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ハーレム王の相談屋 2

「じゃぁ、あとは任せたぞ。」


俺はそういって、アンジェ、クリム、リズ、カミーラを伴って遺跡を後にする。


俺たちを見送っているのは、ハルナをはじめとした鬼人・オーガ族ほか、ハイエルフやヴァンパイア、サキュバスたち。


彼、彼女らにはこの後の細々とした雑事を任せてある。正直、すごく大変だと思うが頑張ってほしい。


まず、未来の王都となる、この北部の遺跡エリア一帯を「ヴァイセ・エリア」と名付け、管理責任者としてハルナを任命した。その補佐にはビャクレンをつけてある。エリア名や、管理者については、かなり揉めた……というか、発見してから今日までの半月のほとんどは、そのことに費やしたといっても過言じゃない。


それは置いといて、ハルナとビャクレンには一番重大な任務が与えてある。つまり、このヴァイセエリアを発展させることだ。


エリア内が活気づけば、それだけ溜まる魔力量も多くなるというので、その土地の活性化は急務だし、それに何より、この地はゆくゆくは「王都:ヴァイセ」になるのだから、それらを踏まえた街づくりが必要となる。


とはいっても、今の段階ではまだ、宝玉の機能も殆ど解放されていないため、出来ることは限られているのだが。


当面、ハルナはオーガ族を中心とした街づくりと、多種族の受け入れ・共存体制の確立などが主な仕事になる。ビャクレンはその補佐をしつつ、祭壇の機能把握、管理を任せてある。


そして南西にあった遺跡のエリア。様々な意見が出され、錯綜し、迷走し、収拾がつかなくなった結果『シュヴァイス・ポイント』と名付けられた。


ここは色々悩んだが、結局、ハムの街からセレーナを呼び寄せて管理することになった。


獣人の集落からそれほど離れていないため、獣人の集落を含めた大きな集落にする予定なのだが、外敵に備えて、砦の建設もする手はずを整えている。


最悪の場合は、獣人の集落を中心に籠城できるように、また、集落までには幾重もの防護人を突き抜けねばならぬように、防御に徹したエリアづくりを指示してある。


ヴァイセとは、別の意味で大変ではあるが、ハイエルフの技術者だけでなく、ノッカーやドワーフたちの協力も得られるので、何とかなるだろうと思う。


セレーナが抜けたハムの街だが、アイシャとミルカをはじめとした代表5人による合議制で管理、運営をしていくことが決まっている。


いきなり放り出された感もあるが、トンネルを抜ければ、すぐに獣人の集落で、セレーナもその近辺にいるため、何かあればフォローは可能ということもあり、二人の成長も期待しての人事だ。


もっとも、人が多くなったとはいえ、昔から住んでいる村人が中心になっているため、他に比べれば余程気楽に運営できるだろう。


こうして、基本的な基盤を整えるのに一月の時間をかけ、本日、帝国へ向けて、ようやく出発となったわけだ。


ヴァイセエリアとミストラル帝国での拠点を繋ぐラインを確保するため、俺たちは非常にゆっくりと迷宮森林と呼ばれる森の中へ、入っていくのだった。



「あー、どうしたもんかな。」


森の中ほどまで移動したとき、俺は皆にその場で止まるように指示する。


囲まれているのだ。犬……いや、オオカミか?体毛は明るいグレー……リーダーと思しきひときわ大きな個体は真っ白に輝く毛並みをしている。


「マーダーウルフね。少し厄介な相手よ。」


アンジェがそういってくる。


実は、少し前から様子を窺うように付けられていたのはわかっていたけど、敵意がないのであれば基本放置が俺のモットーなので、そのままにしていたのだが、どうやら相手は俺たちを襲うことを決めたらしい。


