まぁ、好みは色々ですからね。これは今みたいにそのまま食べることも出来ますが、本来はこうするものです。」


俺は新しく取り出した携帯食のスティックを、程よく煮立った鍋の中に入れ、ゆっくりとかき混ぜる。


携帯食は、瞬く間に水の中で溶けだしていく。


「このままでも十分美味しいとは思いますが、これに干し肉を入れると、ぐっと味が引き立ちますよ。」


俺はそういって取り出した干し肉を、削って鍋の中に入れ、少しかき混ぜてからお椀によそい、冒険者娘たちに渡す。


「「「美味しい!」」」


三人の声がハモり、あっという間にお椀の中のスープを飲み干してお代わりを強請ってくる。


「先ほども言いましたが、味付けには好みがありますから、水の量で調整するといいですよ。特に干し肉を多く入れる場合、水は大目にしておかないと塩辛くなりますからね。」


俺はお代わりをよそいながら、他にも調味料や香草などを入れたり、他の具材と合わせることなどを話す。


「はぁ……確かに、コレがあれば旅の間の食事は改善されるわね。」


空っぽになった鍋を見ながら、ミリーシャがそういう。


この鍋1杯分で3人分が賄え、必要になる携帯食はスティック1本。1日2食として、5日分用意したとしても10本あればいい。スティック10本であれば場所も取らないし、さらに、魔道具の竹筒があれば、水の負担も軽減される……というか、3人の中に、ひとりでも魔力補充できるものがいれば、水を持っていく必要もなくなる。


旅の道中で水というものは欠かせないものであり、それゆえに、道中水が手に入らないことも踏まえて用意していくのだが、とにかく重い。この水を持ち歩かなくてもいいというだけでも、かなりのメリットがあるはずだ。


「最後に『虫よけスプレー』ですね。」


俺はスプレー缶を取り出す。


「これは虫や小型の魔物が嫌う成分を調合して霧状に噴射するものです。周りに吹きかけてもいいですが、本来の使い方は身体に吹き付ける物です。ただ、肌が弱いとかぶれたりするので、使用には注意が必要ですよ。」


「なるほどー。熱い地域などに行くときは役に立ちそうねー。」


アリーシャが感心したようにスプレー缶を見る。


あのスプレー缶はドワーフたちの努力の結晶なので、ぜひとも利用してもらいたいものだ。


「以上が支援Cセットの内容となります。そして、このCセットにこちらをつけたものがBセットとなります。」


俺はそういって棒状に丸まった布を取り出す。


「えっと、それは?」


「テントです。こうして、こう。」


俺は巻いてある紐を外して棒状になった布を横に引っ張る。


すると、支柱になっているポールが広がり、あっという間にテントが展開される。


「少し狭いですが、一応3人寝れますよ。」


アリーシャたちは、テントの中をのぞき込む。


「まぁ、素材も安物を使ってますから、携帯性がある以外は他のテントと大差はないんですけどね。Bセットにはこれが2つついてきますよ。」


「うん、テントかさばるからね。これだけ小さくなるならアリかもね。」


何度も言うようだが、旅で一番負担がかかるのは、その荷物の量だ。さらに言えば、冒険者の場合、討伐以来などで、魔獣を狩ることもあることを考えると、持っていく荷物は必要最小限になるうえ、かなりの我慢を強いられる。


そこで、従来より少ない荷物で従来以上の便利さ、満足さが得られれば、というコンセプトのもとに考えられたのが、この支援セットなのだ。


ただ、こんなに便利なのに、なぜか売れないのが目下の悩みの種なので、この娘達には、ぜひとも売りつけてやろうと思う。


「これで十分すぎると思うんだけど、Aセットっていうのは?」


ミリーシャが聞いてくる。


「AセットはBセットより質のいいテントとシャワールーム、それと折り畳み式の荷台がついてきます。」


俺はシャワールームとテントをその場で展開してみせる。


「シャワールームはお湯、水、どちらでも使用できますよ。大きめの魔石がセットしてありますが、満タン状態で普通に使って10日分程度。3人で使うのなら3~4日ぐらいは持ちます。」


旅先での水浴びというのは、中々難しいものがある。男はそれほど気にしないのだが、女の子には垂涎のアイテムだと、クリムが主張していたのだが、三人の食い入るようにシャワールームを見る目を見れば、間違ってないと認めざるを得ない。


ひとしきり、お湯を出したり水を出したりして満足した三人娘たちは、テントの方へ戻ってくる。


「このテントはさっきのとは違うの?」


エリーシャが聞いてくる。


「そうですね、まず、広さが違います。こっちは5人が寝れる大きさになっています。さらに耐刃、耐熱、防音性などに優れているので、壊れにくく、中は快適な温度で静かに過ごすことが出来ます。えっと、そうですね……私とエリーシャさんが中に入るので、残りのお二人は、外で私たちの会話が聞こえるかどうか確認してみてください。後なんなた、剣で切りつけたりしてみてもいいですよ。ちょっとやそっとでは切れない布を使用してますから。」


俺はそういってエリーシャを伴ってテントの中に入り、入り口を閉める。


「どうですか?」


「えぇ、確かに涼しいし、静かだわ。」


「音が全く聞こえないというのも、困ることがありますから、ここのつまみで調整することも出来るんですよ。」


俺はそういって入り口そばの魔石を回す。すると、外でアリーシャとミリーシャが話しているのが聞こえる。


『中で本当に会話してるのか?全く聞こえないぞ?』


『確か剣で切ってもいいって言ってましたよね?』


『おぃ、マジで斬るのか?こんな高そうなものを。』


外の声にエリーシャが一々答えてみるが、全く聞こえないようで外の様子は変わらない。


「本当に聞こえないんですね。でも、こちらの声を届けたいと気とかある場合はどうするんですの?」


「それは、こっちのつまみで調整できます。逆に言えば、このつまみが0の位置にある限り、この中の音や声は外に漏れないという事ですよ。……そう、こんなことをしても。」


俺はエリーシャを背後から抱きしめ、その胸を弄る。


「あ、あんっ。や、やめてください。」


「そんなこと言って。わかってるんだよ。支援セットが欲しい、でも予算がない、この身体で払えば何とかなるかな?って考えていたことぐらい。」


エリーシャは、俺の説明の途中から、俺に身体を摺り寄せたり、胸元を強調するようなポーズをとっていた。


そのあまりにも露骨な態度に、俺は乗ってみたというわけで、俺は悪くない。誘ってくる方が悪いんだ。


「あっ、ぁん……。じゃ、じゃぁ……、私が・……ぁんっ。」


少し触っただけなのに、すでに胸の先が硬くなっている。


「支援セット……ほしぃの。」


エリーシャは俺の手を取り、衣服の中に俺の手を誘導する。


「外……には、……はぁ、んっ……、バレないんだよね?」


そういって、俺の首に腕を回し、キスを強請ってくるエリーシャ。


「あぁ、バレない……っつ!」


俺はエリーシャと口づけをしようとしたその瞬間、俺たちの間を細く鋭い閃光が走る。


さらに、光の矢が次々と襲い掛かってくるが、それらは俺たちの身体をギリギリ掠めるだけで当たることはない。……こんな真似を出来るのは、俺の知る限り一人しかいない。


俺は仕方がなく、テントの入り口を開ける。


そこには、予想通りクリムが立っていた。


「ソーマぁ?浮気はメッって言ったよねぇ?」


……クリムさん、笑顔怖いっす。後、温度が下がってますよ。ほら、みんな震えてるじゃないですか。


……どうやら俺の説得は聞き入れてもらえそうになかった。

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