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ハーレム王の相談屋 1

チリンチリーン……。


ドアが開き、来客を告げるベルが鳴る。


「いらしゃいませ。」


俺はとりあえず愛想よく答えるが、入って来た客を見て、思わず「チッ!」と舌打ちをする。


なぜならば、最初に姿を現したのが、そこそこ良いガタイのイケメンで、その後に可愛い女の子が二人、後を追うように入ってきたからだ。


「おにぃちゃん、お客様にそんな態度はメッ!ですよ。」


隣にいたリズが、そう俺をたしなめた後、愛想よく来客に挨拶をする。


「いらっしゃいませ~。何かお探しの物がありますか?」


「お、おぅ。ここが噂の「何でも屋」だろ?少し品物を見せてもらうぜ。」


俺の舌打ちは聞こえなかったのか、聞こえない振りをしていたのかわからないが、無視していた男も、さすがに、リズを無視できなかったようで、そんな返事をする。


「「何でも屋」じゃない、「相談所」だ。」


俺は男の言葉にそう反論するが、男はすでに、店の端へ移動したようで聞いていなかった。


「はいはい、おにぃちゃんは、そこで大人しくしててね。」


リズが、そう宥めてくる。


ここは、ミストラル帝国の南部にある、小さな領地の、さらに小さな「ベルリ」と呼ばれる街の一角。


俺たちはここに拠点を定めるべく、そのための足掛かりとして、また、本来の目的のカモフラージュとして、そして、単純に生活費を稼ぐために、こうして店舗経営をしている。


そして、俺とリズは兄妹でこの小さな店を経営している……ということになっている。


この店の外には大きく「ハーレム相談所」と書いてあるのだが、だれもが、皆「何でも屋」と呼んでいる。


おかしい。なんでこうなった?


俺は、このベルリの街に来た経緯を思い出す……。



「まずは、この街を目指しましょ。」


アンジェが地図を広げてある一角を指さす。


今俺たちがいる場所……古の遺跡からさらに北上したところにある、『迷宮森林』と呼ばれる森を抜けた更に北にある小さな街。


一応森が領界線になっているため、森の北側は人間族の領域……ミストラル帝国の一部だ。


「ねぇ、なんでそこなの?」


クリムがアンジェに質問する。


「まず、ここから一番近いこと、それから魔族領と接しているため、少数だけど魔族が出入りしていることかな。つまり私たちがその街に行っても、不審がられないってわけね。後、ここが重要なんだけど、この辺りが、接続エリアの臨界点……つまりこの付近にあるはずの祭壇を見つける必要があるの。そのための情報を集めるため。ここより離れた場所の祭壇は、今は必要ないからね。」


「なるほど~。で、そこまで言ったらどうするの?」


「どうするって……。まだ考えてないわ。」


クリムのさらなる質問に返す答えをアンジェは持っていなかったが、それも仕方がないことだろう。


そもそもアンジェは魔族なので、人間領のことについてあまり詳しくないのだ。それでも、頼れてしまうあたりがアンジェの非凡さを証明している。


「あークリム、そのことなんだが、いいこと思いついたぞ。」


俺はアンジェとクリムを見ていて思いついたことを口にする。


「その街で店舗を借りて、商売をしよう。」


「「「「「はぁ?」」」」」


俺の言葉に、その場にいた皆の頭の上に疑問符が飛びかう。カミーラに至っては、俺の額に手を当て、自分の額と比べて熱を測っている。……失礼な。


「えっと、ソーマ。一応そう思い立った訳と経緯を聞いてもいいかしら?後、商売って何をやるつもり?」


最初に立ち直ったアンジェは、俺にそう聞いてくる。


「アンジェ……ちゃんと説明するから、そのイタい子を見るような哀れんだ眼をやめてくれ。さすがに傷つくぞ。」


「はぁ、そう見えるってことは、ご自覚がおありで?」


「ないよっ。それよりだなぁ、店をやるのにはちゃんと考えがあるんだよ。」


俺はそういってみんなに説明を始める。


「まず、俺たちみたいな新参者が、何の理由もなく街を訪れるって、それだけで怪しまれるだろ?だから、「旅商人が一念発起して店を構えようとした。ここに来たのは大きな街では店舗を借りるだけでも莫大な金額になるから、小さな街から始めるつもりだ」という理由付けをするんだ。そうすれば、俺たちが街に入っても何ら怪しまれることはない。」


「うーん、確かに、理屈は通ってるわね。」


「でもお店って言ってもなにを取り扱うの?」


カミーラが聞いてくる。


「それだよ。」と俺はカミーラに視線を向ける。


「第二の布石として、取り扱うものだけど、魔道具を考えている。」


「魔道具?」


「あぁ、それもただの魔道具じゃない。俺とクリムの知識を総動員してこちの世界で再現させた、他所では手にはいらない珍しい魔道具だ。」


「知識チートをするのね。面白そー。」


「うーん、下手に目を付けられるのはよくないんじゃないかしら?」


「そうでもないさ。珍しいと言っても、ちょっと便利っていう程度のもので、文化ハザードを興すわけじゃない。それに、「遺跡から発掘された、失われた技術(ロスト・テクノロジー)を応用した魔道具」という触れ込みにするから、多少目立つのは想定内だ。」


俺はアンジェの疑問に対してそう答える。


「つまり、わざと目立つってこと?」


「うーん、目立つ、というより、俺たちが遺跡に興味を持っている理由付けだな。」


カミーラの質問に、そう答えるが、カミーラは今一つ理解できてないみたいなので、補足を入れる。


「つまりだな、扱っている商品がロストテクノロジー絡みってことは、俺たちが遺跡に興味を持っていてもおかしくないだろ?」


「あぁ、そういう事ね。」


「理解したか?でも、これらの販売に関してはあくまでも建前の理由付けに過ぎない。本命は『相談屋』だ。」


「相談屋?」


「あぁ、日々のちょとした困りごとや、領地経営についてまで、何でも相談を受けるのさ。」


「何でまたそんな面倒なことを?」


クリムがめんどくさそうに聞いてくる。


「まず第一に、街の人々の信頼を得るため。困っているのを助けてもらったら、それなりに受け入れてもらえるようになるだろ?」


俺はそういってアンジェを見ると、アンジェは、しぶしぶ頷く。


「ま、まぁ、そうね。」


「次に、コネを作るため。冒険者とか、街の権力者とかの相談を受けて、解決していけば、こっちがちょっと困ったときは色々と助けてもらえるだろ?それに仲良くなれば、口も軽くなるしな。」


「なるほど。そうやって他じゃ入りにくい情報を得ようってわけね。結構考えているのね。」


アンジェが感心したように言う。


「まぁ、俺もこれくらいはしないとな。」


「でも、大丈夫?気軽に引き受けて、解決できなかったら、逆に大事になるんじゃないの?」」


クリムが心配そうにそんなことを言ってくるが、その点はすでに解決済だ。


「大丈夫だ。俺は「何でも相談を受ける」とは言っているが「解決する」とは一言も言ってないからな。難しい問題は「相談は受けました。結論として、解決は無理です」……これでその案件は終了だ。」


俺がそういうと、なぜかみんなからの視線が冷たくなった。


……完璧な解決法なのに、なぜだ?


「ま、まぁ、そういうことだから、他に案がなければ、それで……っていうか、もう、これで決定でいいよな。」


俺はその場の雰囲気を払拭すべく、無理やり、ミストラル帝国で店を始めることを決定したのだった。

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