気配が変わったので、注意喚起をと思った時には、ぐるりと取り囲まれてしまった。その機動力と連携は称賛に値する。


「えっと、クロ、お前が行くのか?」


俺がどう対応しようかと考えていると、物陰からクロが飛び出し、「任せろ」というように片足を上げてくる。


「あーと、任せるのはいいが、無理すんなよ。相手の方が大きいし、数もいるからな。」


俺がそう注意すると、クロは「あんな犬っコロ目じゃねぇぜ。」というように前足をクイックイッとまげて相手を挑発している。……というか器用だな。


その挑発に乗って、周りを取り囲む狼たちが、グルル……と唸り声をあげるが、クロはさらに挑発を仕掛ける。


その挑発に乗って飛び掛かろうとした個体を真っ白なリーダーが抑え、一歩前に進み出る。どうやら、クロとタイマンで勝負するらしい。


……それはいいけど、俺たちのこと忘れられてないか?あ、忘れてないのね。


俺が少し移動すると、包囲網が崩れないように、マーダーウルフたちも移動する。


その間にも睨み合うクロとウルフ。


やがて、焦れたのか、クロが先に動く。


前足を踏ん張り大きく口を開けて、炎をウルフに向かって吐く。


龍族のブレスには及ばないが、火炎放射器並みの威力があり、そこらの魔物ではそれ一発で丸焦げになるだろうと思われる。


しかし、マーダーウルフのリーダーは、慌てず、落ち着いて自分の前に氷の壁を出現させる。


生半可な障壁では防げないクロの炎をしっかりと防ぐ氷の壁。かなりの魔力が籠っているみたいだ。


そしてマーダーウルフの反撃。無数の氷の槍がクロに降り注ぐ。


しかし、軽やかなステップでそれらを交わし、お返しとばかりにファイアーボールを連発するクロ。


その火の玉を氷の球で迎撃していくマーダーウルフ……どっちも同じぐらいの実力であり、一向に引く様子を見せない。


魔法の応酬の後は肉弾戦。


マーダーウルフが飛び掛かってくるのを、クロは紙一重で避け、すれ違いざまに、猫パンチを叩きこむ……が、躱されて失敗に終わる。


追撃を受けないように、大きくジャンプそして間合いを取るが、マーダーウルフは、素早く反転して突進し、間合いを詰める。


お互いの牙が、爪が、相手を倒すために振るわれる。途中魔法を交えながらお互いを責め立てるが、お互いに致命傷を与えるまでには至らない。


何度かの攻防を繰り返す中、クロの猫パンチが、マーダーウルフの顎にヒットする。


かなりのダメージを与えたみたいだが、吹き飛ばされるスン残、マーダーウルフの渾身の蹴りがクロのボディにさく裂し、その勢いで、クロもまた吹き飛ばされる。


「今のはお互いにいいのが決まったよな。」


俺は横で見ているアンジェにそう聞いてみる。


「えぇ。かなりのダメージが入ってるはずよ。」


アンジェが頷く。


アンジェの言う通り、ダメージが大きかったようで、お互いに何とか立ち上がるものの、その足取りはふらついている。


「うー私もやるぅ。……アシッドレイン!」


見ているだけなのがつまらなくなったようで、いきなりクリムが2頭に向けて魔法を放つ。


「わっ、ばかっ!・……クロ、あとそっちのも、逃げろっ!」


俺は慌ててクリムを押さえつつ、クロたちに逃げろと叫ぶ。


「うー、放してよぉ、私も参加するぅ。」


「クロの邪魔してやるなよっ。」


俺はクリムを押さえながら、クロたちを見ると、クロが炎の障壁を張って自分とマーダーウルフのリーダーを守っている。


しかし、炎では相性が悪すぎて完全に防ぎきれず、身体の端辺りが焦げ付いている。


そして、産の雨がやむとクロは一目散にこっちへかけてきて、クリムに向かって抗議をしだす。


「にゃっ!にゃにゃにゃにゃんっ!にゃにゃにゃにゃにゃ!」


「だってぇ、楽しそうだったんだもん。」


「にゃにゃっ!にゃにゃにゃにゃ!」


「うー・……ゴメンナサイ。」


「にゃん……。にゃ。」


「うん、謝ってくるよ。」


クロとは和解できたのか、心なしかしょんぼりとしたクリムが、マーダーウルフのリーダのもとに行って、その頭をなでながら謝罪する。


「ごめんね、ワンちゃん、邪魔して。でもね、あなたとクロが楽しそうに遊んでるからいけないんだよ?」


そんなことを言うクリムに、どうすればいいのか分からず、助けを求めるように、俺とクロを見るマーダーウルフのリーダー。


「えっと、私達って襲われそうになってたんじゃなかったっけ?」


リズが、少し困ったようにそう言うと、クロがリーダーのもとに行って二言三言会話を交わしてから戻ってくる。


「にゃにゃにゃっ!」


「えーと食料?これでいいか?……足りない?……クリム、ワイルドボアを出してくれ。」


俺は最初にオークのモモの塊を出したのだが、クロが言うには、全然足りないというので、大容量の収納を持つクリムに、先日狩ったイノシシを丸ごと出してもらった。


クロはそれを見て、マーダーウルフに声をかける。


マーダーウルフたちは少し警戒をしていたが、リーダーが口をつけ始めると、我先にと群がって、あっという間に食べつくしてしまった。


その間に俺はクロから詳しい話を聞く。


何でも、マーダーウルフたちは元の住処を追われて、この地へ彷徨ってきたらしい。住むところがないらしいので、ヴァイセに住まわせてやってほしいと頼んできた。


どうやら、クロはリーダーとのタイマンで友情をはぐくんだらしく、友の苦境に対し、何か助けになりたいのだとか。


「ま、危害を加えなきゃ別にいいが……お前たちはそれでいいのか?」


俺はマーダーウルフたちに尋ねると、彼らはピシッと隊列を組み、一斉に頭を下げた。


その一糸乱れぬ動きに、俺は思わず拍手してしまう。


「じゃぁ、とりあえず、リーダーだけでも名前を付けてやらないとな。何がいいかな……やっぱり白いから、シ……。」


「ポチ。この子はポチで決定!」


俺が名前を付ける前に、クリムが勝手に決めてしまう。


「いや、ポチって、そんな単純な……。」


「ソーマだけには言われたくないと思うわよ。」


呆れたように言うアンジェ。


しかし、さすがにポチはないだろ、とリーダーを見ると、気にいったみたいで、クリムに対してしっぽを振っている。……ま、いっか。


「じゃぁ、ポチ達にはヴァイセへ……って、道はわかるのか?ん?案内をつけるのか。じゃぁ、手紙を持たせよう。」


眷属に案内させるというクロの頭をなでてから、俺はハルナとビャクレンにあてて、手早く手紙を書く。


内容は、このマーダーウルフたちが仲間になったこと、彼らが安心して暮らせる場所を作成してほしいことなどだ。


俺は手紙を書き終えると、いつの間にか呼び出されていたキジトラの足に手紙を括り付ける。


キジトラは、手紙がしっかりと結わえれれていることを確認するとポチの頭の上に飛び乗る。


そして、キジトラを乗せたポチを先頭に、マーダーウルフたちがヴァイセに向けて移動を始める。


俺たちはそれを、その姿が見えなくなるまで見送るのだった。

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